プロジェクトリーダーやマネージャに問われる能力は何か?
今日の昼に50代のマネージャと昼食しながら、プロジェクトリーダーの仕事に関して考えることがあった。
【1】プロジェクトリーダーの特徴
5人ほどのチームで開発する時、プロジェクトリーダーの能力には特徴がある。
一つは、システムの設計や技術を細部まで知り尽くして技術者としては殆ど完璧なタイプ。この場合、基本設計や仕様確認ではお客さんよりも詳しいので信用できるが、プロセス管理や交渉にあまり長けていない。2次請け以下の会社に多い。
他方は、仕様や技術は詳しくないが、お客さんとの交渉やプロセス管理に長けているタイプ。この場合、サブリーダーが技術統括者の役割を担う。1次請けの会社に多い。この人達は基本的に手配師。
プロジェクトリーダーは現場監督そのもの。ソフト会社で最も戦力となる人達だ。
手配師はプロジェクトリーダーと言うよりも、もう一段格上のマネージャに近いように思う。
【2】技術者と管理者の役割を使い分けて、問題解決にあたる
プロジェクトリーダーの仕事は、トラブル解決にある。それができなければ必要ない、と言い切っていた。
よく考えてみれば、作業担当者が責任を果たせなかったり、進捗が遅れたりする諸々のトラブルを解決する役割をプロジェクトリーダーは持つ。
その時の解決方法として、技術でカバーするのか、プロセスを変更して攻めるのか、リソースを増やすのか、色々手段がある。
はぶさんの本にも書いてあったが、困難な場合に陥ったら、意識的に自分の立場を変えてみることも、手段を思いつくヒントになりうる。
技術者で駄目なら管理者になって、人の入れ替えやプロセス変更で対応してみる。
管理者で駄目なら技術者になって、自分でカバーするとか、アーキテクチャを見直したりしてみる。
彼がやるべきことは、どんな手段を選択してもいいから目的を果たすこと。
彼が考えるべきことは、問題解決によって目的を果たすことであり、手段にとらわれすぎることではない。
【3】手配師に必要な能力は何か?
僕の少ない経験から見ていると、手配師はリソースの補充・管理の能力が優れている。優れた技術者を引っ張ってきたり、スケジュールの調整をしてバッファを持たせたりするのが上手い。
マネージャから聞くと、プロジェクトリーダーとマネージャは仕事の質が違う。
僕はチーム運営が仕事の殆どとイメージしていたが違っていた。
チーム運営は1割に過ぎない。むしろ、コスト管理、リスク管理、スケジュール管理が3割ずつぐらいの割合でどれも大事ということだった。
コスト管理とリスク管理は、プロジェクトリーダーが見落としやすい所かもしれない。
今のIT業界は、中国でオフショア開発し、日本で設計とプロジェクト管理をするように役割分担する流れにある。
でも、ビジネスとしてうまく成り立っているのだろうか?
