部品表と工程表と製造指示の関係
渡辺幸三さんの記事を読んだ。
僕は製造業の生産管理システムの開発経験はないけれども、小売業とか他の業界の基幹系業務システムに携わった経験がある人ならば、下記の記事の奥深さにしびれると思う。
ラフなメモ書き。
間違っていたら後で直す。
【元ネタ1】
製造指示の設計と実装 (1)日程化: 設計者の発言
実際の製造指示のプロセスで、TOCの概念を導入する点はとても興味深い。
ボトルネックとなるプロセスの稼働率が全体の稼働率を決めるわけだから、むやみに全工程の稼働率を上げても無駄に在庫を増やすだけ。
製造指示書は仕掛かんばんを連想させる。それはリーンSW開発にもつながるし、チケット駆動開発にもそのアイデアを投入できるだろう。
作業区はワークセンターという意味。
「生産管理・原価管理システムのためのデータモデリング」(P.113)の作業区の解説では、工程作業を実行するための設備(工作機械)や場所という意味だが、「生産管理・原価管理システムのためのデータモデリング
」(P.117)では、作業区は生産能力という特徴も持つ。
だから、製造前に作業区を割り当て、作業区に必要なリソース(時間、材料、人員、製造指示)を手渡すわけだ。
また、製造指示書は材料や仕掛品に添えることでかんばんの役目も果たす。
かんばんによって、現物と情報が必ず一致して流れるわけだ。
そして、製造指示書は材料出庫指示書にもなるから原価管理や会計データにもつながる。
つまり、入出庫という受払によって、原材料購入による仕入や仕掛品、製品などの搬出による売上などという仕訳が出てくるわけだ。
外作という外部企業に委託製造する時のDB設計と業務の解説も興味深い。
製造指示の設計と実装 (3)外作: 設計者の発言にも書いてあるように、「無償支給による製造委託」「材料の有償支給にもとづく製造委託」では、業務内容が大きく異る。
有償支給では、外部企業にモノを渡して(売上)、作ってもらったモノを受け取る(仕入)ので、それぞれの時点で仕訳が発生するからだ。
「生産管理・原価管理システムのためのデータモデリング」(P.110)で、「有償支給の場合、外注業者が支給された資材をムダなく使おうとしてくれる利点がありますが、事務手続きは複雑になる欠点があります」という文章があるが、その意味は上記の記事の解説であるわけだ。
また、「生産管理・原価管理システムのためのデータモデリング」(P.113)に出てくる「外注加工仕入」という債務は、まさに上記の記事の有償支給後に完成品を外部企業から仕入れる業務の時に発生する負債科目なわけだ。
【2】渡辺さん著の「生産管理・原価管理システムのためのデータモデリング」が優れている点は、単なるデータモデリングの解説だけではなく、業務の背後にある仕訳も絡めて、モノや情報(業務)とお金(会計・仕訳)の流れを統一的に解説してくれていることだと思う。
梅田弘之さん著「グラス片手にデータベース設計~販売管理システム編」に出てくるデータのターンアラウンド(ある業務で入力されたデータは他業務では重複して入力しない)にもつながる。
データのターンアラウンドという観点では、業務という水平のデータの流れと、会計という垂直の流れがある。
例えば、受注→出荷→売上→請求→入金という業務の流れの背後では、売上処理で「売掛金//売上」、入金処理で「当座預金//売掛金」という仕訳が発生している。
この業務ではどんな仕訳が発生しているのか、を意識しながら業務フローを読み解くと分かりやすくなると思う。
この辺りはもう一度まとめてみる。
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