MEDIA MAKERSの感想
「MEDIA MAKERS」を読んで面白かったのでメモ。
著者は、リクルート、ライブドアの広報関係を経て、NHN Japanにいるらしい。
自分のBlog、Twitter、Facebookを持っている人は参考になると思う。
ラフなメモ書き。
【参考】
[書評]MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 | ごりゅご.com
書評『MEDIA MAKERS 社会が動く”影響力”の正体』(田端信太郎)がめっちゃ勉強になる | Last Day. jp
[書評]ブロガーも必読。MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 - 拡張現実ライフ
Facebookはセルフブランディングの最強ツール: プログラマの思索
ビジネス特化SNS「Linkedin」から見えるもの~人脈はデータマイニングで作られる: プログラマの思索
【1】メディアリテラシーがマネージャや経営者にも必要になった現代という時代
経営資源といえば、人・モノ・金・情報。
過去はお金がボトルネックになりがちだったが、現代はかなり変わった。
リーンスタートアップのように、小さなビジネスから始めて大きな会社に変わる事もできる。
シリコンバレーのIT企業がその典型例。
FacebookもGoogleもいつの間にかMicrosoftと肩を並べる企業になった。
すると、「War For Tarent」のように、メディアを使って、いかに優秀な人材を集めるか、ということが企業にとって死活的に決定的に重要になってきた。
メディアは、人の注目を集め、優秀な人材(タレント)を引き寄せて、タレントを動機づける機能を持つ。
現代では、マネージャという管理職、組織を動かす経営者は、メディアという機能をもっと知る必要があるし、効果的に使う方法を知る必要もある。
それは丁度、経営者やマネージャのレベルの人は、減価償却やキャッシュフローの意味を知っていて、会計やファイナンスを理解しているのが当然のように。
【2】メディアが存在する意味~予言の自己実現能力
メディア自身が保つ意味は、予言の自己実現能力。
大手新聞や大手テレビが、現実はそうなっていないのに、こうなるだろう、と予言すると、その方向へ現実が変わってしまうこと。
例えば、企業の倒産につながる大事件などのようなスクープは、そのニュース自身が政治的に大きな影響力を持つ。
沢山の人、集団を巻き込んでしまう。
そして怖いのは、その発言(予言)は間違っていたので訂正します、という作業が不可能なこと。
予言が現実になってしまった後に、現実を訂正することはできない。
予言の自己実現能力の的中率が大きいほど、政治的影響力も大きくなるから、それ自体が権力にもなる。
だから、メディアは信頼性や高潔さ、ブランドが重要視される。
誰もそのメディアの情報を信じなくなったら、メディアには存在意義がない。
編集権の独立は、メディアにとって死活的に重要な要因。
広告主や株主の意向で簡単に変わるようなメディアであれば、ユーザはすぐにその意図を感じ取り、メディアの影響力は限定的になる。
メディアの信頼性が他メディアの差別化要因にもなる。
【3】メディアの種類
メディアの種類は、3種類の軸がある。
一つは、ストック型・フロー型。
メディアの情報がストックされるのか、フローとして流れていくのか、の違い。
ストック型は例えば、源氏物語のような古典小説もあれば、WikipediaのようなWebメディアもある。
Wikipediaはgoogle検索と相性が良い。
実際、google検索エンジンの上位にはWikipediaがあり、Wikipediaはたくさんの人の目に触れて、更新されることでその存在価値を増している。
フロー型は例えば、TwitterやLINEなどもあるし、新聞も同じ。
新聞は1日しか賞味期限がない。
(Twitterは現代のメディアの中で最速のメディアだと思う。その分、Twitterの政治的影響力は大きい。大阪維新の会の橋下氏はTwitterを有効に使っていると思う。)
2つ目は権威型・参加型。
例えば、権威型はミシュラン、参加型は食べログのような違い。
権威型メディアは、内容を恣意的に制御することで、メディアの内容の価値や信頼性を高めようとする。
参加型メディアは、Googleの検索結果のように、集合知に特徴がある。
カカクコムにおける製品の感想、Amazonでの商品の感想も同様。
Googleがその検索アルゴリズムに恣意性がないことを保証することが彼らのビジネスで決定的に重要であったと判明した事象が、中国から除外された事件。
GoogleのPageRankアルゴリズムに恣意性が混じっていると判明したら、Googleの存在価値はかなり落ちてしまうだろう。
3つ目はリニア型・ノンリニア型。
メディアに触れる時に時間を縛るかどうかの観点。
例えばリニア型は映画。
映画館で2時間も拘束する。
そして、映画監督はCMディレクターなど似たような職種の中で最も権威が高い。
書籍もリニア型に近い。
ノンリニア型は、Web。
