経営・法律・ビジネス

2018/10/09

組織文化はトップが作るのか、ボトムアップで作られるのか

僕はアジャイル開発が好きなので、組織文化はメンバーから自然発生的に作られるものと思っていた。
でも、組織論を勉強していたら、そうではないらしい。
今の自分が理解できたこと、考えたことをラフなメモ書き。

【参考】
制度的リーダーシップの考え方が何となくしっくりきた: プログラマの思索

【1】トップがリーダーシップを発揮しすぎている場合、メンバーや社員は言われるがままの存在で自発的になっていない状況が多い。
トップがリーダーシップを発揮せざるを得ない組織文化になっている。
そういう組織文化を作った責任は誰にあるか?

組織文化を生み出す責任は社長にある。
もっと社長が汗をかけ。

従業員の意識変革は、従業員ではできない。
社長が自ら説明し、共通目標を掲げ、貢献意欲を引き出し、コミュニケーションを円滑化させなければ、組織文化は変わらない。

つまり、組織文化はそう簡単に作れないし、変更もできない。
その会社の歴史から生まれた側面の方が大きい。
いわゆる、経路依存性。

組織文化は、今までの会社の経営の中で、こんないいものがあったではないですか、と社長に気づかせる方が大事。

一方、組織構造は思い切って変更できる。
たとえば、会社の特徴として商品企画が弱いなら、思い切って商品企画の部署を作る。

たとえば、生産工程ごとの機能別組織では、市場の変化に即応できないならば、事業部制組織へ思い切って変更してみる、とか。

つまり、組織文化は社長に優しくアドバイスし、組織構造は思い切って変更して下さい、と社長に諫言する。

この発想は、マッキンゼーの7Sフレームワークがよく当てはまると思う。
組織のハード部分は思い切って変革できるが、組織のソフト面は、浸透に時間がかかる。

【2】企業における人事施策は、会社全体の人事施策として策定してはいけない。
従業員層ごとに人事施策を細かく分けて策定する必要がある。

たとえば、正規社員と非正規社員では、人事施策が全く違う。
正規社員には能力向上や人材育成、非正規社員にはすぐに辞めさせないような仕組みとして、衛生要因の対応やモラール向上、人材の確保の観点になる。

たとえば、女性社員と新人社員では、人事施策が全く違う。
新人社員には人材育成の観点で能力開発、女性社員には人材確保のため、時短制度や出産後の仕事復帰の支援制度など衛生要因への対応が重要になる。

あるいは、管理職とヒラ社員でも違う。
管理職には、社長が考える経営戦略を理解してもらい、自分の持ち場で部下にその内容を伝えて共有してもらう、という制度的リーダーシップを発揮する役割がある。

【追記】
門屋浩文@redmineparty🌅さんのツイート: "製品特性で組織体系が変わるから 例えば鉄道会社がボトムアップで文化が作られるのは個別の部分ではあるかもしれないけどトップダウンが多いでしょう 芸術系ならトップダウンは絶対ないでしょう… "

akipiiさんのツイート: "芸術系でもソフトウェアベンチャー企業でも、社長が、社員個人が自由に能力を発揮できるような環境(ファシリティ)を作っているから、とか、自由にコミュニケーションを取っていいよ、と言う組織文化を許しているからでは? 組織文化は社長が作っている、という気が最近してます。… https://t.co/3qSXWFqhMO"

門屋浩文@redmineparty🌅さんのツイート: "なるほど、そうかもしれない 理解があるから環境、文化を作るような… "

akipiiさんのツイート: "川端さんの会社や倉貫さんの会社を見てると、社長がソフトウェア企業に合った組織文化を知っていて、あえてそういう組織文化を作り出してる気がしました。それを知らない社長はたぶんソフトウェア開発に向いた組織文化も組織形態も理解できてないのかなと… "

やっさん🍶さんのツイート: "私もそう思います。ボトムアップな組織は、トップが権限を移譲させてボトムでも意思決定出来るように、ボトムを信頼出来る文化がもともとあるような、初期の段階からトップが文化を形成してそれを「貫き通した結果」だと思います。 また、ボトム→トップへの移行は簡単に出来るけど、(続く)… https://t.co/xzGUYkgqum"

やっさん🍶さんのツイート: "トップ→ボトムへの移行は、ボトムからは起こすのはとてつもなく難しいと思います(&痛感してます。多分無理。) ボトム→トップを気づかせるのは、もともとボトムが出来てる文化じゃないと実行までは行かないかなぁと思います。自分の持ってる既得権益を手放せなんてトップ思考では出来るのかなと。… https://t.co/21O1quS1Xp"

| | コメント (0)

2018/04/28

技術革新とエンジニアのキャリア形成にオープンソースコミュニティの存在が重要性を増している

Publickey主宰者のインタビュー記事を読んで、気付いたことをメモ。
ラフなメモ書き。

【参考】
Publickey主宰者・新野淳一氏に聞く、エンジニアのキャリア・スキルの磨き方、「稼ぐ力」の付け方 - GeekOut

【1】Publickey主宰者のインタビュー記事を読んで、印象に残った点は2つある。
一つは、クラウドとオープンソースにより技術革新の場がベンダからオープンソースのコミュニティへ移ったこと。
もう一つは、エンジニアのキャリア形成に、オープンソース活動やコミュニティ活動による貢献が重要性を増していること。

【2】現在では、技術革新の場はベンダーから発信されるよりも、オープンソースのコミュニティを中心に発信させる場合の方が多い。
たぶん、その事実もかなり知られている。

(引用開始)
取材するスタイルも昔とはずいぶん変わりました。かつてはベンダが一番情報を持っていたので、発表会に出席して、新製品や技術のことを取材していましたが、いまのメインストリームは明らかにコミュニティです。僕もオープンソースのコミュニティの情報や、フォローしているオープンソースエンジニアのTwitterを見て、業界動向をウォッチしています。
(引用終了)

上記の記事のように、一昔前は、IBMやMSなどの大企業の技術動向をウォッチするために、大企業のイベントに出向いて、情報収集するのが普通だった。
でも、今では、LinuxやRuby、Python、Wordpress、LibreOfficeなど数多くのオープンソースが市場を支配して影響を与えている。
これらオープンソースコミュニティに出向いて、優れたコミッタやそのリーダーをウォッチしたり、直接話したりする方が、情報収集が速い。

