教育にソフトウェアによるプロセス改善サイクルを導入する~カーンアカデミーによる教育の未来
「世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション」を読んだ。
ものすごくインスピレーションを受けた本だった。
今、大学で教育学を受講している学生がいたら、この本を読むことを強く勧める。
感想をラフなメモ書き。
【1】カーンアカデミーは本来、カーンさんの従妹が数学の単位換算が分からない質問に対し、カーンさんがビデオで講義してYouTubeに公開する所から始まった。
その活動が数年たつと、ものすごい影響を及ぼす。
最終的には、グーグルやビルゲイツの支援も受けて、世界中に教育ビデオとソフトウェアを無料で発信している。
本の著者であるカーンさんの文章を読むと、金融アナリストやプログラマという側面だけでなく、哲学者のような雰囲気を受ける。
すごく頭の切れる人なのだろう。
教育は人文科学の中でも、最も根本的な問題をはらむ学問だ。
「人に創造性を育てることはできるか」
「効率的に学習していくには何が必要なのか」
従来の教育制度は、プロイセン式の軍隊スタイル。
40人ほどの教室に子供たちを年齢別に押し詰めて、年齢に応じて学習内容を教師が一方的に教える。
そのスタイルは、国家が未熟な頃は良かったけれど、現代のように、暗記能力よりも創造性やリーダーシップを重視する流れでは、限界が来ている。
そういう問題に対し、ソフトウェアとビッグデータを使って、教え方の仮説を立てて、生徒の学習記録から検証し、経験則を見出していく。
まさに、PDCAのプロセス改善サイクル。
例えば、本の一節に、2つの6年制クラスに、数学を「1+1」の初歩から教えるクラスと、5年レベルの授業から教えるクラスに分けて、習熟度をテストした話がある。
つまり、いわゆるABテスト。
その結果は、実は「1+1」の初歩から教えたクラスの方が、最終的には成績もよく、学習能力も伸びたという驚くべき事実。
その理由の一つは、例えば、微積分を理解するには、三角法や指数・対数などの基礎を知っておく必要があるのに、それら一つが欠けていると、理解できない事実と似ているという指摘。
つまり、微積分は難解であるのではなく、前提となる基礎的な知識を理解していない限り、微積分を自由に操る能力は生まれない。
その理由と同じ現象が、小学6年生の算数にも表れたわけだ。
カーンさんはそういう事象をスイスチーズ的学習と呼ぶ。
スイスチーズは表面はきれいだが中身はスカスカらしい。
つまり、テストをクリアするなどの目先の目標にとらわれて、理解が不十分なまま、先に進んでしまって、理解に支障が生じる現象を指す。
このエピソードは、ソフトウェアが教育を変えるという事実だけでなく、ソフトウェアはビッグデータやABテストなどの手法を使うことで、自然にPDCAの改善サイクルを生んでいる事実の方が面白かった。
ソフトウェアの凄い点は、ネットで提供することで場所や時間に依存しないことだけでなく、人の行動を記録することで、その中から意味ある経験則を見出す可能性があること。
つまり、たくさんのデータから帰納的に法則を見出す研究がソフトウェアのおかげでとてもやりやすくなったという事実があるだろう。
さらにソフトウェアが重要な点は、仮説を立てて、その結果を記録し、評価して次に向けて是正対策を立てるというPDCAサイクルを自然に実践していることだろう。
PDCAサイクルはプロセス改善の基本的な構造だ。
このサイクルがあるからこそ、人もチームも成長する。
リーダーや管理職ならば、自分だけでなく、チームにも、PDCAサイクルを適用して、変化をもたらす手法を身に着けないといけない。
しかしながら、プロセス改善を回した経験がないというリーダーもとても多い。
そうなると、「これだけ! KPT」に書いてあるように、プロセス改善を回した経験のない管理職がどんどん増えて、自分たちの組織が成長できなくなる。
でも、ソフトウェアが書けるプログラマは、PDCAサイクルを回すプログラムを自分で書くことができる。
自分の仕事の記録、工数の記録、学習した記録、何でもいいから記録を残して、その記録から意味ある経験則を見出すアルゴリズムを適用するプログラムを書いて、PDCAサイクルを回せば、プロセス改善できるきっかけになる。
【2】「世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション」の本には、教育の根本問題に関する優れた洞察が書かれている。
・カーンアカデミーが提供するレッスン時間は10分にする。
学生が集中できる時間は10~18分に過ぎない、という過去の教育理論家の研究がある。
なぜ、学校は今でも45分も長時間の授業をするのか?
・ビデオには、人は出ない。音声と動画だけ。(当初は)
人は生まれつき顔に注目するので、黒板の方程式よりも教師の言動に注目してしまう。
教師と顔を合わせる時間と学習時間は別にする。
・カーンアカデミーの教育プログラムは、完全習得学習という教育理論に支えられている。
つまり、生徒はある学習内容を十分に理解したうえで、次の高度な内容に進む。
完全習得学習の効果については、過去の教育理論家が既に研究して残している。
なのに、今の学校は、生徒の理解度が分からなくても、先に進んでしまうのはなぜか?
