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2015/05/23

在庫は悪なのか善なのか

@hatsanhatさんたちと飲んでいて、在庫の話が出た。
@hatsanhatさんたちの話をログとして書いて、考えたことをラフなメモ書き。
間違っていたら後で直す。

【参考】
第39回IT勉強宴会の感想~花束を作る花屋の業務モデルをT字形ERと三要素分析法で比較する: プログラマの思索

渡辺式データモデリングの復習: プログラマの思索

【1】在庫はエンティティなのか?

モデル初心者は在庫をエンティティとして作りたがる。
すると、複雑なモデルになりがち。

在庫は商品の状態、またはサマリ。
在庫は、入出庫テーブルからタイムバケットごとに算出される数量。

在庫をエンティティにすると、在庫からのトレーサビリティが難しい。
在庫が分かるだけでは意味がなく、その在庫はどこにどんな商品があるのか、という情報までさかのぼらなければならない。
そうすれば、在庫を削減して業務を効率化することもできる。

【2】なぜ実棚をやるのか?
帳簿と倉庫の商品数を合わせるため、というのは回答にならない。

実棚をやるのは、利益を確定したいから。
在庫数量が確定しなければ、月末または期末の仕掛資産を計上できず、利益を確定できない。

経営者が常に見るKPIは、売上と利益の二つしか無い。
売上はトータルで把握できるが、利益は、原価や費用だけでなく、在庫という仕掛り資産まで把握しなければ確定できない。
特に、小売業や製造業では、実棚は定期的に行う必要がある。

つまり、在庫は単に業務の効率性の指標だけでなく、利益を確定するための要素として非常に重要である。

【3】渡辺さんが提唱する在庫監視推移方式の事例を初めて聞いた。

【3-1】在庫監視推移方式のデータモデルは、受払テーブルの派生関係で実現する。
「受払△--発注」という派生関係で在庫の過去、「受払△--受注」という派生関係で在庫の未来を管理する。

在庫監視推移方式の利点は、在庫のライフサイクルを横断的に監視できるので、将来を見通して在庫の数量をコントロールすることで適正在庫に抑えることができる。

しかし、弱点は、普通の会社では、発注テーブルの保守は購買担当者、受注テーブルの保守は営業マンのように、責任が分断されているために、受払テーブルを保守するような強力な権限を持つ担当者をアサインできないこと。
組織構造が業務にそのまま反映されてしまうために、在庫監視推移方式を実現しきれないのだ。

【3-2】でも、在庫監視推移方式を実現している事例がある。

その事例では、発注・受注テーブルと受払テーブルの保守は、専門部署の担当者が担当している。
彼は、仕入れから出荷までを担当するので、必要な部材の発注日や発注数量もコントロールしているし、製品在庫もコントロールしている。

彼にとって、製品在庫は在庫ではない。
納期に製品を顧客に出荷する責任があるという認識。
製品在庫は、いつまでにどれだけ作るか、という製造計画に従って作るものであるから、無駄な在庫ではない。
在庫は悪でも善でもない。

【3-3】在庫監視推移方式モデルの事例を持つ会社のビジネスモデルは何なのか?

在庫推移方式対象の製品は、既存顧客向け。
既存顧客とは深いつながりがあり、既に顧客の製品計画も内示が出ており、受注時期も数量も知っている。
だから、精度の高い製造計画が作れるし、製品在庫を在庫監視推移方式のモデルに載せることができる。

営業は新規顧客向けに専門化している。
だから、営業は本来の仕事をしているし、すごく大変。
工場は在庫監視推移方式の専門担当者の指示に従って作るだけ。

こういうビジネスモデルが成り立つのは、大量製造というよりも、試作品やプロトタイプを作る場合が多いらしい。
また、製品のマーケットは小さく、ニッチ向けが多いらしい。

ゆえに、在庫監視推移方式モデルは大企業よりも中小企業の方が向いている。
大企業になるほど、部門同士の相互牽制が必要になるから、営業と工場で在庫数量で衝突が起きがち。
大きな組織になるほど、在庫は一人の担当者で管理できる責任や権限を持っていない。

一方、中小企業では、組織が小さく未分化のため、一人の担当者が発注から受注、出荷まで担当する時が多い。
すると、一人の担当者が製品のライフサイクルをコントロールする権限も持つから、在庫監視推移方式モデルが非常に有効になる。
彼にとって、在庫は極力少なすべきという観点ではなく、納期までに製品を出荷するために必要な要素の一つに過ぎない。

【3-4】そんなことを聞くと、渡辺さんは中小の製造業や小売業向けの業務モデルの事例をたくさん知っているからこそ、在庫監視推移方式を編み出せたのだろうと勝手に推測する。
在庫監視推移方式モデルが必要な現場があり、実際に試して成功したから、そのメリットやデメリットも把握されているのだ。

渡辺さんのモデリングでは、一意制約を上手く使ったり、マスタの属性に残高などの作出属性をあえて追加するなど、T字形ERから見れば異端に見えるようなモデリングが多いらしいが、長年の開発経験に基づいた知見が多い。
個人的には、渡辺さんのモデルは、データモデリングのテクニックの観点でもすごく面白いし、事例に基づくモデルが多いからすごく参考になる。


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ERP・財務会計・経済学」カテゴリの記事

コメント

『利益を確定するための要素として非常に重要である』なるほど共感します。
在庫の判断で、利益が変動するのが現実です、適切な取り扱いが重要です。
在庫は、商品コードに従属する導出属性で単純な属性にはならないと思います。
在庫テーブルがあったとしても物理フィールドにできないような気がします。
実況中継ありごとうございます。一緒に飲めなかったのが残念です(^^)

投稿: shimoyama@ergo.ne.jp | 2015/05/24 00:32

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