この変化によって、大企業よりも、優れた中小ベンチャーやコミッタの方がIT業界において、政治的影響力を増している、という事実が挙げられるだろう。
たとえば、UberやAirbnbなどのシェアリングサービスも一気に普及し、昨今のAIブームに乗って大きく成長している。

つまり、オープンソースを中心としたコミュニティが技術革新と新しいビジネスの創出を生み出している。
その変化にエンジニアも付いていかないといけない。

【3】すると、エンジニアのキャリア形成に、オープンソース活動が大きな影響を与えてきている。

【3-1】エンジニアがスキルを向上させるために、オープンソース活動に積極的に関わり、貢献することで、周囲に彼のスキルを認めてもらい、彼自身の価値を上げていく、という成長のらせん構造が生まれている。

(引用開始)
 そうすると、エンジニアの働き方やキャリアも変わります。それまでは、最新技術はほとんどベンダに集まっており、ベンダの技術に詳しい人が求められてきました。しかし、オープンソースという新しい価値観が生まれることで、コミュニティへの貢献がキャリアに好影響を及ぼし、スキルアップにつながるようになりました。そういう新たなエンジニアのヒーロー像が生まれたのです。

 あとは、やっぱりクラウドですね。クラウドの最大の特徴は、一言では表現できないジャンルの広さです。その分、クラウドを活用することは非常に難しくなっている。社内で学べる範囲を超えているんですね。あらゆるレイヤーに精通する必要がありますし、オープンソースやベンダの技術も追っていかなければなりません。技術だけではなく、仕事や業務についても勉強する必要があります。そういう包括的な知識は、単に仕事をこなすだけではなかなか学べないのです。会社の枠を超えて物事を学ぶ姿勢を保ち続けないと、クラウドをキャッチアップできないと思います。

 クラウドとオープンソースが出てきたおかげで、会社の中でキャリアを考える時代から、会社を超えて自分のスキルやキャリアを考える時代へと変化しました。そうでないと、エンジニアは自分のキャリア人生を生き抜けなくなってきています。Linuxが出てきた頃からそういう雰囲気はありましたが、クラウドの登場で、その傾向が一段と鮮明になってきた。僕はそう思っています。
(引用終了)

【3-2】似たような話として、下記の記事もあった。

会津大学で「これからのエンジニア像」についてお話してきました - インフラエンジニアway - Powered by HEARTBEATS

(引用開始)
これからのエンジニア像

この先とか言ってるけど、未来人じゃないから先に事はわからないよ
・なので歴史を踏まえて推測するね

ここ20年を振り返ると、ITは10年でスキルの価値がなくなる業界です
・最先端の貴重なスキル =(10年)=> ふつうのスキル =(10年)=> こどもでもできる

世間的なエンジニアの評価軸が技術領域ベースから価値ベースにシフトしてきたよ
・ネットワークエンジニア => Webサービスエンジニア...

みなさんはきっと75歳くらいまでは働く必要があります
・たぶん私もね

ホワイトカラーは一生勉強し続ける必要があります
・宿命ってやつですね

いまのうちにじっくり基礎から勉強の仕方・活かし方を身に着けておくとよいですよ
・基礎知識と、学びの習慣化をしておこう

とにかくまず学校の勉強をきちんと真面目にやるのが最高
(引用終了)

IT業界にいて、つくづく思うのは、身につけた技術は10年経つと陳腐化してしまい、無意味になってしまう可能性が高い事実だろう。
実際、Cobolやメインフレームでバリバリ、プログラミングして経験を積んで、部課長に成り上がった人達を見ると、彼らの話が既に時代に合わなくなっていることをいつも感じる。
そして、彼らの経験やノウハウが陳腐化されるのと同様に、自分もそうならないか、といつも自問している。

アジャイル開発は常識だ: プログラマの思索

ライフ・シフト」のように、人生100年時代の中で、現代を生きる人は皆、死ぬ直前まで働くことを前提に、一生勉強し続けることを準備しなくてはならないのだろう。

たとえば、昨今は、いわゆる文系の士業は人工知能で代替されるニュースが相次いでいるので、士業の受験者数がかなり減少していて、危機感を持つ人が増えている、という話も聞いた。
いわゆる士業のAI受難だ。
よって、士業だけでなく、普通のホワイトカラーも、価値を生み出さないエンジニアもAIで代替されてしまうリスクがあるのだろう。

AIによる代替可能性90%以上の士業は3つの士業 | 株式会社ネクストフェイズ

では、技術や知識を得たとしてもすぐに陳腐化してしまう時代において、どんな方針で働くべきなのか?

現状では、社内研修やOJTだけでは、エンジニアのキャリア形成は不十分だ。
むしろ、エンジニア自身が積極的に、オープンソース活動に加わった方がいい。

現代では、オープンソースコミュティが技術革新の発信源であるからだ。
だからこそ、オープンソース活動に加われば、自身より優れた開発者と交流することで、やる気も出るし、自身の能力向上にも役立つ。

自分にも銘じておく。

| | コメント (0)

2017/08/15

制度的リーダーシップの考え方が何となくしっくりきた

エラスティックリーダーシップ ―自己組織化チームの育て方」を読みながら、リーダーシップとは一体何だろう、と疑問に思った。
すっきり腑に落ちなかったけれど、「制度的リーダーシップ」という概念で改めて考えてみたら、自分としては納得できそうだった。
ラフなメモ書き。
間違っていれば後で直す。

【参考】
セルズニックが提唱した制度的リーダーシップの意味が何となくわかった | 日々の練習

戦略論の復習④…SWOT分析と戦略立案プロセスの発展|田舎者の受験日記

制度的リーダーシップ(せいどてきりーだーしっぷ)とは - コトバンク

第11話 企業経営理論④ リーダーシップ論 ~自称週末ファーマーの国家試験受験記~ - 自称週末ファーマーの菜園ブログ

金井 一賴 | ビジネス基礎講座経営組織04

「連結ピン」とは? - 『日本の人事部』

連結ピン(リッカート提唱)とは?マネジメントに必要な連結ピン | BizHint HR(人事の悩みにヒントを届けるニュースサイト)

