RedmineはCRMソフトとして使えるか?
RedmineをCRMソフトとして使うアイデアについてラフなメモ書き。
あとで直す。
【参考】
CRM機能リスト - NetSuite クラウドCRM
オープンソース・ソフトウェア活用のススメ(4) -SugarCRM- | JIPコンサルティング・サービス
【コラム】Yet Another 仕事のツール (89) SugarCRMの用語を理解する | エンタープライズ | マイナビニュース
SugarCRMで顧客にメールを一斉配信する方法 : THINK PINK
オープンソースSugarCRMの調査 | SEOプログラマーのまとめ
第8回勉強会の感想~RedmineはCRMや情報系システムにも適用できる #RxTStudy: プログラマの思索
第5回品川Redmine勉強会の感想 #47redmine: プログラマの思索
【1】RxTStudyや品川Redmine勉強会で、RedmineをCRMソフトとして使う事例を聞く時が多い。
顧客からのメール問合せや打合せをチケット管理に適用する事例が多い。
そもそもRedmineによるチケット管理に、CRMの機能を適用できるのか?
CRMの機能一覧を洗い出し、チケット管理に適用できるのか、以下考えてみる。
CRMの目的は、顧客とのやり取りを円滑に回すこと、そして、顧客の問合せ履歴や購買履歴を蓄積したデータからデータマイニング機能を使って、顧客と商品の因果関係などを導き出し、売れる方法を導くことだ。
基本は、リピート顧客を増やして顧客との関係を強化する方向性だが、最近はロングテールのように、薄利多売のやり方もIT技術革新のおかげで可能になり、顧客の購買履歴を分析する機能を強化する方向性もある。
CRMソフトの機能としては主に下記があげられるだろう。
・営業支援(担当:営業マン)
~商談、取引先の重要度管理(ターゲット(セグメント)なのか、リード(見込み客)なのか、重要顧客なのか)
・コールセンター管理(担当:ヘルプデスク)
~サポートデスクにおける問合せ管理
問合せメールの受付(インバウンドメール)
セミナーやイベントの告知などをメール一括送信(アウトバウンドメール)
・マーケティング(担当:経営企画部の担当者)
~イベントやセミナーの開催におけるタスク管理
キャンペーン効果の追跡
・分析(全ての担当者)
~いわゆるビッグデータ
顧客の購買履歴から、売れ筋商品と顧客の関係を分析する、など
CRMの機能は幅広い。
普通は、営業支援管理システムとして使う時が多く、営業マンを対象に業務システム化される。
しかし、営業支援だけでは足りない。
顧客に商品や製品を売れば、その製品に関する問合せが発生し、そのサポートを丁寧にかつ効率良く行わなければ、顧客は離れてしまう。
だから、ヘルプデスクが受付対応しているコールセンターの管理機能は、バックエンドの業務として重要だ。
また、新たな顧客を発掘するために、マーケティング機能もある。
普通は、イベントやセミナーなどのキャンペーンを開催し、顧客から名刺をもらったり、連絡を受けて、顧客の問い合わせ窓口を集める。
そして、その顧客へ営業訪問などでリーチし、製品を売り込んだら購入してくれる可能性があるか、判断する。
また、電子メールを顧客へ一括送信して、メールに書かれた一意に識別できるURLからの顧客のアクセスを履歴に残し、イベントやセミナーのキャンペーン効果を測定する機能もある。
つまり、反応が良ければ、興味を持ってくれている顧客である可能性があり、見込み客(いわゆるリード)と捉えることができる。
分析機能は、最近ならビッグデータと呼ばれる分野で、とても活発な箇所だ。
顧客の購買履歴から、因果関係を導き出した経験則としては、「郊外のディスカウントストアでは、ビールと紙おむつが一緒に売れるので、同じフロアに置いておく」話などがあるだろう。
他にも、Amazonのおすすめ商品のようなレコメンドエンジンもある。
【2】オープンソースのCRMにはSugarCRMがあり、以前下記でまとめた。
さらに、用語集、機能などのページも追加してみた。
まず、新規顧客のリスト(ターゲットリスト)を作成して、どんなイベントを開催すると集客できるか考える。
そして、ターゲットリストを対象にイベントやセミナーなどのキャンペーンを作成して、イベント情報を一斉告知する。
普通はマーケティング担当者がキャンペーン管理しているだろう。
ここで、顧客へのメール一括送信機能がアウトバウンドメールと呼ばれる事に注意。
イベントを開催後、顧客から製品に関心を持ったなどの問合せがあれば、見込み客(リード)と見なして、営業マンをアサインして、顧客へ営業訪問したりする。
ここで、「リードがどこから来たか」という情報はリードソースと呼ばれ、アウトバウンドメールのURLからトラッキングすることで分析したりする。
集客の効率性を表すKPIとしても使えるだろう。
