インターネットは高速道路、そして大渋滞 part2
別の記事「インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞」を読んで、僕がかつて生きてきた時代と現在が全く違う環境であることを再認識した。
記事では、「この10年のITの進化とインターネットの普及によって将棋の世界の何がいちばん変わったか」という問いに対し、羽生名人の下記の話が載っている。
「将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということだと思います。でも、その高速道路を走り切ったところで大渋滞が起きています」
つまり、「ノウハウの共有と迅速な公開」と「インターネットを介して強敵との対局機会を常に持つことができる」環境が突然できあがったことにより、状況は下記のように変わった。
「将棋の駒の動かし方すら知らない小学校高学年生が5年くらいでプロ棋士にまで駆け上がる」ということが将棋界では起きているそうなのだが、そのことは、天才・羽生善治をもってしても、
「自分たちの世代の感覚からすると、全く信じられないスピードなんです」
ということになる。
では、大渋滞の意味を問われて、羽生名人は下記のように答えている。
「確かにそのレベルまでは一気に強くなれるのだが、そこまで到達した者たち同士の競争となると、勝ったり負けたりの状態になってしまい、そこから抜け出るのは難しい。一方、後ろからも高速道路を駆け抜けてくる連中が皆どんどん追いついてくるから、自然と大渋滞が起きる。最も効率のよい勉強の仕方、しかし同質の勉強の仕方で、皆が、高速道路をひた走ってくる。結果として、その一群は、確かに一つ前の世代の並のプロは追い抜いてしまう勢いなのだが、そうやって皆で到達したところで直面する大渋滞を抜け出すには、どうも全く別の要素が必要なようである」
この記事には、時代とか生き方について考えさせられた。
自分が過ごした80年代は、根性論真っ盛り。授業中に先生が生徒を殴るのは当たり前だったし、運動中(特に野球)に水分補給は厳禁だった。(今じゃ考えられない(@_@))
でも今では、受験勉強やスポーツのノウハウなんて、インターネットでいくらでも探せるし、掲示板やMLの対話で得られる。
将棋だけでなく、10代の勉強も同じ状況が起きているのではないか?
その果てが、高校生・大学生の就職難だったり、オーバードクターだったり、公認会計士試験に受かったのに就職できない合格浪人だったりする。
いずれも、前の時代に「良い」と言われていた生き方に従った真面目な人たちが、突然、生き方のルールが変わった現状に翻弄されている印象を受ける。
現在の生き方が変わってしまったという事実に気づかない人たち、そして古い時代の生き方に忠実な人に教わっている人たちが一番苦労しているのかもしれない。
結局、インターネットという高速道路で取得しやすい技術や知識、資格よりも、マネジメント等のようなメタな知識が求められているのかもしれない。
インターネットという高速道路を使って追いかけてくる人たちとの競争と大渋滞を避ける生き方は何か?が問われている気がする。
| 固定リンク
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- インターネットが及ぼす変化とは?(2005.09.24)
- 「リーンソフトウェア開発」~アジャイルとウォーターフォールを繋ぐミッシングリング(2005.09.23)
- 概念に正しい言葉を当てはめないと混乱の原因になる(2005.09.10)
- ITの技術革新はOSよりもWebソリューションへ移っている(2005.09.06)
- XP祭り2005の公式記事(2005.09.06)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- TwitterやFacebookは人力キュレーションツールとして使う(2022.10.02)
- 「現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全」の感想(2022.08.28)
- 人類は海辺から生まれた~水生類人猿説が面白い(2022.08.09)
- 戦前の日本人の気質はまだ成熟していない青年期と同じだった(2022.06.14)
- 物理学を攻略するためのマップ(2022.04.18)
コメント