プロジェクト型開発は本当にビジネス価値を提供しているのか~IPAの非ウォーターフォール型開発の分析報告
IPAが非ウォーターフォール型開発の分析結果を公開されていたのでメモ。
平鍋さんも分析プロセスで加わっているみたい。
【元ネタ】
プロジェクトという形態は下火になり、プロダクト開発が台頭している。IPAの調査から - Publickey
非ウォーターフォール型開発の普及要因と適用領域の拡大に関する調査報告書 (非ウォーターフォール型開発の海外における普及要因編)を公開
最近、マネージャ層や経営層からも、アジャイルな開発スタイルに関する言葉を聞くようになった。
特に経営者は、平鍋さんが提唱されているリーンの発想から理解して話している人が多いように思う。
上記の報告書では、海外の事例と日本を比較している部分が面白い。
中国は日本の影響を受けて、アジャイルがあまり普及していない指摘は参考になった。
日本では、業務システムの受託開発が主流のため、アジャイルな開発スタイルは導入しづらい部分が多い。
また、そういうビジネスが主流のために、ウォーターフォール型開発でどのように進めると良いか、というノウハウはそれなりにある。
特に品質管理は、他国に比べて優れている部分がある。
でも、日本の利点が海外とのソフトウェア開発の競争力に直結していないのが不思議な所。
クスマノの「ソフトウエア企業の競争戦略」でも、日本企業は品質がとても優れているのに、ソフトウェアの世界では目立った動きがないと指摘していた。
多分、過剰品質の開発スタイルが現代のソフトウェアビジネスに合わなくなっているのではないかと思う。
また、プロジェクトを成功させることとビジネスで成功するのがそもそも完全に一致していないのではないか、という指摘をある人から受けた。
ソフトウェア開発はほとんどがプロジェクトなので、始まりがあって必ず終わりがある。その期間は正直短い。
その限られた短い期間で開発を終了させるのが目的となってしまい、顧客が求める本来の目的、つまり、プロジェクトで作られたシステムを有効利用することで顧客のビジネスを成功させるという観点が薄れてしまうのではないか、と。
実際、プロジェクトが始まったら、開発で手一杯で、まともに動くシステムに持っていくだけで精一杯だからだ。
むしろ、ウォーターフォール型開発で一発リリース直後のシステムはバグだらけで、開発チームも顧客もアップアップな状況の方が多い。
そんなことを思うと、そもそもプロジェクト型ビジネス自身が現代のビジネスにマッチしていなくなっているように思う。
ビジネス価値にすぐに直結しないシステムがどんどん作られているのではないか。
平鍋さんの会社が提供する価値創造契約、倉貫さんが提唱する納品しない受託開発は、その動機と似通っているように思う。
プロジェクト型開発でビジネス価値を確実に提供できる方法はあるのか?
僕はまだよく分からない。
【追記】これが日本のソフトウェア品質? - Basicでは、日本のソフトウェア開発の高品質が世界で競争力を持たないのか疑問であるという指摘がある。
(引用開始)
日本についていえば、ソフトウェア開発における高い生産性と品質が、なぜ世界のソフトウェア業界での、より傑出した地位に繋がらなかったのかという謎が依然としてある。この問題は、我々の調査に回答を寄せた日本の大企業の開発文化に起因しているのだろう。
(引用終了)
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コメント
日本のソフトウェア産業が米国に負けた理由は(欧州には言われたくない。産業すら残らなかったのだから)商品戦略がなかったから。
ベンダと言われる汎用機を作っていた連中は日本の中で勝負をすればよかったし、OSは昔から赤字体質でそれを改善しようという気もなかったし、ハードは海外ではIBMのOSを載せればよかったので日本のソフトを輸出しようという気もなかった。
で、世界同時発売、同一ソースを目指した米国さんに一気にやられてしまいましたとさ。
投稿: 大野晋 | 2012/07/10 14:00