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2010/09/19

数学や物理は背景にある思想を知らなければ理解できない

帰省して、中学・高校・大学時代に読んだ本を久しぶりに読んだ。
考えたことをラフなメモ書き。

【参考】
量子革命がコンピュータ革命を引き起こした: プログラマの思索

【1】数学を理解するには、公式の背景にある思想を理解して、更に自分の手で計算しなければ理解したことにはならない。
微積分と無限に対する考え方は、教科書だけでは多分理解出来ないだろう。

僕は高校時代に偶然、遠山啓著の「数学入門〈上〉 」「数学入門 下 」を読んで、微分と積分、無限に対する思想を理解することができた。
微分の背後にある無限の考え方は最終的には、ε-δ論法につながる。
無限数列は、演算の順序を変えれない、とか、その結果が求まらない場合もある、という考え方が面白かった。

また、ニュートン、ケプラー、オイラー、ライプニッツ、ガリレオなどの偉大な数学者がどのような論争を行って、今の数学に至るのか、その歴史がとても分かりやすい。
ケプラーの3法則を微分方程式で鮮やかに証明する節が一番面白く、そして後々役立った。
数式で一部証明を書いているが、その背景の思想が詳しく書かれているので、数式は後で理解できればいい。

物理の公式は結局、微分方程式から得られた結果だから、公式だけ覚えても無意味。
公式を暗記するだけでは、他の数学や物理の問題は解けない。
問題の解決方法を知ってこそ、色んな物理の問題を解けるし、3体問題のように何故微分方程式が解けないのか、という話題も理解することができる。

遠山啓著の「数学入門〈上〉」「数学入門 下」は1960年代に出版された本なのだが、その内容は今も色褪せない。
高校生だけでなく中学生にも、数学の考え方を知る上でお薦めだと思う。

【2】物理を理解するには、物理特有の考え方、つまり、自然に対する科学者の態度を知らなければ、物理がどれだけ自然に対してこれだけの知識を得ることができたのか、理解出来ないだろう。

物理の公式をいくら覚えても、物理学者の態度を知らなければ、新しい問題を解くことができないだろう。
僕は高校時代に、アインシュタイン著の「物理学はいかに創られたか(上巻)」と朝永振一郎著の「物理学とは何だろうか〈上〉」を読んで初めて、古典力学の公式やエントロピーの概念を理解することができた。

物理学者が自然を理解する態度には、自然の根本は粒子(原子)であるという主張と波動であるという主張の2つがあり、それぞれの対立がある。
アインシュタインは前者の立場なので、何故、加速度が力を生むのか、モノの重さに関係なく落ちる速度が同じなのか、古典力学の説明がとても分かりやすい。

後者の立場は量子力学であり、おそらく現代物理学を知るには量子力学を制覇しなければ、化学も分子生物学も理解出来ないだろう。
朝永振一郎著の「物理学とは何だろうか〈上〉」では、エントロピーなど量子力学の考え方がとても分かりやすい。

高校生は、物理を学ぶ前に「物理学はいかに創られたか(上巻)」「物理学とは何だろうか〈上〉」上下4冊の本を読んでおけば、実際の入試の問題を解きやすくなるだろうと思う。
いずれの本も数式はほとんど書かれておらず、分かりやすい文章で書かれているのでお薦めだと思う。

他に、「物理数学の直観的方法」の本も初版で読んで、なるほどと思った。
特に、量子力学で必ず使われる解析力学について、その発端となった問題、ニュートンの最速降下線の問題の解き方がとても印象に残っている。
物理や数学の公式や概念は、特有の考え方、発想方法があるので、それを知らなければ、禅問答みたいでいつまで経っても分からない。

物理学者は、ある仮説を立てて、その仮説を確かめるために観測する。観測結果が仮説と合致していなければ、仮説を見直すけれども仮説が間違っていなければ、観測方法を変えたりして、実験を繰り返す。
つまり、徹頭徹尾、仮説重視の仮説検証スタイル。

この手法の代表例がフェルミ推定。
フェルミ推定とは、「シカゴの(ピアノの)調律師は何人いるか?」という問題が有名だろう。
物理学者フェルミが本来、原子爆弾の威力を机上の仮説から計算した手法なのだが、その発想方法をコンサルタントの一技法にフレームワーク化されたもの。
地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」」がおそらく最も有名な本だろうが、面白く読める。

フェルミ推定 - Wikipedia

【3】分子生物学は、生物は機械と同じような構造を持ち、物理法則に支配されているという発想で生物の秘密を解き明かすのが前提。
以前はなかなか良い本がなかったけれど、最近は「生物と無生物のあいだ」が読みやすい。

分子生物学の発端は、シュレディンガーの本生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)にある。
量子力学を編み出したシュレディンガーは、その後の物理学者の進むべき道は生物の秘密を解明することにある、と宣言した。
つまり、生物は神秘の現象ではなく、その構造は未知の物理法則に支配されているはずだ、と。
一つは、原子が余りにも小さく、生物が原子よりも余りにも大きいのは、統計法則に従えば、生命が突飛な動きをしないようにたくさんの粒子が集まって動きの誤差を小さくせざるを得ないことにある。
もう一つは、エントロピー増大の原則に反して生命が生きるには、負のエントロピー(秩序)を食べてエネルギーを補充する必要があること。
この発想に多くの物理学者が知的刺激を受けた。

そして、ワトソン・クリックは、DNAが4種の要素による2重らせん構造であることを示して、DNAは自己複製機能を持つこと、そして、4種の要素(A・T・G・C)によって生命の情報を全て表現できることを示唆ないし暗示させた。
ここから、今の分子生物学の隆盛に至るわけだ。

実際、物理学者による生物の研究は、それ以前の生物の形態の観察とは全く違う。
実験動物の食物に放射性同位体をあらかじめ入れ込んでおき、実際の食物がどのように消化されていくのかを追跡する手法などは、まさに物理学者が考えそうな実験方法だ。

【4】そんな過去の本を読み直しながら、中学・高校・大学生向けに学問の背後にある思想や歴史を分かりやすく説明する本は改めて重要だと思う。
こういう良書はなるべく人生の早いうちに触れた方が勉強に役立つと思う。

僕が今回出版する本「Redmineによるタスクマネジメント実践技法」は上記の本ほどレベルは高くないけれど、僕が理解して説明できる範囲内で、Agile開発とチケット駆動開発を説明し、チケット駆動開発がソフトウェア開発プロセスでどのような位置を占めているのか、その利点と課題や可能性は何か、を全て書いたつもりだ。
2冊目を書く事になったら、もっと良い本を書いてみたいと思っている。

【追記】
小飼弾さんが遠山啓著の「数学入門〈上〉」「数学入門 下」の感想をBlogに書かれている。

(引用開始)
ケプラーの法則から万有引力の法則を導出する場面は本書の一番の見所で、この場面を楽しめれば三角関数は克服できたも同然なのだ
(引用終了)

この本の優れた所は、微分に関する無限の考え方を分かりやすく説明している点と、小飼弾さんが言う通り、微分方程式から万有引力のような本質的な法則を導き出す点にある。

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