【1】リーダシップのある人は、外から見るとオーラがある。
その人に皆が付いて行く感じ。
アジャイル界隈なら、平鍋さん。

コミュニティでは、そのオーラは、その人の個性、人格、能力から発生する時が多いと思う。
その人が発する意見、言動から、自然に周囲の人が感化されて、たんぽぽみたいに散らばっていくけど、その種は絶えることはない。
コミュニティでリーダーシップのある人は、影響力という能力を自然に持っている。

一方、企業のような硬い組織でも、リーダーシップらしきものを見かける時がある。

企業は所詮、営利団体なので、売上と利益が全て。
売上と利益を目標にした企業行動があり、その影響を受けて、管理職も社員も追随する。
管理職がそういう話をする時、無茶な売り上げや利益が出るときもあるから、普通は話半分で聞いている人が多いのではないか。
ある組織構造の利益責任を直接負うのは管理職以上であり、社員は単独の案件の管理責任に閉じているから。

すると、企業のような組織ではリーダーシップは見えにくいように思われるが、そうでもない。
特に社長は、自分は将来、こうしたいのだ、と宣言して、実際に行動する。
たとえば、組織構造をいじったり、大きな人事異動をしたり、M&Aをやったり。
その行動を見ると、違った意味でのリーダーシップを見ているような気がしている。

では、何が違うのか?

【2】セルズニックが提唱した制度的リーダーシップの意味が何となくわかった | 日々の練習では、こんなコメントがあって、なるほどと思った。

(引用開始)
「制度的リーダーシップ」は、かねてから意味が飲み込めずに困っていた用語であった。
原価計算論の教科書トレーニングで予算のところを練習していたところ、
予算の計画機能の具体的アクションとしては各管理者の目標を公式化することがある
と書かれてある箇所に、
組織内に制度として組み込む
というメモ書きがあった。
おそらく教科書にある記述を先生が別の表現で説明してくれたのだろう。
制度化とは公式的に組織に組み込む、ということがわかった。
とすると、制度的リーダーシップとは、
リーダーシップという精神、考え方、コンセプト、ぼんやりした抽象的なものを、
見える形でシステムとして組織に取り込むこと
だといえそうだ。
これならしっくりくる。
一応は納得することができた。
(引用終了)

(引用開始)
企業が外部環境の変化に対応するため組織を変更すると(命題:組織は戦略に従う)
組織は内部整合性をとるために新たな価値を注入する必要がある(命題:制度的リーダーシップ)、
といった具合に外部・内部環境を関連させて考慮するようになったのです。
(引用終了)

企業という組織は、売上目標や利益目標が必ずある。
その目標を達成するために、何らかの行動を起こさなくてはならない。

普通は、社長などの経営陣が売上目標や利益目標、経営戦略を立てて、その方針を実行するのが管理職。
すると、管理職は「連結ピン」の役割を担うと同時に、事業部の売上目標・利益目標を実行する具体的な行動をリーダーシップとして制度的に埋め込むわけだ。

つまり、管理職は必然的に、組織からリーダーシップを強制される。
そういうリーダーシップという性質を管理職が持たなければ、社員は影響されないし行動しないから。
それが制度的リーダーシップというものなのだろう。

たとえば、簿記1級の管理会計では、事業部の業績評価と事業部長の業績評価は異なる、という指摘がある。
事業部長が管理可能なコストと、事業部のコストは一致しないから。

事業部長は自身の評価を上げるために、組織の売上目標・利益目標を達成しようとする。
そのために、彼自身はリーダーシップを発揮する必要があり、それは、制度的リーダーシップとして、組織から公式的に与えられたミッション、リーダーシップとして付与されるわけだ。

【2】制度的リーダーシップの概念で、過去に思っていた幾つかの疑問は解けた気がしている。

【2-1】以前、役職が上がる人ほど、実際の言動は厳しくても、言う言葉がすごく綺麗事になっている気がしていて、不思議に思っていた。
そんな綺麗事を言っていても、実際の行動は違うじゃないか、と。

その理由は、社会的地位が高くなるほど、そういう人達は自然に制度的リーダーシップを持つようになるのだろうと推測する。
社会的地位という組織構造が、制度的リーダーシップを個人に強いるわけだ。
リーダーシップを発揮するように、その人個人を変えてしまうこともあるだろう。

「立場が人を作る」という言葉は、役職に就いた人が制度的リーダーシップによって成長した、という道もあることを示唆しているのではないか。

【2-2】制度的リーダーシップは、組織構造から離れると、その人からリーダーシップは消えてしまうのではないか。

なぜなら、事業部長という役職にいるからこそ、そのリーダーシップは発揮されているわけで、役職を外れたら、ただのおじさんに過ぎないから。
制度的に埋め込まれたリーダーシップを外された事業部長が、自身でリーダーシップを発揮できるのだろうか?

会社一筋に生きてきた人が、会社から離れると、すごく影響力がない人に変わってしまう現象があるが、その理由は、そこにあるのだろうと推測する。

【3】では、リーダーシップとは、個人が自然に持つ性質と、組織から公式的に付与されて制度として組み込まれる性質(制度的リーダーシップ)の2種類があるとしたら、その違いの本質は何なのか?

リーダーシップには、個人に由来する性質と制度に由来する性質がある。

制度に由来するリーダーシップは電磁石みたいなもの。
電気があれば、制度的リーダーシップは発揮されるが、電気がなくなると磁力が切れてしまうのと同様に、制度的リーダーシップも消えてしまう。

一方、個人に由来するリーダーシップは天然磁石みたいなもの。
その人個人が自然に持つ影響力(磁力)が自然にリーダーシップに変わる。

そう考えることは出来ないだろうか。

【追記】
門屋 浩文さんのツイート: "@akipii 職務に忠実なリーダーシップは本当のリーダーシップな?と懐疑的です あくまで職務に忠実なだけなのでは? 職務に忠実なのも大事なことですが"

akipiiさんのツイート: "@MadoWindahead そう、本当のリーダーシップなのか、という疑問は同意です。実際の組織の現場では、制度的リーダーシップによってリーダーシップを発揮している管理職の事例はよく見かけませんか? 僕はよく見かけます。"

| | コメント (0)

2017/01/08

「ワーク・ルールズ」の感想

Googleの人事施策に関する本「ワーク・ルールズ」が面白かったので、感想をメモ。
ラフなメモ書き。
書きなぐりなので論理的整合性は無視。

【1】Googleという世界で一番優れたIT企業の人事施策はすごく興味はある。
博士課程ばかりの出身のプログラマが多くて、大学の研究室のような雰囲気で、仕事はプログラミングに没頭できる環境。
そういう人と環境がいる場所で、業績管理や報酬制度、動機付けはどのようにコントロールされているのか?

