日本人が書いたアジャイル開発本が増えてきた
2013年になってから、日本人自身がアジャイル開発の経験知を書籍にまとめて、形式知として普及させようとする流れが起きている。
とても注目に値する動きだと思うので、リンクしておく。
【参考】
アジャイルBooks - Developer's Factory
「わかりやすいアジャイル開発の教科書」 - Yasuo's Notebook
【1】一番重要な本は、平鍋さんが書かれた「アジャイル開発とスクラム 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント」。
平鍋さんに書籍の特徴について伺った時、経営層や管理職層に呼んでもらうために、文章を縦書きにして、極力ソフトウェア開発の内容を省いて、アジャイルの思想やエッセンスを書くようにした、と聞いた。
日本人自身がアジャイルの概念を生み出した後、アメリカでソフトウェア開発へ適用して育てられ、日本に逆輸入された経緯がとても分かりやすく書かれている。
【2】前川さん、西河さん、細谷さん共著の本「わかりやすいアジャイル開発の教科書」ももうすぐ出版される。
「わかりやすいアジャイル開発の教科書」 - Yasuo's Notebookに本の裏話が書かれていて、その一節にこんな文章が書かれていてとても共感した。
(引用開始)
アジャイル開発には、アジャイルソフトウェア開発宣言に賛同しているという以外に明確な定義はありません。SCRUMやXPはフレームワークやプラクティスを紹介することができますが、「アジャイルとはこういうことだ」と説明するのは難しく、あたかもアジャイルは実体が存在しないような印象もあります。それが最初に私が「チャレンジャーだなぁ」と思った理由です。
でも、同時に私がずっと感じてきたことがあります。「アジャイルには、はっきりとした実体がないように思えるのに、アジャイルコミュニティーの仲間と、アジャイルについての確かな共感が存在する」ということです。10年余りのアジャイルコミュニティーの活動をふりかえると、いろいろな仲間と出会ってきました。
古くから一緒にXPJUG関西や東京のXPJUGで出会った皆さん、ここ数年で知り合ったSCRUM実践者の皆さんなど多くの方々と出会って一緒に活動してきましたが、いつも感じることは、会って少し話するだけでお互いのコンテキストを共有して、共感することができることです。まるで長い間知り合いだったような錯覚を覚えることもあります。
その理由は、私たちの中に、アジャイルが確かに存在して、それをバックグランドとして共有しているからではないかと考えています。今回の書籍は「私たちの中に確かに存在するが簡単に説明できないアジャイル」をできる限り表現しようと努めました。
(引用終了)
アジャイルという言葉を定義して説明するのは難しいのに、コミュニティでは以前から友人だったかのように、初対面のアジャイラーともすぐに仲良くなれるという矛盾。
【3】日本のScrum本は、@ryuzeeさんたちが共著で書かれた本「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」で決まりかな?
【4】日本人が書いたアジャイル開発本が増えることが重要な理由は、10年前にXPを中心としたアジャイル開発が日本ではあまり普及せず、潰された苦い経験があるから。
Scrumを主流としたアジャイル開発の手法も、アメリカで上手くいっているかもしれないが、日本の開発現場にそのまま適用できるとは思っていない。
だから、誤った理解で失敗した経験で、アジャイル開発はうまくいかないという固定観念が生まれる危険性があるからだ。
Twitter / hiranabe: @akipii スクラムの日本語書き下ろしの本が、来年ぞくぞくと出るらしいよ!
2013年になって日本人がアジャイル開発の書籍を次々に出版していく背景には、過去10年間、コミュニティを中心にアジャイル開発を実践してきた経験知がようやくまとまってきて、世間に説明できるほどの質と量が集まってきたのも理由の一つかもしれない。
今後出版される日本人のアジャイル書籍には注目していく。
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