営業マンが顧客と打合せした内容は、商談として登録され商談ステータスで管理される。
電話の履歴は「コール」、打合せの履歴は「ミーティング」で別々に管理するのがSugarCRM流らしい。
商談が見積りステータスになれば、後もう一息になる。
そして、クロージングで、営業マンが発注書を受けて、契約が決まり、納品すれば、売掛金が回収される。
この辺りは普通の販売業務と同じ。
最後に、売れた製品に関して顧客から問合せがあれば、サポートデスクが受け付けて、フォローアップを行う。
普通は、support@~のような受付窓口メールに問い合わせてもらい、問合せを登録してワークフロー管理する。
ここで、support@~のような受付窓口メールはインバウンドメールと呼ばれ、CRM上で一括管理される。
理由は、メールは電話とは違って、誰が担当しているか分かりにくいことと、作業引き継ぎが曖昧になりやすいために、CRM上で一括管理するほうが便利だからだ。
また、CRMでは、顧客問合せは「ケース」という別の概念で呼ばれている。
このケースを分析して、顧客から頻繁に聞かれる内容はFAQサイトにまとめたりして、サポートデスクの作業負荷を下げるようにする手法が多いだろう。
但し、製品の障害管理も受け付けているため、「バグ」を発行して、チケット管理する時もある。
【3】CRMの機能一覧やSugarCRMの運用サイクルから、Redmineのチケット管理はどこに当てはめることができて、有効なのか?
そして不足している機能は何なのか?
・営業支援
→一部だけ適用OK。
商談、打合せはチケットで一括管理が可能。
但し、CRMでは顧客というエンティティを基本として、潜在顧客(ターゲットリスト、セグメント)なのか重要顧客かどうかの基準(リード、ターゲットなど)や商談などのエンティティに関連が発生する。
基本は、1顧客に対し、複数の商談や案件があるのが普通なので、チケットを商談などのイベントに対応付けた場合、顧客はトラッカーに対応するしか無い。
トラッカーはまさにチケットの識別子、つまり種類に相当するからだ。
すると、潜在顧客も含めて数千もの顧客がいる場合、トラッカーは数千になってしまい、チケット管理は非現実的だ。
また、取引先管理のデータモデリングでは、1回限りの顧客を雑コードで故意にまとめてしまう場合もあるが、チケット管理に対応させると、「1回限りの顧客」というトラッカー一つにたくさんの顧客の商談や打合せのチケットが登録されることになる。
その運用で回るのか、まだ分からない。
あくまでも、取引先(顧客)が10~30程度であまり変わらず、打合せの管理も簡単なステータス管理や、実績工数の集計管理に使う程度が現実的ではないか、という気がする。
・コールセンター管理
→一部だけ適用OK。
ケース(顧客問合せ)をチケット管理に置き換えるならば、一括管理は可能。
@g_maedaさんの事例では、インバウンドメール(サポートデスクが受信する顧客問合せメール)からRedmineチケットへ自動登録する機能を使って、ケース(顧客問合せ)をチケット管理する。
チケット管理できる利点は、問合せのステータスをワークフロー管理できるので、対応漏れや対応状況をチェックしやすくなること、返信メールの履歴がチケットの履歴で置き換えられるので追跡しやすくなること、添付ファイルもチケットで集中管理できる点があげられていた。
但し、Redmineチケット管理の弱点は、サポートデスクから顧客へ最初に送信したメール(アウトバウンドメール)と顧客から受信したメール(インバウンドメール)で発行されるチケット番号が異なるので管理しにくいこと、発信元アドレス(From)の情報がチケットに反映されない点があげられる。
利点と弱点を考えてみると、前者は、Redmineから顧客へメール送信できる機能(アウトバウンドメール)があれば解決できると考えられる。
その時にチケット番号を振ってSubjectに追加してメール送信できればいい。
後者については、下記のコメントが残されている。
(引用開始)
mail handlerの --unknown-user=create オプションを使えばRedmineのユーザーが作成されるのでメールアドレスを保持できる。要検討。
(引用終了)
つまり、メールを検知してチケット登録する時に、メール送信者の顧客に相当するRedmineユーザを新規作成して登録する運用があるのではないか、と指摘している。
おそらく、この機能はもう少し手を加える必要があると思う。
例えば、メール送信者をRedmineユーザとして新規登録する場合、チケットの参照権限しかないようなユーザとして作成したほうが安全だ。
また、問合せ顧客に相当するRedmineユーザだけのユーザグループを作っておき、そのユーザグループに即座に追加できるようにしておいた方がいいだろう。
