MSやIBMのアジャイル開発事例
MSやIBMがアジャイル開発に取り組んでいる情報をググッてみた。
気づいた事をメモ。
#あくまでもメモ書き。
【元ネタ】
IBM Rational Software Conference 2009 - Japan
アジャイル開発の有効性を、経営トップが理解すべき - @IT
アジャイル開発支援 - 記事一覧 - IBM Rational Software Conference 2009 イベントレポート【マイクロソフト】 長沢 智治
レポート:アジャイルカンファレンスTOKYO 2009|gihyo.jp … 技術評論社
IBM Rational Software Conference 2009レポート - dshinaの日記
【1】MSやIBMはどこまでアジャイル開発のノウハウを取得できているか?
MSもIBMも、大規模プロジェクトで地理的に分散しているオフショア開発でアジャイル開発を実践している。
その意味では、難易度の高い領域で実験しているから、とても興味深い。
アジャイル開発の特徴である「プロジェクトの見える化」をツールでサポートしているのがすごく印象的。
ツールとしては、IBMは「IBM Rational Team Concert」、MSは「MS Visual Studio Team Foundation」はいずれも、イテレーション計画の管理・実行時の進捗管理・タスク集計出力というチケット駆動開発の3つの基本機能は全て満たしている。
興味深いと思ったのは、IBMでもMSでもイテレーション計画を階層化していること。
IBMは、テーマ>プランアイテム>ストーリー>タスク、MSは、Scenario>Value Proposition>Experience>Featureの観点で要件からタスクまでを階層化し、追跡可能な構造にしている。
更に、プロジェクトライフサイクルの観点であるリリース計画と開発者のタスクの観点であるイテレーション計画を上記の階層に結び付けて管理していること。
マネジメントの観点からすれば、要件からタスクまでのWBSがこの構造に一致するし、計画の変更はツールでサポートできるから、上記の階層化によって精度の高い計画を作ることができるし、進捗管理も容易のはず。
また、集計機能はツールが得意とする領域なので、問題なし。
アジャイル開発のプロセスをツールでうまくサポートしている印象を持った。
【2】アジャイル開発を運用する時のハードルはどこにあるか?
だが、上記の資料に書かれていない問題点や課題の方が気になる。
イテレーション計画に「漸進型開発」と「反復型開発」の使い分けが書かれていないのが気になるし、並行開発をサポートする構成管理手法も特に記載がないのも気になる。
また、アジャイル開発のスケールアップはまだまだノウハウがあるはずだ。
アジャイル開発はいくつかの部分的なプラクティスを導入すれば、実現できるわけではない。
アジャイル開発の一番の特徴である「小規模リリース」を実現するには、資料に書かれていないたくさんの暗黙知があるはずだ。
今の僕がまだ理解しきれていない部分は、要件管理。
上記の資料にもあるように「要求は劣化する」。
顧客の要望は、昨今のような好不況の激しい時代ではすぐに変わる。
頻繁に起こる要件の変更をきちんと管理し、追跡できるような仕掛けを作るのは、Excelでは至難の業だ。
また、顧客の要望をそのまま受け付けてよいわけではない。
要望を詳細化して、仕様の整合性を取るのが開発者の仕事だが、この作業がとても大変で、しかもバグを埋め込みやすい。
結局、要件管理とは、要件の変更管理・トレーサビリティ・整合性をきちんとできることが必須条件になる。
しかしながら、実際は要件を管理する良いツールがなく、要件の変化にSW開発が追い付けていない現状がある。
今の時代は「品質やコストよりもスピード重視」のSW開発スタイルでなければ、生き残れないのかもしれない。
【3】今後の方向性
XPが2000年頃に出現した頃がAgile1.0ならば、Scrumがアジャイル開発の普及を後押ししている2005年以降がAgile2.0と呼べるのではないか?
XPは、Agile開発のプラクティスを提示し、開発者へ実践手法を提供したが、マネージャ層への影響力は弱かった。
Scrumは、プロセスとしての管理手法を提示し、マネージャ層へマネジメントの実践手法を提供した点に意義がある。
そして、IBMやMSのようなツールベンダーが本腰を入れ始めていることから、今後、アジャイル開発の知見も増えてくるだろう。
鍵は、アジャイル開発をどこまでSW工学の観点でプロセスとしてきちんと理論化できるか、にかかっているような気がする。
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