Googleが他の企業と比べて面白い点は、自社の人事施策においても、アンケートなどのデータを収集し、検定や相関関係を調べることで因果律を見出し、その結果を次の人事施策に反映して、どんどん改善している点だ。
実際に、本の中にも、報酬の数値、相関関係の数値などもあり、非常に興味がそそられる。

僕が興味を持った部分は第7章の業績評価制度、第8章の能力評価制度、第10章の報酬制度、そして第13章。

特に第13章では、高潔であろうと思われるGoogle社員ですらも、無料カフェテリアが既得権益と見なされて、醜い行動をする社員もいる、という事実をはっきり書いている所は、非常に真摯に感じた。

知的に優れている人であっても、無料カフェテリアが当たり前の権利になってしまうと、食べ物を容器に詰めて持ち帰ったり、土曜日のハイキングのために水のボトルやお菓子を大量にバックパックに詰め込んだりする行動を取る人もいる。
もちろん、その後、社内にその状況がフィードバックされて、問題も解消されたらしいが、そういう話を読んで、逆に、Google社員も人の子なのだ、と改めて、ホッと感じる。

当たり前の権利は、知的に優れている人も慣れてしまって、既得権益となり、逆に発展の阻害要因になる。

【2】業績管理と人材育成は明確に分ける。
業績によって昇進や昇給を提示する時期、その人のスキル向上やOJTなどを計画・評価する時期は明確に分ける。
昇進や昇給を約束する外発的動機を導入すると、学ぶ意志や能力が低下してしまうから。

これは、ハーズバーグの衛生要因・動機づけ要因を思い出させる。

チームには2個の尻尾(テール)がある。
ごく一部の優れた最高の社員であるトップテール、最低の社員であるボトムテール。
人間の能力の分布は、正規分布ではなく、「べき分布」で考えるべきだ。

普通の企業は正規分布を使って社員を管理する。
現実の個人別成績は正規分布とみなす。
すると、ほとんどの社員は平均に分類されてしまう。

しかし、実際は、組織で人が発揮するパフォーマンスは、べき分布になる。
ごく一部の優れた優秀な社員が、圧倒的な業績を上げることで影響力を行使する。

但し、べき分布は、正規分布の一種。
正規分布が古いというわけではない。

【3】プロジェクトにマネージャは必要か?
Googleでは、良いマネージャであっても、技術面に疎すぎる中高年の応募者を落とすことが多かったらしい。

しかし、良いマネージャは重要である、と。
そして、その職務特性は8つあった。
そして、チェックリストを作ったり、育成プログラムを作ったりした、と。

【4】googleで面白いのは、人事施策の良し悪しを自社のアンケート結果を元に統計処理して、その相関関係などを調査分析している点だ。
「世界中の情報を整理する」ミッションを自社の人事施策にも生かしている。

この本に書かれている内容が貴重であると思うのは、まさにその実験データと結果が記載されているからだ。
ここまで赤裸々に書いた本はないはず。

学習する組織、最高の人材を集める、など、それらのやり方を逐一実施した内容を全て統計処理している。
その分析と改善策が面白い。

もちろん、彼らは、統計データがアンケートという質問形式に依存しているために、バイアスがかかっていないか、相当気にして対処している。


| | コメント (0)

2016/06/21

組織行動で知られている罠

世界で最もイノベーティブな組織の作り方」を読みながら、組織行動で知られている罠についてメモ。
主張は特に無し。

【1】有能性の罠(competency trap)

起業家・経営者ファイトクラブ [まぐまぐ!]

BBIQモーニングビジネススクール

コンピテンシー・トラップとは? : 現場を活かす企業経営

「満足水準を超えた利潤を得て、不満がない状況では、あえて現在よりも優れた戦略や方法を探索する動機づけが失われる」
「当面の事業が成功すればするほど、知の探索をおこたちがりになり、結果として中長期的なイノベーションが停滞するというリスクが企業組織には本質的に内在している」

従来のやり方で成功し続けると、そのやり方に固執して、現在よりも優れた方法を探索しなくなる。
特に、保守的な大企業ほど、創業以来のやり方に固執してしまいがち。

【2】訓練された無能(官僚制の逆機能)

官僚制とは | ビジネススクールならグロービス・マネジメント・スクール

官僚制の意味 - MBA経営辞書 - goo辞書

2/4 官僚制理論と官僚制批判理論その基礎 [社会ニュース] All About

ユニゾンのENSEMBlog : 訓練された無能

「「訓練された無能」とは、あまりに規則などに固執することによって、変化した状況に対応できなくなってしまうことです」
「おかれた状況が変化しているのにもかかわらず、同じ行動パターンを繰り返してしまう 」

保守的な大企業に長くいる人ほど、周囲の環境が変化して以前の常識が通用しなくなっているのに、同じような行動パターンを踏んでいるケースを見かける時がある。

【3】グループシンク(集団浅慮)

集団思考 - Wikipedia

グループ・シンクとは | ビジネススクールならグロービス・マネジメント・スクール

Educate.co.jp | グループシンク(集団浅慮)

なぜこんなに発言しにくい? -集団浅慮 | GLOBIS 知見録 - 読む

「集団の圧力により、その集団で考えていることが適切かどうかの判断能力が損なわれる状況です」
「特に、集団の凝集性が高い場合や、外部と隔絶している場合、支配的なリーダーが存在する場合などに起きやすい」

特に日本人の一部の集団のように、集団の凝集性が高く、個人の異論を受け入れないような集団では、集団での意思決定が個人の意思決定よりも浅はかになってしまうリスクがある。

【4】リスキーシフト(集団極性化)

