Excelのプロジェクト管理から脱却せよ~SW構成管理を見直そう
RedmineやTestLink、Hudsonなどのツールは一体何を改善して、何を目指しているのか?
一言で回答するならば、これらのツールはいわゆるSW構成管理をIT化するツールなのだ、と考えればよい。
つまり、下記のイメージだ。
Excelで進捗管理していた
→Redmineでプロジェクト管理をIT化
ソースや仕様書を履歴共有できる仕組みが無くファイルを日付管理していた
→Subversionで共同所有
Excelでテスト仕様書を管理していた
→TestLinkでテスト仕様書をWeb化
手作業でビルドしていた
→Hudsonでビルドを自動化(継続的インテグレーション)
我々IT技術者は、お客様がExcelやAccessで運用している業務をIT化、Web化するのが主な仕事なのに、肝心の自分たちのプロジェクト管理の殆どは、Excelで運用して四苦八苦しているだろう。
日本の殆どのSIerで働くPL/PMは、Excelのプロジェクト管理しか知らない。
だから、アジャイル開発のような頻繁なリリースに耐えうるプロジェクト管理技術を彼らは持っていない。
従って、いくらアジャイル開発したくても、XPを運用したくても、その理念を実現するインフラが無ければ、絵に描いた餅に過ぎない。
Excelによるプロジェクト管理はもはや時代遅れなのだ。
この思索を深めると、XPを代表とするアジャイル開発は、プログラマへIT化されたSW構成管理を提供して、プロジェクト管理を意識する必要の無い開発環境を提供しようとする動機があると読み取れる。
アジャイル開発の究極スタイルは、プログラマがプログラミングだけに集中すればいつでもリリースできるようになること。
実際、XPのプラクティスにある「コードの共同所有」「継続的インテグレーション」「テスト駆動開発」はまさにそれに当たるだろう。
今後のSW開発は、Excel無しで開発できるインフラをプログラマへ提供するのが重要になってくるだろう。
我々IT技術者は、この使い古されたSW構成管理という概念を再考すべきだ。
| 固定リンク
「Agile」カテゴリの記事
- 「プロエンジニアになるための「アジャイル開発」再入門」が素晴らしい(2018.04.04)
- カイゼンジャーニーの感想~アジャイルサムライの再来かな(2018.03.22)
- アジャイル開発とウォーターフォール型開発の違いについて再考(2018.03.21)
- アジャイル開発にはモデリングや要件定義の工程はあるのか、という問題とその周辺(2018.01.01)
- AgileTourOsaka2016の感想~エバンジェリストは市場を作る人である(2016.12.05)
「Git・構成管理」カテゴリの記事
- チケット管理システムは作業の構成管理と同じ(2017.04.03)
- 気象庁の数値予報課におけるRedmine利用事例(2017.05.22)
- セマンティック・バージョニング、チームの依存関係のメモ(2017.08.20)
- ソフトウェアの複雑性は本質的な性質であって偶有的なものではない(2017.05.05)
- 第12回東京Redmine勉強会の感想 #redmineT(2017.05.14)
「Redmine」カテゴリの記事
- Redmineの直近の課題~競合ツールGitlabに対抗できるか(2018.04.25)
- AstahのRedmine連携プラグインが公開されました(2018.01.18)
- 複数Redmineの内容を一つのRedmineに集約して見る方法(2018.03.16)
- RedmineもOSLC規格を導入してトレーサビリティを強化すべきか(2018.03.12)
- Redmineをもっと強化できるポイントpart1~上流工程のトレーサビリティ強化(2017.11.30)
「TestLink」カテゴリの記事
- テスト消化曲線とバグ発生曲線のパターン診断(2010.02.28)
- TestLinkにExcelのテスト項目書をインポートする方法(2017.06.01)
- TiDDをRubyで補強するアイデア(2009.12.26)
- Excelのプロジェクト管理から脱却せよ~SW構成管理を見直そう(2008.12.01)
- ツールが開発プロセスを改善する(2008.11.09)
「ソフトウェア工学」カテゴリの記事
- SwaggerでWebAPIドキュメントをExcel仕様書から脱却するアイデア(2018.03.29)
- 製造業の品質管理の背後にあるSDCAという考え方をソフトウェア開発に適用できるのか(2018.03.23)
- 静的ジェネレータを使ってExcelマニュアルをWeb公開するアイデア(2018.03.21)
- 安全性解析手法STAMP/STPAセミナーの感想(2017.12.27)
- テスト消化曲線とバグ発生曲線のパターン診断(2010.02.28)
「チケット駆動開発」カテゴリの記事
- 第18回Redmine大阪の感想 #RedmineOsaka(2018.02.04)
- 気象庁の数値予報課におけるRedmine利用事例(2017.05.22)
- チケット駆動の罠~複雑さはチケットの粒度に関連している(2016.12.28)
- Redmineのアンチパターンは2種類に区別できるのではないか(2018.02.21)
- 第13回東京Redmine勉強会の感想~『Redmineの今と未来』 #redmineT(2017.11.19)
「プロジェクトマネジメント」カテゴリの記事
- チームの開発環境が開発プロセスの品質を向上させるのに導入されない理由(2018.03.09)
- 【公開】第30回IT勉強宴会「最近感じる日本企業のITの問題と展望~「ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国」を読んで」(2014.03.07)
- プロジェクトリーダーやマネージャに問われる能力は何か?(2005.10.05)
- Redmineがいくら良くても会社の上司や経営者が見なければExcelがはびこってしまう事例(2016.07.23)
- TiDDをRubyで補強するアイデア(2009.12.26)
コメント
はじめまして。下記の通りShibuya.tracというコミュニティの新年会をやるのですが、
http://sourceforge.jp/projects/shibuya-trac/wiki/meeting%2F03
よろしければ、「Excelからの脱却~Tracの中心でredMineをさけぶ~」とかそんな感じのタイトルか何かでredMineの活用事例をご紹介頂けますか?
sf.jpのアカウントを取得すれば、上記のWikiページは変更できますので、タイトルとお名前を発表者欄に追加頂ければと思います。
是非ご検討をお願いします。
投稿: Oかもと | 2008/12/02 11:01
こんにちは。garyoです
Shibuya.tracは先日川西さんがTestLinkを紹介されてましたね^^
http://d.hatena.ne.jp/kaorun55/20081018/1224305921
>RedimineやTestlink、Hudsonなどのツールは一体何を改善して、何を目指しているのか?
ソフトウェア開発規模が大きくなって、複数の関係者や複数の会社にまたがって分散開発を行う場合の支援ツール群のような気がします。
投稿: garyo | 2008/12/03 19:18
◆Oかもとさん
Shibuya.tracの方から反応がもらえてすごく嬉しいです。
日程の都合が合わないので、次回以降は是非検討させて下さい。
◆garyoさん
SW開発の規模が大きくなる
→開発メンバーの人数も増える
→地理的に離れた環境でも開発する
などのような傾向がある場合、従来のプロジェクト管理では無理があると思います。
garyoさんの言うSW開発支援とは、結局、SW構成管理とはそもそも何なのか?という問いに簡潔にまとめられると思います。
投稿: あきぴー | 2008/12/04 00:56