最近のソフトウェア開発に政治力が必要になってきた
iPadを通勤電車で開いている人を見かけるようになってきた。
iPadの普及に伴い、電子書籍の動向に興味を以ている。
思ったことをメモ。
【元ネタ】
Life is beautiful: 電子出版に関する一考察:コンテンツのガラパゴス化の危機
Life is beautiful: 電子書籍ビジネスとフォーマットのオープン化と
日本の電子書籍ビジネス 日販とトーハンが邪魔しているのか? - MIRAI THE FUTURE
最近のソフトウェア開発を見て思うことは、政治力やマネジメントという技術力以外の要素の比重が大きくなってきたことを痛感する。
Redmineでチケット駆動開発を実践すると、運用を効果的に考えることは確かに楽しいし、Redmineをカスタマイズするのも楽しい。
しかし、ITS(Issue Tracking System)をアジャイル開発のプロジェクト管理に使おうとするならば、チケットの取捨選択やロードマップというリリース計画作りなどのマネジメント力が重要になってくる。
本来のマネジメントが見える化されるために、マネジメントの技量がそのまま公開されてしまうのだ。
マネジメントの重要性を知らないチームは、チケット駆動開発はアジャイルごっこに過ぎない。
電子書籍もそう。
電子書籍リーダーなどの技術は既にソニーなど日本企業が先行していた。
しかし、日本では著作権やら出版社の利権が絡んで、電子書籍そのもののコンテンツがオープンにされないために、電子書籍リーダーのハードを作る製造業、電子書籍リーダーのソフトを作るソフトウェア企業が育ちにくい。
だから、日本の携帯はガラパゴスと言われたように、日本の電子書籍もガラパゴスと言われるかもしれない。
電子書籍が日本で思ったほど普及しないのは、技術があっても、流通業者や出版社などの利害関係者を調整する能力が日本のソフトウェア企業や製造業にないからだ。
今のソフトウェアビジネスは、政治力がかなり重要性を増しているような気がする。
最近思うのは、製造と小売を結ぶ流通という仕組みが、商社や卸問屋のような仲介業者がIT化によって無用の長物になり、逆に進化を阻害していること。
Google、Apple、Amazonのような企業が目指しているのは、流通をIT化してプラットフォーム化することによって、無数の開発者や企業が集まって、一つのエコシステム(生態系)を成し遂げていること。
足りない機能やサービスがあっても、それをニッチなマーケットと見なすことによって小さな企業でも参入できる余地がある。
上流工程の業務分析をやっていると、流通が絡む業務は複雑になりがち。
流通という業務が絡むと、取次業務が増えるため、仕入業者へ請求書の発行や出荷指示書を印刷したり、など無駄な仕事が増える。
流通という業務がない方がシンプルでモデル化しやすい。
プラットフォームという基盤があれば、生態系のように自己修復や自己最適化を多数の人の意思によって成し遂げる。
だからこそ、オープンソースというからくりが非常に重要になってくるのだろうと思う。
実際、日本の電子書籍のデファクトスタンダードは青空文庫とその文庫リーダーだ。
有志の方が無料で広めてくれたおかげで、日本語という縦書きに向いた文章のインフラが整った。
i文庫やSkyBookは非常に使い易いし、読みやすい。
そして、自分で作ったテキストを簡単に電子書籍にコンバートして、読むこともできる。
オープンソースやBlog、Twitterというからくりは、僕自身もその構造を完全に理解できていないけれど、その影響力は我々が考えている以上に大きく広い。
今から電子書籍をやるなら、青空文庫の仕組みやアプリを真似た方が今後も生き残るだろう。
最近のソフトウェア開発は、技術力だけでなく、政治力やマネジメント力の比重が高まっている気がする。
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コメント
音楽配信のように電子出版もインディーズやマイナー、つまりロングテールが普及してくれると期待しています。
組織も流通もソフトウェア開発もピラミッドの形態から、フラット、ネットワーク、オープンな物に変わると思います。そこで問題なのは、ニーズにぴったり合うかどうか、ビジネスとして成り立つかどうかになってきます。それは、顧客しだい、業務しだい、たくさんある比較的大きな仕事は管理が増えるし、数少ない最先端の仕事は技術的な仕事が多いのではないでしょうか?
投稿: さかば | 2010/06/19 17:59