リスキーシフト - Wikipedia

基礎演習

意思決定の集団極性化の社会心理学|経済界

集団極性化:心理学用語集 サイコタム

集団思考のワナ ー リスキーシフト|レイデル の「心のエラー」と「脳のトラップ」

「組織での意思決定は極端な方向に振れやすい」
「集団極性化現象(グループ・ポーラライゼーション)とも呼ばれる」
「集団浅慮(グループシンク)の結末として、往々にしてリスキーシフトと呼ばれる現象が起こります。これは、グループでの意思決定は、極端な方向に振れやすいという現象です。」
「リスキーシフトは、集団で決めたことが、個人で考えるよりも危険性の高い決定になることをいいます。」

大規模な組織ほど、実は、リスクのある意思決定が行いやすい時がある。
個人の意思決定よりも集団の意思決定の方が極端にぶれやすい。

【5】コーシャスシフト

集団意思決定

集団思考のワナ2 ー コーシャスシフト|レイデル の「心のエラー」と「脳のトラップ」

いじめ、暴行・・・集団心理が危険な結果を招くわけ [ストレス] All About

2/2 「いじめ」にかかわる集団極性化と傍観者効果
 いじめ、暴行・・・集団心理が危険な結果を招くわけ [ストレス] All About

「リスキーシフトとは真逆で、集団の意思決定が保守的で消極的な方向へ向かうものを言います」
「コーシャスシフトは、集団で決めた決定が、個人で決めるよりも、慎重でより安全志向になることをいいます」
「こうした集団心理の特性をよく理解し、小さな事件が大きな問題へとエスカレートする前に、今起こっている現象をよく検討する必要があります」

コンセンサスに重きをおくほど、ラディカルな企画や意見は、角が取れて、最終的な結論は何も言っていないに等しくなる場合がある。

日本の学校にけるいじめは、集団極性化現象そのものと同じだと思う。
個人では良い人なのに、集団になると、排除する力が大きくなりがち。

【6】バイアスの罠

番外その14 「バイアス」の罠~人間の判断にはバイアスがかかっている~

選択バイアスの罠

意思決定のバイアス|おりばーのブログ

「人間の意思決定は気づかないうちにさまざまなバイアスを帯びている」

バイアスの罠を意識しておかないと、他人の意見に左右されやすく、意思決定がぶれやすくなると思う。

【7】我々は、学校、会社、コミュニティという集団に必ず属している。
過去の日本の歴史をたどれば、官僚的な組織になるほど、上記の罠にハマったケースが見受けられるだろう。

また、自分が所属する組織において、「有能性の罠」「訓練された無能」「グループシンク」「リスキーシフト」「コーシャスシフト」の現象なのかな、と思う時もある。
そういう概念を知っているだけでも、落とし穴を避ける事もできるはず。

| | コメント (0)

2016/04/14

話題の時計「フランク三浦」から考える商標権の考え方

@hatsanhatのつぶやきで知財裁判の事件を知ったのでメモ。

【参考】
話題の時計「フランク三浦」 パロディはどこまで許される? - 弁護士ドットコム

佐野 初夫さんはTwitterを使っています: "フランク三浦(笑) https://t.co/ElgsMGWr5P 欲しいかも Amazonにたくさん売ってます"

商標登録 メッセージサイト - 商標登録に必要な要件

商標権の要件はいくつかある。
すぐに思いつく要件は下記かな。

一つ目は、自他識別能力があるか否か。
「フランク三浦」と「フランク・ミューラー」は発音は紛らわしいけど、日本語にすれば識別できる、と判断したのかな。
この辺りの事例はとても煩雑で、ブランド名の「・」や「/」が空白になるだけで差止請求や損害賠償請求が来る場合もあるみたい。

もう一つは、混同惹起がないか。
「需要者の間に広く認識されている」(つまり周知性)ように、ブランド名が全国的な周知性があれば、問題ない。
例えば、携帯のAUは、短い単語で紛らわしいのに、全国的な周知性があるから認められた。

この考えは、不正競争防止法の周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為、商品形態模倣行為の要件にもつながる。

他には、先使用権が認められるか。
その場合、都道府県レベルまたは全国レベルで周知性がなければ、認められない。
逆に、それだけ広い範囲で既に知名度があるならば、同じブランド名だが先に使っているということで、保護される。

商標権や著作権で最近話題になったのは、東京五輪のエンブレムの件だろうか。
最近は、特許や商標だけでなく、著作人格権(同一性保持権とか)・著作隣接権(複製権・演奏権とか)などの知的財産権の知識を知っておかないと、第三者から訴えられる時があるので、注意すべきかもしれない。

| | コメント (0)

組織成長モデル「グライナー・モデル」のメモ

組織成長モデル「グライナー・モデル」のリンクをメモ。

【参考】
ビジネスの世界、いろいろ(6) “利益の追求って、組織のルールって?(6)”

マネジメント・キャリア・人事 ~ブログJ-center~ 組織成長の5段階(グライナーモデル)

MBA流 大人の学ぶ力 |【組織の法則】プロローグ:ハッピーな組織を作るための必須知識 グレイナーの5段階企業成長モデル

グレイナーの企業成長モデル - すべてが学びと思えたら

製品ライフサイクルと同じように、組織成長にもライフサイクルがあるらしい。
「グレイナーの企業成長モデル」と呼ぶらしい。
グレイナーの企業成長モデル - すべてが学びと思えたらがの記事分かりやすい。

(引用開始)
ベンチャー企業の授業で、グレイナーの企業成長モデルの説明がありました。
1972年にハーバード・ビジネス・レヴューに掲載された理論です。
グレイナー教授は日本ではあまり知られていないようですが、この論文の引用は経営学の大御所であるドラッガーと並んでとても多いそうです。

最初、授業で説明を受けた時は、理解ができなかったこともあって、いまひとつピンと来ませんでした。
しかし、後で、テキストを復習したり、書籍や文献に当たっていくにつれて、非常によく考えられていて、納得感のある理論だということを感じることになりました。

グレイナーの企業成長モデルを簡単に説明すると、
・ 企業は5つの顕著な発展段階を経て成長する。
・ 組織は危機を乗り切るために、一定の変革と革命を行わなければならない。
・ 危機を乗り越えて新たな成長段階へと進む。
というものです。さらに5つの発展段階をくわしく説明すると、
・ 発展段階には成長するためのモデルがある。
・ 同時に、危機も発生する。危機を乗り越えるモデルがある。
としています。
(引用終了)

