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2015/03/28

アート・オブ・コミュニティの感想~コミュニティは信用貯金という信用経済から成り立つ

アート・オブ・コミュニティを読んで、コミュニティ運営とは一体何なのか?と考えている。
以下、主張がないメモ書き。

【参考】
アート・オブ・コミュニティ - yuku-t blog

アート・オブ・コミュニティ ―「貢献したい気持ち」を繋げて成果を導くには | Social Change!

アートオブコミュニティ - Togetterまとめ

ベーコン『アート・オブ・コミュニティ』:是非ともやりたかったんだが。紹介しないのが惜しい本。 - 山形浩生 の「経済のトリセツ」

Sphinx-users.jp X アート・オブ・コミュニティー (2011/7/23) ? Python製ドキュメンテーションビルダー、Sphinxの日本ユーザ会

アート・オブ・コミュニティ読了, 姫路で毎週水曜日にハックカフェを開きます - Days of Speed(2011-10-18)

アート・オブ・コミュニティを読んだ

【1】僕自身、ITコミュニティの活動に長く携わってきた。
そんな体験を通じて、コミュニティ運営は楽しい時もあるし、逆に負担に思う時もある。

では、コミュニティに関わる根本的な問題とは何だろうか?

コミュニティ運営とはどんな基盤から成り立つのか?
コミュニティとビジネスはどんな関係を作れば、双方ともにWin-Winの関係になるのか?
コミッタとコミュニティはどんな関係であるべきなのか?

【2】コミュニティが発足するきっかけは様々だ。
僕の経験では、有志が集まり、熱烈な動機を持つ少数の有志から始まる。
そして、コミュニティ主催で勉強会が開催され、参加者が集まり、盛り上がるとともに、活動も活発化していく。

でも、コミュニティがいつも長続きするとは限らない。
スタッフは平日は仕事を抱えているし、家族がいたり、他のプライベートな事情もあるから、いつもコミュニティ活動に注力できるわけではない。

一時の熱情が冷めて、スタッフのやる気も落ちると、コミュニティは消滅してしまう。
また、スタッフの年齢が上がり、若手のスタッフに引き継いでいく流れがないと、コミュニティが対象とするマーケットが時代の流れに合わなくなる場合もある。

そういう意味では、コミュニティもゴーイング・コンサーンが最終目的になるのかもしれない。
コミュニティが社会の中で価値があることを示し、継続して活動していくことが目標になるだろう。

【3】コミュニティ活動は、ボランティアベースだが、多少のコストは発生する。
普通は参加費を少しだけ徴収する時が多いが、その理由は、遠方から講演者を呼ぶ費用に使ったり、PostItなどの備品、50名くらい入れる会場を借りる費用に使ったりする。
だから、コミュニティでは、会計担当の働きも重要。

また、コミュニティはビジネスの交流の場でもある。
開発者同士で仕事を知るきっかけにもなるし、企業が優秀な開発者を探しに来たり、逆に企業がコミュニティの場で自社製品を宣伝したりする時もある。

そういう文脈で思うのは、コミュニティを運営するスタッフとしては、コミュニティが参加者に提供できる価値とは何なのか?を自問せざるをえないことだ。

開発ノウハウ、技術ノウハウ、開発事例などを参加者に共有することもあれば、コミュニティに集まるユーザ数の多さや階層が目当てになる時もある。

製品を売りたい企業や、優秀なプログラマを探したい動機を持つ経営者ならば、コミュニティの価値は、そこに集まる人達が高品質であることだろう。

コミュニティに価値があるからこそ、人が集まり、沢山の人達の相互作用で色んな効果が生まれ、好循環に回っていく。

でも、コミュニティを営利目的でやるほどのパワーを注げない時も多い。
むしろ、コミュニティが営利などの目的に変わると、コミュニティの場が変わってしまう。

【4】本来、コミュニティは、熱意のあるスタッフが集まって生まれる。
その動機は様々だ。
アジャイル開発が好きだ、読書会がしたい、こんな最新技術の話を共有したい、など。

そんな人達が多種多様であればあるほど、初対面同士の関係なんか無関係で、想定しないコラボレーションが生まれて、どんどん盛り上がっていく。
すると、コミュニティを運営する上で必要な概念が出てくる。

【5】「アート・オブ・コミュニティ」では、「信用貯金」「一体感」「信用経済」が紹介されている。

信用貯金は、コミュニティの人々の間で行われるプラスの相互作用を集めたもの。
コミュニティの全員が生きる充足性を得る効果が生まれる。
但し、信用貯金は、通貨のように数値化できないし、銀行の預金のように価値を長期間保持できるわけではない。

信用経済は、コミュニティの人々の信頼貯金を通貨で比喩すると、通貨(信用貯金)が激しく取引されることで、コミュニティ内のトランザクションが増えていく経済構造。

コミュニティに信用経済があるからこそ、そこに人が集まり、営利企業も集まってくる。
信用貯金はお金そのものではないが、皆が価値がある、と信じているからこそ意味がある。

一体感は、人々がコミュニティと一体化している感覚。
一体感こそが人々を惹きつける原動力。
コミュニティが存在する証。
信用貯金を元に、コミュニティ内で信用経済が具現化されると、コミュニティ内の人々の心に一体感が生まれる。
一体感は強い信用経済のものさし。

