プロジェクト管理のアンチパターン集~アドレナリンジャンキー
「アドレナリンジャンキー」を立ち読みしたら、あまりにも面白くて購入した。
この本は、デマルコが書いたプロジェクト管理のアンチパターン集と言って良い本だ。
【元ネタ】
プロジェクト・アンチ・パターンの集大成「アドレナリンジャンキー」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
アル中ハイマーの独り言: "アドレナリンジャンキー" Tom DeMarco 他著
プロジェクトマネジメントのグル「トム・デマルコ」の集大成 - ビジネス書の杜
実際のソフトウェア開発のプロジェクトは、右往左往しがちなものだ。
現場の当人は一生懸命に働いているが、第三者から見れば、滑稽に見える時も少なくない。
「アドレナリンジャンキー」でいくつか面白いと思ったアンチパターンをあげておく。
死んだ魚:
プロジェクトが始まった日から、そのプロジェクトは死んでいると誰もが気づいているのに、誰も言わない。
よくある例は、要件定義で何となくヤバそうな雰囲気を感じ取り、設計・開発で苦労しながら完了後、結合テストで一気に火を噴くパターンが多い。
レミングサイクル:
プロセスには調整しろと書いているのに、チームは調整しない標準プロセスを守り続ける。
CMMIやISO、最近なら個人情報保護や内部統制など、無駄な管理作業にかなりの労力を取られていないか?
欧米企業や中韓企業を見ていると、日本企業はビジネスのスピードを落とす作業に一生懸命に力を入れ過ぎている気がする。
ダッシュボード:
強いチームと弱いチームが使うが、並のチームは使わない。
ダッシュボードによる見える化の効果を知っているチームは少ない。
永遠の議論:
いつまでも不満を訴える権利を与えていては、議論は終わらない。
プロジェクト末期になるほど、こういうミーティングが増えて、打合せだけの時間がどんどん長くなる。
アトラス:
リーダーがあらゆることに長けている。
リーダーが仕事を抱えすぎて、リーダー自身がボトルネックになっている。
そういうチームはスケーラブルでなく、リーダーが倒れたらチームは機能不全になる。(トラックナンバー1)
ソビエト式:
完成した製品は顧客が要求した機能を全て揃えているが、嫌われてすぐに捨てられる。
リーンスタートアップに出てくるMVP(実用最低限の機能を持つ製品)とは真反対だ。
ポーカーの夕べ:
職務に関係のない活動のために、組織のあちこちから人が集まる。
休憩室や喫煙室が相当するだろうか?
東京在住の折、ゲーム会社で勉強会が開催されていた時、その場所では、等身大のアニメ・キャラクターが飾られ、その隣にはカップヌードルからお菓子、ジュースまでがカウンターバーに置かれていたのを思い出す。
社員が自然に談話できる場を故意に作っていたのだろう。
明日には日が昇る:
マネージャは、将来の進捗の平均は過去の進捗の平均を上回ると信じている。
マネージャは、見積りする時、開発者の成長度合いも計算に入れている。
同じプロジェクトに3ヶ月もいれば、技術も人間関係にも慣れて、アウトプットの量も開発速度も増えるだろう、と。
だが、幸運も不運も平均的に訪れるとすれば、いつも順調とは限らない。
XPには生産性に関して「昨日の天気」という考え方がある。
次のイテレーションの生産性は、直近のイテレーションの生産性と同程度だろう、と。
変更の季節:
プロジェクト期間中に何度か、スコープを変更するタイミングが訪れる。
そのタイミングは普通は、イテレーションの切れ目にある。
こういう本は気軽に読めるし、考えるほど奥も深い。
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