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2013/07/21

社会人の勉強方法にもWF型開発や適応型開発のアナロジーを活かせるか

社会人の勉強について、考えたことをメモ書き。

【1】社会人になると仕事中心の生活になるが、勉強が必要になる場合もある。
よくある例は、資格を取らないと管理職になれない、とか、資格を取得しないと担当した業務(例:証券などの金融)で仕事できない、とか、担当された業務で専門知識が必要なために自主的に勉強せざるを得ない、など。
社会人の勉強方法は学生の勉強方法とは全く違うと最近分かってきた。

【2】仕事はチームプレー、勉強は個人プレー

普通の社会人は、営業マンであれ事務員であれプログラマであれ、チームで仕事する。
チームで仕事するからには、不得意な分野は他の専門家に任せる。
得意な分野で自分の能力を活かして、チームのアウトプットに役立てる。

だから、顔の広い人が仕事が出来る人になる。
顔の広い人は、仕事を得意な人に任せるのが上手いから。
仕事が進まない人には、ヘルプできる人をつけるように依頼して、チームでカバーする。

でも勉強は個人プレー。
勉強のアウトプットが大学受験だったり、資格試験だったりするので、試験会場では自分一人だけで勝負しなければならない。
苦手分野でも自分一人でやらなければならない。
勉強の出来る人は、苦手分野があまりないか、あったとしても致命的でないように、広い知識を持っている。
不得意分野を他人に振ることができにないのだ。

でも、勉強だけに向いている人は、チームプレーが苦手な人もいるように思える。
だから、勉強だけできる個人プレーだけの人はビジネスには向かないかもしれない。
実際、学校の成績が良くなくても、チームで仕事すると生き生きする人は世の中にとても多い。

自分の専門能力をアピールして働くのか、ファシリテーションやマネジメントの能力をアピールして働くのか。

【3】竹中さんによる「竹中式マトリクス勉強法」における勉強マトリクスの4象限

竹中平蔵さんによる「竹中式マトリクス勉強法」には、勉強マトリクスの4象限の解説がある。
1つの軸は、天井のある勉強と、天井のない勉強。
天井のある勉強は、大学受験や資格試験など、合格すればそれで終わり。
天井のない勉強は、経営能力を身につける、とか、新しいプログラミング言語を毎年勉強する、とか、際限のない勉強。

もう一つの軸は、人生を戦うための武器としての勉強、とか、人間力を鍛えるための勉強。
ITや金融知識などの専門知識を身に付けて、世界やライバルに打ち勝つための勉強。
あるいは、古典や音楽、芸術などの教養を身につける勉強。

すると、縦:武器としての勉強+人間力を鍛える勉強、横:天井がある勉強+天井がない勉強でマトリクス形式にすると、

A:記憶勉強、
B:仕事勉強、
C:趣味勉強、
D:人生勉強
の4象限になる。

学生の勉強は、A:記憶勉強が全て。
でも、社会人の勉強は、Aだけではない。
働きながら、大学院に入り直してMBAを取得したり、資格勉強にチャレンジする社会人は、B:仕事勉強が多い。
つまり、ある程度ビジネス経験を積んだ後に、もう一度知識を身に付けるべく勉強し始める。
例えば、MBAで勉強することで、再現性や恒常性の高い成果を出すために過去の経営メソッドを身に付けることもできる。
各種の資格を取得することで、経験で得られた内容に、専門知識を追加して幅広く理解することもできる。

特に、社会人の勉強は、業務経験がなければ取得できない資格も多い。
PMPや技術士は経験年数を必要とするし、高度情報処理技術者試験(SA・PM・ST・AU)はだれでも受験できるがそれなりのITシステムの設計や提案の経験がなければ、そう簡単に取得できないだろう。

だが、業界で10年以上の経験があるからと言って、例えば資格に簡単に受かるわけではない。
仕事の経験知は特有の業務に特化しているために、得られた知識はとても狭い。
むしろ、資格勉強によって、周辺の専門知識をかなり暗記しなければ身につかない。

【4】学生と社会人の勉強方法で違うのは、勉強に費やせる工数が大きく違うこと。
学生ならば、1週間のうち5日、先生から指導を受けて、言われた通り勉強するのが普通。
勉強方法は、予習→講義→復習という受け身の勉強スタイル。
1ヶ月のうち20人日は勉強に費やせるから、1ヶ月のうち約70%の工数を勉強にアサインできる。

