ソフトウェアは資産なのか負債なのか
ソフトウェアは資産なのか負債なのか、についてラフなメモ書き。
【元ネタ】
Life is beautiful: ソフトウェアの資産計上に関する素朴な疑問
ソフトウェアは完成しても価値はない ? アジャイル開発は何を解決するのか | Social Change!
No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数|法人税|国税庁
ソフトウェアの減価償却-ソフトウェアに関する会計と税務について
ソフトウェアは会計上は無形資産として計上される場合が多い。
でも、現実の感覚は、ソフトウェアは負債だと思う。
特に、業務システムは、導入当初は負債であり、運用していきながら、その価値を回収していると考えた方がいいと思う。
ユーザ企業が業務システムを新規開発しようと思い立った時、普通は、投資対効果(ROI)の計算から始める。
現状は手作業でやっている業務が、どれだけの人件費や消耗品費などでどれだけ費用がかかっているか?
その業務をシステム化した場合、業務にかかる時間や人件費がどれだけ削減されて、どれだけ価値が出るのか?
すると、システムを導入すると、何年使えば元が取れるようになるのか?
例えば、業務系Webシステムの機能改善の場合、現在は一つの仕入伝票を入力するのに5分かかっていたとしよう。
ユーザインターフェイスや機能改善で、入力時間が2分に短縮できるとしよう。
すると、一人1枚の仕入れ伝票の入力に3分が短縮される。
その3分を時給計算して、1日または1ヶ月の仕入れ伝票の平均枚数やオペレータの人数を計算し、時間短縮による費用を算出すれば、その金額だけコスト削減になる。
そして、機能改善の投資額と時間短縮の費用を比較し、どれだけの期間で元が取れるようになるのかを計算すれば、投資対効果が計算できる。
ユーザ企業のいわゆる情報システム部門や経営企画部門は、システム開発案件を発注する場合、このような投資対効果を計算して、経営者へ説明する時が多いようだ。
つまり、発注したシステムがどれだけ価値があるのか、を経営者に説明しているのだ。
すると、開発の期間が1年以上のように長くなるほど、投資対効果が薄いことになる。
これだけ技術革新の期間が短くなっているのに、元が取れるのに数年単位という時間はあまりにも長すぎる、と最近の経営者は思っているのではないだろうか?
業務システムを導入するのには、数百万~数億円の投資額が少なくともかかる。
せっかく作り上げたとしても、本番リリース直後は、実際に運用してみて、障害や改善要望が色々判明し、それらを反映してやっと使い物になる。
つまり、システム開発案件を発注し、数ヶ月~1年かかって作ってもらい、更に数ヶ月かけて導入して、初めて使い物になる。
すなわち、最初に支払った投資額を回収するには、かなりの時間がかかる。
しかも、システムの寿命よりもハードウェアの寿命が最近はすごく短くなっているので、3年経つとすぐにサーバーリプレース案件を実施しなければならない。
システムがやっと運用にのってきたのに、安定しているシステムに手を加えないといけない場合が非常に多い。
システムは使用期間がながくなるほど、保守費用もリプレース費用もかかってくるのだ。
そんなことを考えると、ソフトウェア、特に業務システムは、資産と言うよりも負債と捉えた方が現実に合っているような気がする。
それは、個人が購入した住宅や車に似ている。
住宅や車は資産かもしれないが、その実態は借金(負債)で購入したものだ。
個人の年収(売上)の身の丈に合わないモノを買ったならば、じきに負債の利息の支払いで破産してしまう。
ソフトウェアも同様に、資産と思って買い物をしたはずなのに、実際は多額の借金をかけて作ったものであり、実際に使って元を取らなければ、単なるガラクタだ。
しかも、ソフトウェアの保守費用も毎年かかるわけだから、使われていないソフトウェアは費用を垂れ流していることになる。
そんな現実が明確になってきたからこそ、アジャイル開発のように、ソフトウェアを定期的に価値あるものとして証明できる開発スタイルが必要になってきたのだろうと思う。
| 固定リンク
「ソフトウェア」カテゴリの記事
- マインドマップをFreeplaneに乗り換えた(2020.11.21)
- ソフトウェアの政治的影響力とは何だろうか(2020.07.07)
- DevOpsがアジャイル開発を促進する(2020.06.11)
- AzureクラウドデザインパターンとAWSクラウドデザインパターンのリンク(2020.06.09)
- Ruby技術者認定試験の感想(2020.05.08)
「経営・法律・ビジネス」カテゴリの記事
- みんなのPython勉強会#65の感想~社会変革の鍵はIT技術者にあるのかもしれない(2021.01.14)
- IPAがDXのパターン・ランゲージを公開している~新しい組織文化が新しい経営戦略を生み出す(2020.12.05)
- 組織は記憶能力を持つのか~トランザクティブ・メモリーという概念(2020.11.23)
- 手段を目的化するのは日本人の病(2020.11.07)
- 問題解決アプローチを見極める『クネビンフレームワーク』のメモ(2020.09.02)
「Agile」カテゴリの記事
- 文化は組織構造に従う(2021.01.19)
- 「ストーリーマッピングをはじめよう」本の感想~ストーリーによる企画や要件定義はSaaSと相性がいい(2021.01.17)
- 管理職に求められる能力はPM理論そのものではなかったのか(2021.01.14)
- yWriterは映画の脚本を作るためのアプリだったのではないか(2021.01.05)
- カンバンはステータス名が大事(2021.01.02)
コメント
こんにちは。
受託開発の場合は耐用期間が5年ですか(微妙です)
ご存じなら教えてほしいのですが、クラウドで従量課金のサービスを使用する場合は、リース扱いになるのでしょうか?
それを、カスタマイズして利用する場合は、会計上は、改修にかかる部分がソフトウェア開発費で、従量課金の使用にあたるのが、リース扱いになるのでしょうか?
投稿: fukano | 2013/10/14 12:43
であるならば間違いなく資産です。設備(=固定資産)と同じですから。
費用を借り入れて開発したとすると会計上は「『無』を負債と現金に分け(=借り入れ)、現金を固定資産に変えた(=購入など)だけ」です。
時代遅れになったりするのは減価償却で扱いますし、ハードウェアの更新や機能追加などのない単純なメンテナンスの費用は予め引き当てて負債扱いすることができます。おそらくこの引当のことを指して「負債」と言っているのでしょうが、モノ自体は資産です。
>fukano氏
それはサービスの利用ですから単純に費用です。「マッシュアップ」的にその結果を利用したものを商品として売っているなら仕入原価、でなければ管理費になるでしょう。また、そのための開発を依頼するなどの本当に特別な場合でなければリースにはあたらないでしょう。
投稿: tarosuke | 2014/01/01 00:01