決断のプロセスとは
プロジェクトマネジメントに必要なスキルは色々あるけれど、リーダー個人の資質として意識すべきスキルに「決断力」があるように思う。
下記の本を読んでみて、自分が持つ少ない経験と照らし合わせて考えてみた。
【1】決断のプロセスは意外と単純
決断のプロセスは、実は意外と単純な構造をしている。
ゴール→情報収集→比較検討→選択決定(→分析)
このサイクルを何度も繰り返しているだけ。
なのに何故、決断に時間がかかるのか?
理由は色々あると思う。
一つは、ゴールが定まらないこと。
決めることに気がはやってゴールを決めなかったり、ゴールを決めたのに忙しさにかまけて忘れてしまう時がある。
原則を忘れず、原則をぶらさない事が大事。
もう一つは、比較検討で時間をかけすぎること。
リスクを恐れすぎたり、結果を気にしすぎたり、完ぺき主義に陥って、比較検討プロセスでなかなか結論が出ない時がある。
決断が早い人は、わざと早く失敗する。仮説を立てたら、すぐに実行して、仮説と結果と照らし合わせて、仮説の確からしさを高めていく。
この辺りはアジャイル手法に似ている。
他方もう一つは、比較検討プロセスで問題を解決する筋道に辿り着けない事。
状況が混乱していて、色んな事実を論理付けて1個の仮説を作り上げれない時がある。
そんな状態は、頭が混乱している。
マインドマップで色んなアイデアを発散させて洗い出してみる。
ロジックツリーで問題、原因、対策を関係付けて、整合性をチェックしてみる。
因果ループ図で各要素の因果を関係づけて、システムの構造を具現化してみる。
アクティビティ図でステークホルダー同士の相互作用をリストアップしてみる。
比較検討プロセスでは、モデリングのスキルが最も問われるのだろう。
【2】問いかける言葉を持っているか?
やばい状況で、何が問題の本質かを探る時、決断力のある人は、自分なりの問いかけを持っている。
・何が問題か?
・何故そうなったのか?
・最善策は何か?
・将来大丈夫か?
・それは達成できるのか?
シンプルな質問を相手に自分に問いかけて、少ない時間で情報収集できるかどうかは、決断のコストに直結する。
決断する時に正確性も大事だが、スピードも大事。
失敗するなら早く失敗して、何が正しいのか、その要素を早く洗い出した方がいい。
また、問題の本質に直結するような問いかけが出来る人は、コーチングの能力にも優れている。
問いかけることによって、質問相手に気づかせる。
問いかけることによって、質問相手が自力で解決できるように誘導尋問する。
心理学の手法も必要なのかもしれない。
【3】「気」の重要性
「失敗学」の著者でもある畑村さんが言うには、決定に関係する事柄は「人」「物」「金」「時間」「気」の5つがあると言う。
その中で「気」は気づきにくいと言う。
雰囲気、文化、伝統、価値観といったもの。
どんな人でも、何らかのパラダイムという色眼鏡で現実を解釈している。
一つの会社しか知らない人は、その会社の職場の雰囲気しか知らない。
経験が少ない人は、自分の経験値の範囲内でしか物事を判断できない。
自分の器の限界と、それによって自力で解決できる決断の範囲もあることを自覚しておくことは大事なのだろう。
社長業をしている知り合いは、「俺はマネジメントという業界でビジネスをしている。特定の業界にはこだわらない」と言っていた。
その言葉から、業界知識よりもビジネス上の決断力を武器として仕事していることが分かる。
経営者と呼ばれる人たちは、決断プロセスを自分流に持っているのだろう。
ナントカと名前の付くコンサルタントも、決断プロセスを自分なりに持っている。
意識して持つべきスキルであることは間違いない。
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