費用や生産性のメモ
大前研一が、英語・IT・財務がサラリーマンの三種の神器と言っている。
特に財務について、考えたことをラフなメモ書き。
#初歩的な内容なので注意。
【元ネタ】
はじめての財務管理
決算診断情報:決算診断「第14回 損益計算書のカンタンな見方(3)」
決算診断情報:決算診断「第33回 経営分析解説―生産性(1)」
付加価値のつかみ方(分析ポイント講座⑦): salon tamaken
N's spirit 損益分岐点とは 損益分岐点分析とは CVP分析とは
IT技術者ならば、英語とITは日頃からたぶん慣れている。
でも、財務だけは取っつきにくい。
財務とは業務知識の元ネタであり、簿記を知らなければ理解できないだろう。
普通は、簿記3級程度の知識は必須であり、簿記2級の商業簿記まで理解しなければ、実際の株式会社の業務フローは、最終的にモデリングできないだろうと思う。
簿記を習得した後、業務モデリング以外に、その知識はどのように使えばいいのか?
もし管理職、経営者ならば、実際の会社の財務マネジメントに使えばいい。
「財務マネジメントの基本と原則」を読んで、BS・PL・CSをこの本のように使えば、その会社の財務体質が分かるようになる、という雰囲気を受けた。
まだきちんと読めていないので、分かった部分だけメモしておく。
IT企業もPL・BS・CS、会社の属性情報はHPなどで公開されている。
それらを見ると色々分かる。
下記の公式で考えてみよう。
【1・費用のマネジメント】
・限界利益=売上高-変動費(≒固定費)
・限界利益率=(売上高-変動費)/変動費
・損益分岐点売上高=固定費/限界利益率
費用のマネジメントの観点は、会社にとって最適な費用構成は何か?という点。
営利企業である限り、利益がでないビジネスはありえない。
だから、損益分岐点が低いほど、利益が出やすくなる。
損益分岐点が低い傾向、限界利益率が高い傾向、限界利益が低い傾向がいいわけだから、固定費はゼロに近い傾向、変動費が費用に占める割合が高い傾向の方が、利益が出やすくなる。
つまり、変動費主体の会社は固定費主体の会社よりも、低い売上で利益を出しやすくなる。
実際、利益=0の場合、限界利益=固定費となるから、固定費以上の売上を上げなければ、利益が出ないことになる。
固定費は工場などの設備コスト、社員の人件費など。
例えば、普通のIT企業ならば、サーバーやPC等の機器の減価償却費、データセンターのコスト、社員の人件費だろう。
変動費は営業や製造に関わるコスト、外注費になる。
例えば、ITプロジェクトに関わった経費、下請けの会社にソフトウェア開発を外注した費用になるだろう。
「財務マネジメントの基本と原則」には、家具販売ビジネスの例がある。
家具販売ビジネスを始めたとき、工場や店舗や店員を用意したら、利益を出すにはまずその固定費以上の売上を稼がなければならないから、ハードルは高くなる。
しかし、家具製造を外注し、インターネットで販売すれば、固定費をぐっと下げられるので、利益が出やすくなる。
インターネット企業のハードルが低いのはそういう理由があるからだろう。
【2・生産性のマネジメント】
・付加価値=売上高-変動費
・付加価値率=付加価値/売上高
・損益分岐点売上高=固定費/付加価値率
・一人当り付加価値=付加価値/従業員数
生産性のマネジメントの観点は、会社の生産性はどれくらいなのか、という割合。
社内の管理職、経営者はこの付加価値を重要視する。
管理会計の一部とみなしてもいいかもしれない。
付加価値は売上高-変動費なので、売上を増やし、変動費を減らせば増える。
付加価値が多いほど利益が出やすい体質であり、会社の勢い(生産性)が高いことの証でもある。
例えば、IT企業ならば、たくさんのプロジェクトを請け負って、プロジェクトの経費をとことん減らせば、付加価値は上がる。
売上はそう簡単に増えないから、内部でコントロールしやすい変動費を減らす方向に走る時が多い。
変動費を減らす最大の方法は、自社で作らず、外注して費用を減らすこと。
あるいは、社員のマネジメント力や技術力を高めたり、一人の社員が複数プロジェクトを掛け持ちで作業させること。
だからIT業界は厳しいのかもしれない。
売られている本を読んだ知識、何となくの経験から言うと、一人当たり付加価値は1500万円、一人当たり売上高は1000万円以上の会社でなければ、たぶん赤字になっている。
実際、普通の中小のIT企業は、この数字近辺にいるから、利益がほとんど出ない。
マイクロソフトが凄かった時期は、一人当たり付加価値や一人当たり売上高は7000万円以上あったように記憶している。
普通のIT企業は固定費が少なく、変動費主体のはずなので、社員の技術力やマネジメント力を高めれば、理論上は高い付加価値を稼げるはずだと思う。
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コメント
「変動費主体の会社は固定費主体の会社よりも利益が出やすい」ってことは無いですよ。マイクロソフトやグーグルの主要なコストは、開発費や設備費ですが、これらはいずれも固定費です。
投稿: keis | 2010/07/25 19:59
◆keisさん
ご指摘ありがとうございました。
「財務マネジメントの基本と原則」の内容に沿って修正しておきました。
投稿: あきぴー | 2010/07/25 20:51
蛇足です。
事業に必要な固定費水準が高いと、参入障壁となりますから、既存プレイヤーにとっては基本的には有利な条件となる筈なんです。
ですから、これから新規参入するプレイヤーにとっては、ご指摘の家具販売業の例のように、固定費を変動費化できれば、参入障壁を下げることができ、有効な戦略となりますが、逆に既存プレイヤーの立場からすると、必要な固定費水準をつり上げる(ショバ代をレイズする)方が、有利な場合もあります。
IT業界があまり儲からないのは、固定費水準を下げることに熱中しすぎて、参入障壁が非常に低い状態になってしまい、そこから抜け出すことができなくなっているからかもしれませんね。
投稿: keis | 2010/07/27 10:30