僕が理解した内容は次になる。
数人で立ち上げたベンチャー企業があったとしよう。
最初は、製品ライフサイクルの「死の谷」「ダーウィンの海」で試練が訪れる。
アイデアだけでは製品を安定して大量生産できないし、会社内部の組織化が必要になってくる。

次に、会社の組織化として、普通は機能別組織にして、業務が専門化されて回り出す。
すると、蛸壺のような組織構造になってしまうために、もっと権限をくれ、と現場が不満を持ち、自主性を促さざるを得なくなる。
つまり、事業部組織は、会社の規模が大きくなると必要になるわけだ。

さらに、事業別組織で各事業部に権限を移譲すると、自由にビジネスを始めるようになり、統制が取れない。
そこで業績連動させる仕組みを取り入れて、事業部に制約を課す。
すると、各事業部は目先の売上や利益に局所最適化された行動を取るようになり、イノベーションある行動を取りにくくなり、業績重視の行動が社会的な悪影響を及ぼす。
まるで、最近の日本企業の不祥事を連想させる。

最後に、事業部別組織(または社内カンパニー制)に対し、全社の調整機能が上手く統制されると、部分最適の組織は全体最適の方向へ動き出す。
しかし、全社の調整機能は形式的な官僚主義になりがちで、ミンツバーグの「機械的官僚制」という症状に陥る。
「機械的官僚制」は標準化された業務、大量生産の組織に向くが、大企業病に陥りがち。
まるで、公務員組織や老舗の大企業を連想させる。

組織は常に、その成長に応じて、乗り越えるべき段階がある。
例えば、ある程度大きな組織になると、組織慣性が大きく、経営トップでさえ組織の方針変更が難しくなる。
そうなると、組織変革の動きを起こすために、組織内の優秀なリーダーを選んだチェンジリーダーを組織横断で作り、エバンジェリストとして組織をかき回す、みたいな対策を取る時もある。
この動きも、グレイナーの企業成長モデルで当てはめることもできるだろう。

ベンチャー企業の経営者は、このような組織成長モデルを知っておくと、自分たちが今どの立ち位置にあり、今後どのような危機が現れるのか、を予測しやすくなるだろうと思う。

| | コメント (0)

2016/02/27

XP祭り関西2016~アジャイル15周年ふりかえりの感想 #xpjugkansai

「XP祭り関西2016~アジャイル15周年ふりかえり」が無事に終わりました。
約60人もの参加者、木下さんの基調講演、山根さんと土屋さんのアジャイルラジオコンビ、スクラム道関西の4人、藤井さんのDtoD、パネルディスカッションと盛り上がりました。
参加者、講演者、スタッフの方、お疲れ様でした。

以下は、僕個人のラフな感想。

【参考】
XP祭りin関西2016 - XPJUG関西wiki

XP祭り in 関西 2016 ?アジャイル15周年ふりかえり? - 日本XPユーザーグループ関西 | Doorkeeper

XP祭り関西2016~アジャイル15周年ふりかえり(2016/2/27) #xpjugkansai - Togetterまとめ

fkino diary(2016-02-27) "XP祭りin関西2016 に参加しました"

【1】今日の基調講演は、木下さんの「5分で分かるアジャイルムーブメントの歴史 拡大版」。
日本のアジャイル15年の歴史を凝縮した内容で、とても素晴らしいと思います。
僕は、XPJUG関西に10年以上関わってきたので、とても感慨深くて、色んな思いがありすぎて。

日本のアジャイル本の歴史を辿ると、3回のうねりがある。
1回目はXPブーム、2回目はScrumブーム、そして今3回目。

2000年代前半のXPブームでは、開発者がXPに熱くなっていた。
東京のXP祭りに参加して、あの雰囲気を関西でもやりたいと思って、XPJUG関西で企画したのがXP祭り関西2006。
それから10年も続いている。

2008年頃からのScrumブームでは、プロジェクトリーダーがScrumをチーム運営へ導入して熱くなっていた。
田口さんが、僕はScrumを導入して今まで失敗したことがない、と発言されていたのも思い出す。
未知の領域、新しい技術を取り入れた開発でScrumは大きな威力を発揮する、という趣旨を言いたかったのだろうと推測する。

そんな中、永和システムマネジメントとチェンジビジョンしかXPをやっていないのではないか、という疑惑から、平鍋さんが「アジャイル止める宣言」。
そこからAgileJapanが発足し、マネージャ層、経営層向けにターゲットを絞り込む。
また、IPAも「非ウォーターフォール型開発」という名前でアジャイルの研究会と資料を公開し、最初はIPAでもアジャイルと言えなかったのが、アジャイルという言葉が解禁になった。

そして今、ITがビジネスの中心になっているWebサービスやベンチャー企業では、アジャイル開発が当たり前の環境。
アジャイルでない従来型のSIもあるけれど、ネット上にもプラクティスやアンチパターン、事例が溢れていて、少なくとも知識の上ではもう差別もない。
そんな気がしている。

【2】山根さん&土屋さんのアジャイルラジオコンビのお話。
山根さんがJavaの開発で使ったツールやフレームワークの変遷の話は、僕もすごく同感して、感情移入してしまって。

僕も山根さんと同じく、ファウラーの「リファクタリング」本から入った。
僕は2002年頃、「リファクタリング」本を夢中で読んでいた。その頃はJavaプログラムを書ける初心者レベルだったから、こんな風に使うんだ、という知的刺激が楽しくて。
Eclipse上で、リファクタリングやデバッグ、しかもリモートデバッグまでできるのも楽しくて。

Antも随分使っていた。
WindowsでもUnixでも、同じビルドスクリプトが動くので、単体テストでもテスト環境でも本番環境でも同じようにビルドスクリプトを流用できる。
Strutsに初めて触れた時も、これだ!と思っていた。
今はもう、レガシーなフレームワークだけれど。

JUnit、DBUnitなどのテスティングフレームワークも書いていて楽しかった。
Javaでリフレクションはこういうふうに使うのか、モックはこういうものなのか、という気付きが楽しかった。