一体感を生み出すプロセス、信用経済の基盤となる信用貯金を作り出すには、コミュニティ内で多種多様な人達の活発なコミュニケーションが必要だ。

活発なコミュニケーションが、各メンバーの信用貯金を生み出し、それを元に信用経済が具体化されると、メンバーにコミュニティとの一体感が生まれる。
コミュニティの価値とは、このような信用経済の構造が発生し、永続的に維持されることにあるのではないか。

【6】「アート・オブ・コミュニティ」で最も重要な概念は「コミュニティマネージャ」だろうと思う。

コミュニティマネージャーとは?職種・役職としての現状|米国事例 | ダイナ・サーチ

コミュニティ・マネージャとは : まだ東京で消耗してるの?

Wikipediaに見るコミュニティマネージャーの定義 - Community & Social

コミュニティーマネージャーの役割とは? | SMJブログ(ソーシャルメディアジャパン)

Online community manager - Wikipedia, the free encyclopedia

アート・オブ・コミュニティ」は「コミュニティマネージャ」を「世の中に変化をもたらそうと協力しあう世界中のボランティアに対して、それを達成することを可能にする」役割の人と定義している。

より具体的には、コミュニティ・マネージャとは : まだ東京で消耗してるの?のように、コミュニティマネージャーはこんな役割の人だ。

(引用開始)
1.製品と企業のエキスパート、エヴァンジェリストになる
2.製品と企業を愛する、しかしユーザーの目線に立つ
3.コミュニケーションスキルを生かす
4.ブログなどを通してソーシャルメディア上でプレゼンスを築く
5.Authenticである
6.力を入れるべきプラットフォームに優先順位を付ける
7.傾聴し、価値を付加し、関係を構築する
8.オンライン/オフラインで関わりあう
9.起業家のように考え、変化に付いていく
10.同僚をエンパワーし、コミュニティビルダーとなる
(引用終了)

コミュニティーマネージャーは、そのコミュニティ内で最も影響力がある以外にも、他の特徴を持つ。

【6-1】僕が一番フィットするのは、コミュニティーマネージャーとは、エバンジェリスト兼ファシリテーターだ。

つまり、何らかの製品や概念、技術に詳しいだけでなく、それらを世の中に分かりやすく説明し、普及する責任を持つ人。
こういう人はエバンジェリストと言われるだろう。
エバンジェリストの具体例は、例えば、長沢さんのような人ではないか。

オピニオン:長沢智治: エバンジェリストの頭の中 ― 世界観を訴求するわけ - Build Insider

エバンジェリストが訴求するのは製品や技術ではなく市場を開拓すること: プログラマの思索

エバンジェリストの役割は、単に技術の紹介だけではなく、その技術を必要とするマーケットの創造だ。
新しい市場を開拓し、拡大させることで、新たな経済・売上・利益を周辺に関わる人達にもたらす。

換言すれば、エバンジェリストはコミュニティの信用経済を作り出し、拡大させていく役割を担っている。

【6-2】さらに、コミュニティーマネージャーは、コミュニティ内の人達をファシリテートする能力も持つ人。
実際、コミュニティでは、会社のような権力構造や指揮命令系統は通用しない。
信用貯金を元に人々は動くので、コミュニティ内のゴールや価値観をいかに共有してもらい、自発的に行動してもらうようにするか、の方が重要だ。

ファシリテーターは、メンバー間で信用貯金を生み出すように支援し、コミュニティ内のトランザクションを活発化させる役割を持つ。
トランザクションの例としては、メーリングリストで議論する、イベントを開く、などだけでなく、周囲の人達に働きかけて輪を広げていく活動も含まれるだろう。

ファシリテーターが信頼貯金を増幅させる。
そして、その結果、信用経済を活発化する。

【6-3】コミュニティマネージャーという職業は日本ではあまり聞かない。
でも、ボランティアベースで、コミュニティマネージャーに相当する役割で活動している人は、IT勉強会にいる人なら、なんとなく理解できるはずだ。

個人的には、コミュニティを長期に運営していくには、誰かがコミュニティマネージャーという役割を意識して行動することが必要ではないか、と直感的に思っている。
その直感が正しいかどうかは分からない。

【7】「アート・オブ・コミュニティ」では、コミュニティを経済の概念で比喩しているのがとても面白い。
コミュニティは当初はボランティアベースだし、そんなに価値があるようには思えない。
でも、コミュニティに参加する人が増え、活発になっていくと、そこに何かしら価値があるように見えてくる。

コミュニティの構造は、経済に似ている。
通貨(信用貯金)が発生し、通貨が流通して経済(信用経済)が生まれる。
経済の生産量ないし強度は、コミュニティの信用経済では、一体感の強さで測定できるだろう。

すると、マクロ経済学の基本概念「国民所得=消費+投資」「貯蓄=投資」は、コミュニティの信用経済ではどのように対応付けられるのか?
あるいは、経済学で出てくる概念「利子」「インフレ」は、コミュニティの信用経済でどんな概念に対応するのか?

このアイデアをもう少し考えてみる。

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