XP祭り2005でMSの萩原さんが
「日本人は個人や小集団では優秀だがマネジメント能力に欠ける」
と言ったことが気になって仕方ない。
【追記】
下記の記事にリンクがある。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- TwitterやFacebookは人力キュレーションツールとして使う(2022.10.02)
- 「現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全」の感想(2022.08.28)
- 人類は海辺から生まれた~水生類人猿説が面白い(2022.08.09)
- 戦前の日本人の気質はまだ成熟していない青年期と同じだった(2022.06.14)
- 物理学を攻略するためのマップ(2022.04.18)
「プロジェクトマネジメント」カテゴリの記事
- 「スクラムの拡張による組織づくり」のScrum@Scaleの感想(2024.03.31)
- ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart2~プロセスのレイヤと達成目標のレイヤが異なる(2023.02.18)
- ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart1~CSFはWBSみたいなものと捉える(2023.02.14)
- PM理論では課業志向の方が関係志向よりも生産性が高いことを主張しているのではないか(2023.01.22)
- 現代日本人の弱点はリーダーシップ不足と生産性が著しく低いこと、そしてリスク許容度が著しく低いことだ(2022.12.23)
コメント
私が考えるにマネージャーとプロジェクトリーダは全然役割が別だと思われますので問われる能力は別物だと考えます。
マネージャは名の通りマネージメントを行います。
だいたいは人・金・モノになるのではないでしょうか。それに加えリスクを管理しプロジェクトの環境を整える役割だと思います。これに必要な能力は調整力と管理能力だと思われます。
プロジェクトリーダはちょっと違うかもしれませんが、ファシリテータと言うか親分と言うかゴールまでメンバーをひっぱっていく役割だと思います。よってメンバーがついていく強い意思だとか高い技術力だとかチームビルド能力だとかの内部に対して影響のある能力かなと思います。
ただし5人程度のプロジェクトであれば1次請けの会社がマネージャを受け持ち、
2次請けの会社がプロジェクトリーダを引き受ける形となり、実質は2次請けに任す状態。
で、プロジェクトリーダがマネージメントの役割まで請負、マネージメントの能力まで問われる形になるのかなーと思ったりします。
オフシェアについては経験無いのでよくわかりませんが、上手くいっているイメージはありませんね。
私もXP祭り2005に参加しましたがMSの萩原さんの話は面白かったです。
長いコメントで申し訳ありません。しかもまとまってないし^^);
投稿: t | 2005/10/19 00:19
以前、XP祭りでトラックバックして頂いてましたね。その折はありがとうございました。
マネージャーとプロジェクトリーダ、1次請けと2次請けの対比は仰る通りです。おかげで自分のイメージがすっきりしてきました。
小さい会社で請負う場合、プロジェクトの中核にいる技術者にどうしても役割が集中しすぎて失敗するケースがよくあります。だから、状況に応じて自分の役割は今何なのか、を逐一自覚して、役割の軸を意識して移す必要があるかな、と思っているわけです。
オフシェア開発は時代の趨勢だなあと感じますが、僕個人は冷ややかに見ています。
プロジェクトのプロセスや役割を地理的にもうまく分割したいのだろうが、周囲を見回しても多分うまくいっていない。
理由は色々あるのでしょうが、最近は、マネジメントよりも、実は技術や設計そのものにボトルネックがあるのではないか、と思っています。又書きます。
投稿: あきぴー | 2005/10/20 23:43
確かにオフショアはどこも苦労していますね。
でも技術・設計はボトルネックにはなりえませんよ。
それらは“開発”の手段であって、本質的にロケーションは関係ない。
失敗するとすれば“開発プロジェクト”の手段としてオフショアを選択・運営したマネジメントに原因があるはずです。
よく仕様の精度、コードの品質などが原因として追求されますが、根本はそこではなく、ロケーションの壁を越えてどうやってコミュニケーションをとるのか?テストやフィードバックの体制はどうする?それを可能にするために必要な要員のスキルは?という全体構想とその実現にあります。
それは100%マネージャ(と、その上位)の領域です。
マネージャとリーダーの違いについては、
マネージャ=Strategist
リーダー=Tactician
と捉えればわかりやすいかと思います。
なかなか呑みにいく機会がつくれませんね。
いずれ近いうちに。
投稿: やぎ | 2005/10/21 13:31
やぎさん、正確無比なコメントありがとうございます。
今の自分が担当している役割の中で解決しようとしているから、全体が見えていない弱点が出ていて恥ずかしいですが。。
本当はもっとちゃんと書き直してUpしたいのですが、落ち着いていない状況なので、また改めて書いてみます。
来週の飲み会は行きたかったのになぁ。。
投稿: あきぴー | 2005/10/23 22:29
たしかに、プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーは明確な区別がないように思います。私の中では完全にイコールであり唯一違いを出せと言えば、PMはヒト、モノ、金の観点からプロジェクトをマネージメントする人、PLはプロジェクトを成功裏にサービスインするように引っ張っていく人という感覚です。
最近は、オフショアも話題になっていますね。コストが安くQCD(品質、コストデリバリー)の観点からは避けては通れない道だと思います。その辺のコントロールもPLにかかってくるものだと考えています。
投稿: choro | 2011/07/15 10:36