【告知】「チケット駆動開発」ハンドブックを出版します
2012/8/24に@sakaba37さんと「チケット駆動開発~プロジェクトを成功に導くための「現場からの改善」提案を完全網羅」を出版します。
前作「Redmineによるタスクマネジメント実践技法」に続くチケット駆動開発の解説本になります。
過去5年間、チケット駆動開発とは如何なるもので、一体何ができるのか、という根本的な問題をずっと考えてきた結果を全て書きました。
元々は@machuさんがTracのチケット管理から提唱したアイデアを参考にして、故意にそのアイデアを拡張して、Redmine上でアジャイル開発を実践できるように、自分なりのノウハウを詰め込みました。
その後、チケット駆動開発について講演したり、コミュニティで議論しながら、アジャイル開発だけでなく、技術や開発プロセス全般、ソフトウェア工学など色んな観点で分析するように努めてきました。
そして、チケット駆動開発に関する技法や適用方法、適用範囲などについて、一通りまとめて出版することができました。
そのため、約350ページの分量に膨れ上がりました(笑)
あらかじめ断っておくと、Redmine・Trac・Mantisなどのツールの説明もありますが、インストール方法には全く触れていません。
あくまでもツールの背後にあるチケット駆動開発というプロセスに焦点を当てて、色んな観点で解説しています。
「チケット駆動開発~プロジェクトを成功に導くための「現場からの改善」提案を完全網羅」の目次は下記になります。
第1部 チケット駆動開発の基本
第1章 プロジェクトの混乱から洗練へ
第2章 障害管理
第3章 構成管理とツール
第4章 障害管理ツールMantisの運用例
第5章 障害管理からチケット駆動開発へ
第2部 チケット駆動開発でプロジェクトを成功に導く
第6章 プロジェクトを成功に導くチケット駆動開発
第7章 チケット駆動開発がもたらすアジリティの向上
第8章 アダプタブル・ウォーターフォール開発、
第9章 アジャイルブームを超えて
第3部 チケット駆動開発による開発力の向上
第10章 チケット駆動開発の高度な運用方法
第11章 チケット駆動開発のFAQとアンチパターン集
第12章 チケット駆動開発のテーラリング
第4部 用語集
今回の出版では僕は、2つのことを念頭に執筆しました。
一つ目は、チケット駆動開発のハンドブックになるように、「チケット駆動開発とは如何なるもので、一体何ができるのか」について解説することです。
チケット駆動開発という概念は前作「Redmineによるタスクマネジメント実践技法」で初めて書籍として紹介されただけで、ツールの運用と一体化したため、どうしてもツール依存の話になりがちでした。
今作は、チケット駆動開発がBTSから発展した歴史を詳しく解説し、チケット駆動開発が今後どんな方向へ発展していくのか、について提示しました。
また、チケット駆動開発をアジャイル開発だけでなく障害管理・タスク管理・課題管理・インシデント管理・ストーリー管理など各状況に適用するためのノウハウを整理してまとめました。
(追記:「テーラリング」という言葉は好きではないので外しました)
そして、用語集をつけて、前作と今作で引用した用語や概念、運用ルールを索引から探せるようにしたので便利になったと思います。
もう一つは、チケット駆動開発に関わる日本人開発者の言動を意図的に数多く引用したことです。
そもそも、チケット駆動開発のアイデアは僕や@sakaba37さんだけで編み出したわけではないです。
むしろ日本のアジャイルコミュニティに関わる人達と議論して得られた実践的ノウハウを集めたものに近いです。
例えば、XPJUG関西やSEA関西、そしてRxTStudyやshinagawa.redmine、shibuya.tracなど数多くのコミュニティの人達がいなければ、実践的ノウハウは深く掘り下げられなかったでしょう。
そして、RedmineやTracなど各種ツールのコミッタやプラグイン開発者が活発に行動しなければ、今作のようにここまで深い内容で書くこともなかったでしょう。
それ故に、チケット駆動開発に貢献された数多くの日本人開発者の言動を引用することで、チケット駆動開発が著者の独りよがりのアイデアではなく、日本のアジャイルコミュニティが現場で実践して編み出した日本的なアジャイル開発の事例として紹介できるようにしたかったのです。
丁度、平鍋さんが10年以上前に初めて日本にeXtreme Programmingを紹介した後、プロジェクトファシリテーションという日本的なアジャイルの概念を提唱し、日本の開発現場で実践できるようなプラクティス集としてまとめたように、チケット駆動開発も日本人開発者にフィットしやすいアジャイル開発の実践的な技法としてまとめたかったのです。
日本の歴史を紐解けば、日本人は海外の文化を輸入した後、自分たちに適合しやすいように洗練させてきました。
奈良時代に中国の文化を遣唐使が持ち帰った後、ひらがなや源氏物語、鎌倉仏教などのように日本的な文化に変化させました。
明治時代に西洋の近代文化を取り入れた後、例えば自然科学は日本人自身が自分のものとして理解するようになり、ノーベル賞やフィールズ賞を受賞するぐらい高いレベルがあります。
同様にソフトウェアの世界でも、最初は欧米からその概念もハードウェアも輸入したかもしれないけど、日本人開発者はソフトウェアを自分たちのものとして理解し、そこから新しいものを生み出す能力を持っています。
アジャイル開発という概念もまだ日本では普及しているとは言えないし、日本の現場に適用しやすいノウハウはまだ足りない気もするけれど、そんな状況でもたくさんの日本人開発者が試行錯誤しながら挑戦している。
その流れの一つの文脈として、チケット駆動開発を捉えてくれれば、著者としてはとても嬉しいです。
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