コミュニティがチケット駆動開発を支えている
コミュニティとチケット駆動開発の関係についてメモ書き。
チケット駆動開発は元来、@machuさんがTracのチケット管理を運用した経験を発表資料として公開されたのが始まりだった。
チケット駆動開発 … ITpro Challenge のライトニングトーク (4) - まちゅダイアリー(2007-09-07)
そして、Redmineを運用していた時に、その発表資料にあるエッセンスに刺激を受けて、アジャイル開発へ適用して試してみて、かなりうまくいった。
その経験を元にKOFで初めてRedmineによるチケット駆動開発について発表した。
【公開】KOF2008講演資料「Redmineでチケット駆動開発を実践する~チケットに分割して統治せよ」: プログラマの思索
そこから「Redmineによるタスクマネジメント実践技法」が出版された後、アジャイル開発に興味のある一部の人たちにチケット駆動開発が注目された。
デブサミ2011でチケット駆動開発について講演したら、既にチケット駆動開発を実践されている人達は多くて驚いた。
ネットでも、製薬業や製造業の人達もRedmineによるチケット駆動開発を実践していたらしく、「Redmineによるタスクマネジメント実践技法」で書かれているアジャイル開発の言葉(例えば、イテレーション、バックログ、小規模リリースなど)がよく分からないという感想があった。
なぜか分からないけど、「チケット駆動開発」という言葉が急速に普及したように思う。
そんな情勢の中、Tracのコミュニティは以前からShibuya.tracが活発に活動されていたが、Redmineの注目度が上がっている割にはRedmineコミュニティは日本に存在しなかった。
だが、2011年の夏に関西でRxtStudy、関東でshinagawa.redmineが有志で立ち上がった。
僕もその立ち上げに関わった。
【公開】RedmineのFAQとアンチパターン集 #Rxtstudy: プログラマの思索
【公開】第1回品川redmine勉強会の発表資料「障害管理からチケット駆動開発へ~ソフトウェア開発の3種の神器」 #47redmine: プログラマの思索
第1回RxtStudyは、Redmine本の著者4人全員が揃ったという事実が一番大きかったと思う。
Redmineのマーケットが日本にあるということがよく分かった。
@kuranukiさんの話もRedmineから離れた話になったけど、皆釘付けになって聞き入っていたのが印象的だった。
そして、東京ではshinagawa.redmineがIPA様のご厚意で提供された場所で、Redmineコミッタの丸山さんをお招きして開催された。
東京でもRedmineに関心のある人が多いというのがよく分かった。
そんな経緯を振り返ると、チケット駆動開発はコミュニティが育ててくれたのだと思う。
@machuさんがそのアイデアを公開しなければそんな話は出てこなかった。
チケット駆動開発をアジャイル開発へ適用した経験をXPJUG関西やSEA関西の人達と議論できなければ、これほど深く突き詰めて考えることもなかった。
そして、チケット駆動開発の講演場所を提供してくれたRuby関西、XPJUG関西、そしてアジャイルに関係するコミュニティがなければ、発表しながらチケット駆動開発のアイデアを育てていくこともなかった。
更に、Redmine非公式サイトを運営される@g_maedaさん、Redmineプラグインを次々に開発する人達(@daipresentsさん、@suerさん、@haru_iidaさんたち)、Redmineの機能改善に貢献する人達(@naitohさんたち)、Redmineのインストールツールを開発する人達(@mikoto20000さんたち)がいなければ、ここまでRedmineコミュニティが日本で大きく目立つこともなかった。
RedmineもTracも、GitやMercurial、JenkinsやHudsonのようなツールは実際、コミュニティがその発展を支えている。
更に、Redmineは丸山さん、Gitは濱野さん、Jenkinsは川口さんのように日本人コミッタがツールの発展に大きな役割を果たしている。
日本人コミッタがいるおかげで、日本人開発者も積極的にこれらツールに関われるし、ツールの発展に大きく寄与していると思う。
日本のソフトウェア業界は輸出が殆ど無く海外で勝てないと言われるけど、コミュニティに出た限り、日本人開発者で優れた人はたくさんいる。
少なくともソフトウェア開発の3種の神器に関しては、日本人技術者が世界へ大きく貢献していると言えるのではないだろうか?
開発現場で試行錯誤して見出したチケット駆動開発というアイデアがどこまでソフトウェア開発の本質を変えてくれるのか、考えていく。
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