さらに、過去に登録されたメール送信者のRedmineユーザが存在するならば、2回目以降に受信したメールのチケット登録では、ユーザを新規登録するか否かを判別してチケット登録できるした方がいいだろう。
だが、そもそも、メール送信者をRedmineユーザで登録して良いのか、という疑問もある。
顧客リストはとても多いから、普通は数千程度にすぐに増えてしまう。
すると、Redmineユーザに顧客とサポートデスクの担当者が入り交じってしまう。
たとえRedmineユーザをユーザグループで分けたとしても、それが本当の解決なのか、という疑問はある。
でも、僕は、メール送信者はRedmineユーザで代用する方法がベターだろうと思う。
CRMで一番重要な機能は、顧客(取引先)の管理だ。
Redmineのカスタムフィールド機能によってユーザにも属性を追加できるので、顧客の重要度(ターゲット、リード、重要顧客)のプルダウンを追加すればいいし、住所や電話番号などの顧客情報のテキストボックスも追加すればいい。
また、顧客を管理する必要がなくなれば、Redmineユーザのステータスを「削除」にして修正不可にしてしまえばいい。
・マーケティング機能
→適用NG。
イベントなどのキャンペーン管理、電子メールに書かれたトラッキングURLからアクセスした行動を追跡するチャネル分析、リードソース(見込み客がどのチャネルからアクセスしてきたのかという情報)の分析機能は、Redmineにはない。
そもそも、Redmineは障害管理から発生したのだから、CRMの機能を実装することは眼中にない。
・分析機能
→ほんの一部だけ適用OK。
ケース(顧客問合せ)や商談、打合せの検索は、チケット集計機能で代用できる。
しかし、顧客の購買履歴から何らかの因果関係を見出す機能は、Redmineのデフォルトのチケット集計機能だけでは足りない。
CRMではデータウェアハウス、つまりスター型DB設計によって、色んな観点でデータを分析するが、チケット集計機能にはない。
最終的には、分析・集計処理のためのバッチ処理が必要になると思う。
以上のように考えると、RedmineをCRMソフトとして代用するのは難しい。
チケットはあくまでもプロセスないしトランザクションの管理に向いているのであり、CRMで一番大事な顧客というエンティティをRedmineにマッピングしたいけれど、その対象がはっきりしないからだ。
それは丁度、テスト管理はRedmineよりもTestLinkの方が向いている事実と重なるように思える。
テストケースはチケットで代用できそうで、やはりできない。
でも、メール受信のたびにチケットを自動登録したり、期限が来たチケット一覧をメールで自動送信する機能は、Redmineならではの特徴だ。
丁度、Excel管理から脱却するためにRedmineを導入するのと同じように、メール駆動のタスク管理からRedmineへ進化していく手法はもっと研究される余地があるだろうと思う。
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コメント
Redmineプラグインの関係なのですが、『Redmine ContactFormプラグインを入れるとBannerが動かないんだけど』といった問い合わせを受けることがありました。
いろいろ調べているうちに、CRM用途の有償(一部無償)のプラグインがあるみたいですね。
まだ入れてみたことはないのですが、お客様情報を登録したり、工数(コスト)を登録できたりするようです。
有償かつそれなりにきちんとしたサイトがあるので、やはりCRM的な使い方は外れてはいないんじゃないかなと思っています。
私は社内システムがメインですが、『お客様』が社内か社外か、という違いだけなので、勉強会でいただいたアイディアも取り込んでいきたいなと思いました。
投稿: akiko | 2013/07/01 15:49
◆akikoさん
僕もRedmineのCRMプラグインはいくつか見つけています。
CRM - Plugins - Redmine
http://www.redmine.org/plugins/contacts
実はRedmineプラグインを探してみると、顧客情報を保持するプラグインや、顧客問合せを管理するプラグインは意外に多いです。
おそらく、CRMの一部機能はチケット管理で代用できるのでしょう。
しかし、素のRedmineがCRMソフトにならないのは、顧客という概念がRedmineの既存項目にマッピングできないからだと思います。
ですが、メールによるチケット自動登録機能は、大きな可能性を秘めていると思います。
例えば、Zabbixなどのサーバ監視ツールからの障害報告メールをチケット登録してチケット管理する機能にも応用できます。
その辺りの考え方もまたBlogに書く予定です。
投稿: あきぴー | 2013/07/04 22:24