パッケージから学ぶ4大分野の業務知識
ERPを勉強するために「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識 (開発の現場セレクション)」を読んでみた。
感想をメモ。
【1】業務の裏に会計あり~ERPは会計帳票を出力するためにある
いわゆる基幹システムと呼ばれる大規模業務システムは、日々の業務データは最終的には会計システムへデータが送られる。
販売、製造、経費精算などの業務は、仕訳データを日次または月次でバッチ処理で作り、夜間バッチで会計システムへ送る。そして、月次ないし四半期次で会計帳票を出力する。
だから、業務システムをマスターするなら最終的には簿記の知識が必要になる。
業務が発生したら、必ず取引として記録されて、仕訳が発生し、それらは損益決算書や貸借対照表などの会計帳票の元ネタになる。
「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識 (開発の現場セレクション)」にあるフォースの教えには、「業務の裏に会計あり」というフォースとしてまとめられている。
【2】One Fact in One Palce
ERPは90年代のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)が発端になって、日々の業務をIT化して効率化する観点から生まれた。
ERPの本質は統合DBにある。
つまり、業務で使われるマスタを一つのDBに統一し、他のサブシステムと連携するような仕組みにする。
例えば、ユーザマスタ、権限マスタ、支社マスタなどは、販売システムや会計システムで別個に存在すると、データが分散してしまい、どれが最新のデータか分からなくなる。
「One Fact in One Palce」がフォースの教え。つまり、DOAが主張する「一つの事実は唯一つのDBに入れる」発想と同じなのだ。
【3】事件の裏に女性あり、業務の裏に帳票あり
業務システムの最終的なアウトプットは紙の帳票だ。
出力された帳票は、その業務データの証拠として残すためだったり、作業者へ指図したり管理するために作られる。
特に日本の会社は、帳票の細かなレイアウトやフォントまで指定してとてもうるさいので有名だが。
特に会計や個人情報に関する帳票は、保存期間やセキュリティが法律で定められているから注意した方がいい。
業務システムの変な仕様は、実は法律が発端だったりする。
「業務の裏に帳票あり」もフォースの教え。
【4】プッシュ型とプル型の業務連携
ERPのもう一つの特徴は、販売管理システムや製造管理システム、会計システムなど各種システムを連携して、必要な情報を連携できること。
連携方法にはプッシュ型、プル型の2種類がある。
プッシュ型は、連携元から連携先へ情報を展開すること。例えば、受注一覧画面にある受注明細のリンクを押下して、商品の詳細情報にリンクする機能があげられる。
プル型は逆に、連携先から連携元へデータを引っ張ってくること。例えば、発注画面から受注可能な伝票の一覧を表示する機能などがある。
プッシュ型は、ヘッダ+明細の形式でよく見られるので分かりやすい。
プル型は、本来のデータは何なのか、などを探る時に使われるだろう。
似たような機能として、ドリルダウンやロールアップもある。
大分類や大勘定科目のデータを詳細に展開していくのがドリルダウン。
明細データや小勘定科目のデータをまとめて導出していくのがロールアップ。
ERPではこの種の機能が使い勝手のよいUIに直結する。
しかし、機能は理解できても実際に実装するのは、検索処理の性能も絡むので難しい状況が多い。
ERPの開発では特に注意した方がいい。
【5】人事管理システムは人材管理を支援するシステム
「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識 (開発の現場セレクション)」で面白かったのは、人事管理システムの業務内容が書かれていたこと。
人事管理システムの目的は、社内の人材を資産として活用するのを支援すること、そして、個人情報保護法などの観点で個人情報を厳密に管理することだ。
前者は、特にIT企業のように人が資産になる業界では、とても重要な仕組みであり、それは営業支援システムに似たような仕組みになるという指摘が面白かった。
後者は、個人情報保護法のために、社員の家族構成や病歴などの個人データをどこまで管理すべきなのか、そして、退職した人が情報漏えいがないか確認するための監査証跡の仕組みが面白かった。
昨今の法律改正が業務システムの仕様に直結しているのだ。
「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識 (開発の現場セレクション)」はERPを理解するための観点で幅広く書かれていて、しかも昨今の事情も説明してくれているので分かりやすかった。
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