でも、あの山根さんも最近の技術のトレンドに少しずつ遅れてきていると感じている。
だから、コミュニティに顔を出して、新しいトレンドを取り入れようとしている、と。

【3】田口さんのKPTのプラクティスの事例も興味深かった。
普段はプラクティスの話はしないんだけど、と話しながら。

KPTは良くできたフレームワーク。
長所だけでなく、問題も洗い出して、対策まで考えさせる。

でもKPTを毎回やると飽きる時がある。
だから、他の色々なファシリテーションのツールを使う。
良かったこと・悪かったことをアイコンの周囲に付箋で書き出す。
モスバーガーの店前の掲示板を真似て、朝会の前に、いじりキャラの若手に小さなホワイトボードにその日の気分を書かせて、朝会の雰囲気をほぐしたり。

【4】パネルディスカッションのテーマは「アジャイルの達人に聞く~ソフトウェア開発の質問コーナー」。
僕がモデレータと言いながら、自分が一番聞きたい内容を質問形式にして、パネラーと議論できればと思っていた。
質問は、典型的なWF型開発しか知らない、というSIの立場であえて書いてみた。
5つの質問を用意していたが、最初の質問1個だけで1時間以上も費やしてしまった笑。

【5-1】「要件定義で注意しているポイント」を質問として投げかけた所、藤井さんから、その問題はアジャイルでは既に解決している。
アジャイルでは要件のように機能詳細は定義せずに、ユーザストーリーでまとめる。
1~3ヶ月おきにリリースすることで、ユーザーストーリーを検証・評価して、顧客に価値あるシステムを提供していく。

でも、要件定義が必要なのは、見積りの元ネタになるから。
見積りが契約内容と見なされてしまう。

【5-2】土屋さんいわく。
見積りは2種類は出すようにしている。オプションは2種類作り、双方にメリット・デメリットがあるように説明すれば、お客さんも納得してくれる。
松竹梅、という3種類の見積りあるよね、と。

【5-3】木下さんいわく。
うちは、インセプションデッキが作れるまで開発を始めない。
ユーザとは準委任契約を結んでいるので、要件定義で固定スコープの一括委託契約はしない、と。
顧客はうちの開発力を信用しくれているし、うちも顧客の信頼を崩さないようにと思って、信頼関係を大事にしている、と。
この点は、委任契約にある善管注意義務の発想と全く同じ。

他に、価値創造契約のように、準委任契約ではなく、システムの開発と運用を一体化した契約スタイルもある。

また、ユーザ側の担当者がアジャイルを受け入れてくれる人か否か、を判断している。
ユーザ企業の担当者が上司にお伺いを立てるような人ではダメで、俺がすべての要件を決める、と言う、プロダクトオーナーの役割を自覚する担当者でないと上手くいかない。

【5-4】田口さんいわく。
うちはゲーム会社なので、受託開発案件はそうない。
ゲームでは、ユーザが楽しいと思うものを作る、というふわっとした要件が多いので、要件定義という発想がゲーム業界自体にあまりない。
やってみないと分からないから。
そういう未知のソフトウェア開発では、Scrumがすごくマッチする。
Scrumを導入して今まで失敗したことがない。

でも、たとえば、ゲームのキャラクターを作るという作業の場合、キャラクターの図面を作る、キャラクターのエフェクトを付ける、などの作業を複数人のデザイナーが担当して作業する場合がある。
その場合は、Scrumではなく、タスクかんばんでワークフローとして作業を流す。
その方が回りやすい、と。

【5-5】参加者からの質問も多くて、その内容もすごく共感できて。

準委任契約と言っても、実際は要件定義は実施済みで、どんなモノを作るのか、という仕様が決まっているから、一括請負契約と変わらない場合がある。
そんな場合でもアジャイル開発はできるのか?と。

パネラーからは、顧客と信頼関係を築いていれば、準委任契約でも、スコープを固定せずとも開発は可能。
ある一定期間で、これだけの予算の範囲で作る、という条件があるので、その範囲内でベストなソフトウェアを作る。
その条件の範囲内で、顧客の要望に基づき、フィーチャを取捨選択して、オプションのように取り扱う、と。

でも、質問者の方は何となく納得できていないような雰囲気を感じた。
そして僕自身も、質問者と同じく違和感を感じていて、質問者とパネラーの間で、準委任契約の意味やその背後にある現実にズレがあるように感じた。

僕が知っている準委任契約は、実費請求の準委任契約であり、作業報告書がなければ開発費用を請求できない。
顧客の依頼に基づいて作業した、という契約。
その契約内容は、事実上、一括請負契約とあまり変わらない。

一方、パネラーの場合、顧客との信頼関係があり、顧客はチームの開発力を信用しているし、チームも顧客の要望がスコープに入るかどうか十分に吟味して回答し、その範囲内できちんと結果を出す。
その差は、要件定義がアバウトであっても、顧客がチームを信頼していて、チームも必ずアウトプットを出す、という信頼関係があるか否か。
その差は大きい。

や16ぁさんはTwitterを使っています: "挙げている例が当てはまりすぎててそのままワイに突き刺さる #xpjugkansai"

kawanotronさんはTwitterを使っています: "でも@akipiiさんの悩みよくわかる。 #xpjugkansai"

【5-7】他に、アジャイル開発ではドキュメントを作らないのか?という参加者からの質問もあった。

木下さんいわく。
ドキュメントはうちもほとんど作っていない。
でも、ユーザ側の担当者が変わると、そんな話は俺は聞いていない、と言い出す人がいて、大変になったこともある、と。

【6】アジャイル開発が当たり前の知識になったとしても、実際の現場でアジャイル開発が使えていなかったり、契約や要件定義でアジャイル開発を生かすノウハウがなかったりする。
今日のような場で、その辺りの本音の議論が少しでもできて、参加者の心に残ってくれたらいいなと思う。

| | コメント (0)