しかし、社会人になれば、平日は仕事があり、休日は疲れているだろうから、1ヶ月のうち1日分、専門講師による講義を直接受けれるぐらいがせいぜいだろう。
独学でも、1ヶ月で勉強できる工数はおそらく50時間も満たないだろう。
つまり、1ヶ月に1日~1週間ぐらいの工数しか勉強に費やせない。
しかも、ほとんどの勉強時間が独学になるので、自力で勉強していく能力も必要になる。

逆に言えば、社会人になると、専門講師による指導回数を増やしても、さほど身につかない。
独学で勉強する工数の方が多いから、自力で勉強するメソッドを自分なりに開発しなければならない。

だから、社会人の勉強スタイルは、ソフトウェア開発における適応型開発に近くなる。
自分に合った勉強方法を身につけるために、1週間または1ヶ月のスプリント単位に試して、その結果を評価して、そのノウハウを身に付けて(適応して)、次のスプリントに生かしていく。

【5】現在の日本における資格勉強はWF型開発っぽい手法が有効な場面が多い

自分で体験してみて、現在の日本における資格勉強はWF型開発っぽい手法が有効な場面が多いのかな、と思う。
と言うのも、ほとんどの試験は、紙と鉛筆による筆記試験が多い。
つまり、アナログの勉強スタイルのため、一度書いた答案を書き直すのは時間が掛かるし、面倒だ。
特に、記述試験や論文試験では、100~3000文字も記述しなければならないので、一度書き始めたら、途中で書き直すのは非常に困難だ。

だから、例えば、論文試験では、事前に目次を作るだけでなく、ストーリー展開やレイアウト設定まで事前に決めた後に、書き始めるのが普通。
途中で目次を入れ替えるには、一度書いた文章を全部消してしまう必要があり、工数がかかりすぎるからだ。

もし、エディタやWordが使えるならば、とりあえず書き始めなら、途中で目次を入れ替えたりして、いくらでも書き直しができる。
IT技術を使えるならば、試行錯誤しながら記述できるのに、ほとんどの資格試験がアナログ形式のために、WF型開発のように事前の計画作りを必要以上に重視せざるを得ない。

しかも、今の社会人は業務がほとんどIT化されてしまっているので、シャーペンやボールペンを使った仕事は殆ど無いはず。
だから、意識的に、シャーペンで大量に書く練習や、電卓を叩く練習など、アナログ形式の勉強に慣れる必要がある。

教育の現場がいまだにチョークと黒板によるアナログの講義形式が主流である理由の一つは、大学受験などの試験がアナログ形式のために、事前の準備を重視せざるを得ないからではないか。
IT技術がもっと教育現場に普及すれば、何度でもやり直しが効く勉強方法も生まれるだろうから、アジャイル開発のような勉強方法も生まれるのではないか。

とは言え、ITツールが効果的に使える場面もある。
例えば、英語の勉強はウォーターフォール型開発よりも適応型開発が向いている: プログラマの思索に書いたように、英語学習はもっと経験重視の適応型開発っぽい勉強方法が向いている。
英語学習では、iPodやiPhoneからヒヤリングで聞いたり、ボイスメモで音読した内容を録音して再度ヒヤリングするなどのやり方がとても有効だ。

牛尾さんが提唱される「サウンドファーストの原則」「ダイレクト理解の原則」「コンテキスト理解の原則」などを実践してみると、経験重視の典型的な適応型開発に思える。

論文試験でも、3000文字超の文章を音読してボイスメモで録音して、いつでもヒアリングできるようにしておくと効果があるらしい。
目による脳へのインプットと、耳からの脳へのインプットは違うので有効みたい。

【6】とは言え、単純に暗記だけすれば勉強は終わりではない。
社交場で教養が必要になるとか、色んな理由で、C:趣味勉強やD:人生勉強も必要になってくる。

コミュニティ活動してきて勉強になったことは、プレゼンの技術だ。
日本の学校では、プレゼンの場がほとんどないので、人前で自分の考えや意見を話す練習をしたことがない。
パワポを作って話す練習は、社会人と言えども、顧客相手に話す場合くらいしか使わないのではないか?

でも、コミュニティでは、自分から率先して講演することができる。
たとえ失敗しても、有志が集まるコミュニティでは、色んな人からフィードバックがもらえる。

PowerPointを使った古い人の講演よりも、KeyNoteを使ってジョブズのプレゼンのように話すタイプも多くなってきた。
プレゼンテーションZen」のような優れた本もあるし、周囲の発表を見れば、自然にプレゼンの技術も参考になる。
プレゼンは場数が必要かなあと思ったりする。

自分の知的好奇心を冷まさずに、色々勉強していくために、勉強方法を今後もまとめてみる。

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