タブレット革命を読んで
「タブレット革命 〜iPad登場でわかった“板型PC”の破壊力」を立ち読みして思ったことをメモ。
「タブレット革命 〜iPad登場でわかった“板型PC”の破壊力」はiPhone/iPadのようなスマートフォンやタブレットPCがどんな時代的な意味を持つのか、を知る上では良い本だ。
「iPadで初めてWebを読めるようになった」「Push型、Pull型のコミュニケーションがTell型に変わりつつある時代にマッチしている」「教育も今後タブレットPCの利用面が増えるだろう」という主張はとても興味深かった。
「iPadで初めてWebを読めるようになった」とは、ノートPCや携帯電話とは違うWebブラウジングの生活スタイルを象徴している。
ジョブズがソファに座ってiPadを使うデモを行ったように、リラックスした雰囲気でWebを楽しめる。
机の上にかしこまって使うPCの場合、2人がペアプロする場合、お互いがPCを見ながらコードを書くために、お互いの顔の表情を見るわけではない。このコミュニケーションを90度の角度と呼んでいる。
逆に、iPadでは、テーブルの上にあるiPadを二人が見ながら、お互いの表情を確認してコミュニケーションできる。このコミュニケーションを180度の角度と呼んでいる。
つまり、iPadとPCでは、コミュニケーションスタイルが全く異なるため、使い方も当然大きく異なってくるわけだ。
また、「コミュニケーションがPush型、Pull型からTell型に変わりつつある」とは、マスコミやGoogle検索からSNSへコミュニケーションの重要度が移りつつあること。
昔は大手マスメディアが新聞やテレビから一方的にニュースを垂れ流して、受動的に見るというPush型しか選択肢はなかった。
だが、PCとインターネットが普及して、自分が欲しい情報をGoogleで検索したり、RSSで最新ニュースを受信するスタイルに変わり、Pull型になった。
そして、FacebookのようなSNSやTwitterが急激に広がって、ある特定の場に質問や言葉を投げれば、見知らぬ人からたくさんの返答が戻ってくるコミュニケーション形式に変わりつつある、と。
確かに、ここ最近のTwitterの影響力はすさまじい。
更に、MITなどアメリカの大学がYouTubeやiTunesなどで無料で授業を公開していることから、教育にも大きな影響が発生しているとのこと。
確かに、英語ができる人ならば、世界最先端の知識がネットから得られる利点はとても大きい。
最近よく売られている「これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」や「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」の本が典型的な例かもしれない。
だが、教育にタブレットPCなどのIT化がどれだけ普及するのか、個人的には疑問に思う点もある。
実際の現場の授業は黒板でマス形式だし、生徒も紙の教科書や問題集を読んで、ノートに書く。
それら全てがIT化された場合、果たして生徒の能力は向上するのか?
教科書がKindleに変わって、教科書の持ち運びはなくなり、検索もやりやすくなったが、余白の書き込みや自分が気になる部分に線を引くことができなくて不便だ、という話を聞いたことがある。
今も昔も大学入試や殆どの資格試験は、紙の問題と解答用紙に鉛筆で制限時間内に書きまくる。
特に記述式や論文の場合は、普段はPCばかりの作業で鉛筆を握ることも無い人にとっては、とてもハードルが高い。普通の論文形式なら、1000字~3000字を書くのはざらだ。
つまり、試験がアナログである限り、教育が完全にIT化されるのは難しいだろうと思う。
今も昔も勉強はアナログでやるのが正統派なのかもしれない。
とはいえ、Moodleを使って、授業をサポートするWebツールを駆使するやり方もある。
電子書籍や電子教科書などの動向も含めて、教育のIT化は時代に大きく翻弄されていく可能性が大きいだろう。
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