主権はユーザにあり、マイクロコンテンツ化される。
サイトマップを作って、Webにストーリー性を入れても、SEOでリンクから入った画面しか見ない時が多い。
今のメディアは、フロー・参加・ノンリニアへどんどん重心が移動している。
それが良いかどうかは別として、その傾向がある。
【4】メディアのビジネスモデル
稼げるメディアは自由になれる。
貨幣とは鋳造された自由。
編集コストを気にしなくていいし、イベントの広告宣伝もできる。
株主や広告主のような外部の利害関係者からも自由になれる。
Webメディアの利益は、(PV当たり売上-PV当たり費用)* 全体PV という簡単な公式。
だから、KPIとしては、PVを増やすためにUU(ユニークユーザ)を増やしたり、UU当たり売上を増やすなどの方法がある。
新聞やWebなどのメディアの弱点は、売上回収のビジネスモデルが不安定なこと。
新聞もWebメディアも広告モデルに依存していた。
しかし、広告主自体がメディアを持つのが簡単になり、TwitterやFacebookなどで告知する影響力が大きくなったから、広告を出す必要もない。
(個人メディアとしてはBlogにGoogleやAmazonのアフィリエイトが普及したことにより、個人メディアでも広告モデルが成り立つようになったのは大きい事象だ)
そこで、メディアとしては課金モデルの確立が課題。
最近は、個人メディアとして有料メールマガジンが流行している。
メールマガジンという最も古い媒体で課金モデルが有効であるのは興味深い。
【5】メディアはアーキテクチャに支配される~媒体手段が人間の経験形式を規定する~
メディアの内容は媒体手段というアーキテクチャに大きく支配される。
CDが74分なのは、カラヤンが第九が入るだけの容量にして欲しいとソニーにお願いしたから。
そこから音楽CDが流通手段として普及し、音楽の聞き方も変えてしまった。
特に90年台。
サビ頭の曲が増えた。例えばZard。
音楽CDはリモコン片手に好きな曲だけつまみ食いできるから。
以前のように、後半にサビを持ってくるような曲は減った。
iTunesになって、更に曲はバラ売りされるようになった。
WebメディアはPVを稼ぐように最適化されている。
例えば、タイトルや見出しは、SEOで検索されやすい言葉を並べるように変わってしまった。
スマートフォンのようなデバイスが普及して更に変化した。
だから、新聞のような大手メディアも、いつの間にか時代遅れの路地裏の店に変わらないとも言えない。
新聞はプラットフォーマーなのか、プレイヤーなのか?
GoogleのCEOが話したように、ネット上のプラットフォーマーは、Google・Amazon・Apple・Facebookのたった4社だけ。
プラットフォーマーは莫大の個人情報データを持っているのが最大の強み。
しかも、AmazonやAppleはクレジットカード番号の個人情報も持つので、ユーザが興味を持てばすぐに支払ってくれる基盤すらある。
そこからより効果的な広告を表示したり、レコメンドエンジンで商品を誘ったり、色んなビジネエスができる。
プラットフォーマーに新聞がないだけでなく、マイクロソフトやヤフーすらいないのも興味深い。
【6】メディアの怖さ~個人メディアは無限責任、組織メディアは有限責任
商業メディア、組織メディアは株式会社であるからには、有限責任になる。
しかし、「誤報すら自己実現化してしまう」メディアと有限責任は相性が悪い。
組織メディアの最終責任は会社の倒産だが、個人の責任まで及ぶことは稀。
でも、メルマガやBlog、Facebookなどの個人メディアで同様のことがあれば、その個人の社会的地位や評判、名声を否定され、社会的な抹殺までされてしまうだろう。
つまり、個人メディアは無限責任。
個人メディアは、そのメディアを発信する個人が持つ信頼や影響力に大きく依存している。
その信頼や影響力を評価資本と呼ぶこともあるらしい。ある意味では個人ブランド。
個人メディアを持つ人は、ある分野において信頼と影響力を持つ個人型メディアといかに付き合うか?
そこで披露される知見を他メディアとどのように差別化していくか?
【7】「MEDIA MAKERS」を読んでみて、BlogやTwitter、Facebookが、個人メディアになる可能性があり、影響力を持つツールであることを改めて痛感させられた。
最近は、「メディアが予言の自己実現能力を持つ」意味をよく理解していて、うまく使いこなしている人も多いように感じる。
特に、社長のような経営者や政治家は、BlogやFacebook、Twitterを上手く使って、自分の考えを発信することが重要になっていると思う。
ITベンチャー企業のような小さな会社は、アナログの営業よりも、BlogやFacebookで開発者や潜在顧客へリーチする手法を使った方がより効果的だろう。
でも、メディアにはその影響力の行使と表裏一体の怖さもある。
今後、ITリテラシーと同様に、メディアリテラシーも普通の一般人にも必須の能力になってくるのかもしれない。
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