2015/12/26

サーバントリーダーシップになぜ違和感があったのか

図書館で借りた「グロービスMBAリーダーシップ」を読んで、サーバントリーダーシップになぜ違和感があったのか、その理由が何となく理解できた。
以下ラフなメモ書き。

知っておきたいIT経営用語 - サーバントリーダーシップ:ITpro

明日を変える働き方:「サーバント・リーダーシップ」という考え方 (1/2) - ITmedia エンタープライズ

リーダーシップ考(4)~サーバントリーダーシップ /戦略ノート25/プロジェクトマネジメントOS本舗

アジャイル開発への壁は価値観の壁: ソフトウェアさかば

サーバントは革命の言葉。ビジョンを示せ! - サーバントリーダシップ私論 - : ソフトウェアさかば

【1】サーバントリーダーシップでは、リーダーはサーバント(召使)であり、奉仕する→導くという順でリーダーシップを発揮すると言う。
でも、僕の中ではずっと違和感があった。

リーダーシップと言うと、どうしても命令型のリーダーをイメージしてしまう。
上司や社長のリーダーシップは、実際、今までの僕の貧弱な経験の中では、皆の気持ちを吸い取って導くというタイプはそんなにいなかったように感じた。
そして、僕自身もアジャイル開発や自己組織化という概念を実際のチームで実現しようとしたけれど、最後には指示を出して強制的に従わざるをえない場面も経験して、どうしても馴染めなかった。

たとえば、受託請負のソフトウェア開発案件では、結合テスト以降のプロジェクト後半では火が噴く状態になりやすく、どうしても残業したり、休日出勤したりして、進捗遅延をメンバー全員でリカバリーせざるを得ない時がある。
自分がプロジェクトリーダーならば、納期は必須だから、メンバー全員でカバーするしかない。
すると、綺麗事を言っても仕方ないし、強制的に働かざるをえない。

そんな時にサーバント・リーダーシップのような綺麗事を言っても、結果はついてくるのか?という疑問があった。
でも、かと言って、アジャイル開発を実現したいという気持ちがあって、自分の心の中でずっと葛藤があった。

【2】「グロービスMBAリーダーシップ」によれば、サーバント・リーダーシップが重視されるようになった時代背景があるようだ。
一部のリーダーが全てをコントロールできるわけではないから、必然的に「エンパワーメント」を加速する必要が出てきた。

巨大な官僚組織のままでは、変化の激しい時代ではすぐに変化に対応できない。
そこで、上司は部下に権限移譲し、部下に動機づけして、部下が自ら実行できるように支援するリーダーシップが必要になってきた、と。

この辺りは、アジャイル開発やScrumの概念を連想させる。

一方、2000年始めにエンロンなどの不正事件が起きた時、その不正事件にMBAホルダーを持つ経営者が数多く関わっていて、彼らの倫理観や教育方法に疑問が投げかけられた。
そうした時代背景から、リーダーの資質論やリーダーシップ開発などのようなあるべきリーダーシップを解明するだけでなく、倫理観に軸足を置いたリーダーシップ理論が注目され始めた、と。

【3】「グロービスMBAリーダーシップ」によれば、サーバント・リーダーシップの概念は、グリーンリーフによって提唱されたらしい。
彼は、1970年代のアメリカで、ニクソン事件のように、当時のリーダーに不信感や幻滅を抱く時代背景の中で、新たなリーダーシップ像の着想をヘルマン・ヘッセの短編小説「東方巡礼」から着想を得た。

小説では、巡礼団の客が快適に過ごせるように、細やかな心遣いで客に尽くす召使が登場するが、実はその召使こそが東方巡礼を導く結社のリーダーだった、という話。
そこから、彼は、権力や物欲への執着から動くのではなく、素晴らしい目標や社会を実現するために立ち上がるこうしたリーダーは、その高い倫理性や精神性によって人々から信頼を得るのだ、と考えた。

このサーバント・リーダーシップ理論は、1970年代に提唱されて一部では注目されていたが、2000年代初頭のエンロン事件を経て、新たに脚光を浴びた、という経緯があったらしい。

【4】理論の背後にあるそんな時代背景や経緯を聞くと、自分の理解は浅かったのかなと思う。

リーダーが自分で最後は決める、という立場かつ、成果を出す責任がある立場と、メンバーの率直かつ客観的な意見も尊重したい気持ちで対立があり、葛藤が起きた時、そのギャップはどう解決すべきなのか?

確かに、リーダーとメンバーは立場が違う。
リーダーがメンバーに権限委譲したとしても、最終責任はリーダーにあるし、最終決定はリーダーが行う責務がある。
一方、権限移譲したからと言って、メンバーにリーダーがおもねる必要はない。

上記の話を読んで理解したことは、メンバの信頼を集めてチームとして成果を出すには、リーダーの一方的な価値観をメンバーに押し付けるのではなく、社員・顧客・社会に奉仕するためにこのような行動が必要なのだ、という価値観を提示する必要がある、ということだ。
つまり、リーダーの主観的な価値観ではなく、メンバー全員が共感して信頼出来る価値観を提示することが求められている。

そういう理解に至ったが、内容はそりゃそうでしょ、という感じだろうが、リーダーの立ち位置を踏まえて、リーダー自身の価値観は結局どこにあるのか、をいつも突き詰めて考えて持っておき、どんな状況でもぶれないようにしておくのが必要なのだろう。

グロービスMBAリーダーシップ」を読んでみると、他にも、リーダーの特性論、非常時におけるリーダーシップ像、組織変革を行うリーダーシップ理論、パワー(権力)と影響力、など、組織力学に興味がある人なら一通りの内容が理解できて面白いだろうと思う。

| | コメント (0)

2015/07/26

R言語の解説記事のリンク

R言語の解説記事で、下記の記事がわかり易かったのでメモ。

【参考】
飯島の雑記帳 - Rゼミ/R初心者ゼミ

個人的には、R言語をSQLみたいに扱えるか試してみたが、ちょっと感覚が違っていた。

RとSQLを対応付けてみた - あらびき日記

CSVをInputにして、データの抽出や集計はできるが、R言語のメリットは統計処理とグラフ表示。
やっぱり統計量の意味が分かっていないと面白くない。
でも、CSVのデータをすぐに2次元の図にプロットできるのは、視覚的に分かりやすいので、メリットだと思う。

ネットで探してみたら、統計検定みたいな資格もあると知った。
こういうので統計学の勉強をした方がいいのかな?

統計検定:Japan Statistical Society Certificate

もう少し試してみたい。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