理由は、従来の教育ではコストがかかることと、官僚主義という名の惰性。
現代は、ソフトウェアによって、そのコストはほとんど無料に押し下げることが可能。
・完全習得学習の効果として、生徒が当事者意識を持つことがあげられる。
完全習得学習プログラムを経験した生徒は、自らの学習に対する責任を引き受けるようになった。
つまり、なぜわからないのか、と自発的に掘り下げて、理解できなかった知識を習得できるように自発的に身に着けようとする。
・知識マップを使う。
数学、国語、歴史、物理などの教科は単独で教えるのではなく、学習した内容をつなげて、有機的につなげる。
知識の記憶は、複数の知識に紐づけると残りやすい。
そのために、学習記録から学習内容の知識マップをプログラムで自動生成する。
さらに、学習内容に関する問題生成プログラムを自動生成し、生徒の学習結果を評価する。
生徒は、今まで自分が習ってきた「いままでの場所」、これから学んでいく「これから行く場所」の全体像をイメージさせる利点がある。
・ソフトウェアを使った学習の利点の一つは、マイペースで学習できること。
時間や場所に依存しない。
従来の教育制度で最も非効率な部分は、夏休みという学習しない無駄な期間。
夏休みは、農業が基本的だった社会の名残りであり、現代の情報化社会には向かない。
1か月も学習しなければ、忘れてしまう。
むしろ、会社の有給休暇のように、学校も自由に休みを取れるようにすべき。
・ソフトウェアを使った学習の利点の二つ目は、学習した記録が残り、いつでもアクセスできること。
黒板の内容は消されることもないし、教科書が紛失することもない。
学習履歴が残っているので、復習できるし、過去の学習内容の関連性を思い出させる利点もある。
・従来の教育は、プロイセンの教育制度から生まれた。
当時は、税金による公的で普遍的な義務教育制度によって、たくさんの中流階級が生まれた。
しかし、現代では、規律や従順を重視する従来の教育方法よりも、創造的・論理的な思考が求められており、矛盾が発生している。
・テストで70点を取って合格したという意味は、本当に理解したことになるのか?
テストは、その人のすべての能力、あるいは潜在能力を評価するのではなく、ある時点のある能力のスナップショットに過ぎない。
・テストとは、そもそも何をテストするのか?
テストとは、ある時点における学習内容の一部について、生徒の記憶と理解のおおよその状況を測定するものにすぎない。
・テストには、政治や経済が混じりこむ。
本では事例として、ニューヨーク州が標準テストをお金をかけて見直した話が掲載されている。
変更前の古いテストでは、問題内容が予測しやすく、テスト対策をしたら得点が上がるため、上がり過ぎて標準であるという信頼性を失った。
そこで、テスト作成会社が作ったら、翌年は得点は急落し、生徒の能力が落ちたという批判を逆に受けた。
すると、州は彼らを首にして、別のテスト作成会社に、細かなガイドラインを提示した。
ひねくれた問題はなくす、ややこしい否定形の問題はなくす、読解文の登場人物は前向きで模範的な人に限る、など。
(日本でも、こんなエピソードはどこの学校でも出てきそう。)
新しいテストは、古いテストよりも信頼できるものになったのか?
・プロイセン教育制度における能力別クラス編成は、多くの生徒から潜在能力を発揮する機会を奪っている。
「あなたには能力が足りないので、たぶん社会に貢献できない」メッセージを送っている。
・創造性はどう測り、どう育てればよいのか?
創造性はそもそも教えられるのか?
カーンさんの結論は「その人を見たら創造性があるかどうか分かる」。
・宿題の正しい量はどれくらいか?
誰も分からない。場合による。
・宿題は子供の教育に両親を巻き込むための手段である。
だから、高学歴の両親を持つ子供ほど、成績が良くなる傾向がある。
「高学歴な親を持つ方が子供も学歴が良くなる」経験則は、宿題の副作用ではないか。
つまり、伝統的な宿題は不平等を促す効果があり、公教育の目的にそぐわない。
・カーンアカデミーでは「自宅で講義、教室で宿題」のやり方を試している。
この手法を「教室をひっくり返す」と呼ぶ。
(この考え方は、教育理論家によって以前から提唱されていたらしい)
・自宅で聞く講義は、バスでも公園でもどこでも聞ける。
自分の好きなペースで勉強できる。
教室で問題を解くようになれば、分からない問題や思い違いがあれば、先生や友達が助けてくれる利点がある。
・従来の教育制度はうまく機能していないかもしれないのに、間違いなくコストも高い。
子供が小学校から大学を卒業するまで、どれだけのお金がかかるのか?
学校、教室、教科書などの設備を用意するのに、どれだけお金がかかるのか?
学校ごとに、教員や警備員を配置するコストがかかる。
新しいテクノロジーを適用すれば、コストは無料まで抑えられるはずだ。
・新しいテクノロジーを従来の教育制度に入れても、学習う方法を変えなければ、お金をどぶに捨てるだけである、と一部の教育理論家は言っている。
教室を再構築しない限り、iPadは有効な学習ツールにならない、と。
・教育の理論構築と実践、その検証に、ソフトウェアとビッグデータを適用する。
教育のような人間の根本問題に関わる実証主義的研究は、従来は結果を出すのに30年以上かかっていた。
しかし、ソフトウェアとビッグデータをうまく使えば、医学である薬剤の効果を実証する研究と同じように、数か月ないし数年で仮説検証できるはずだ。
・カーンアカデミーによるマイペースで取り組めるビデオと練習問題、教室でのプロジェクトを組み合わせた手法は、特定の生徒や先生に共感を呼ぶらしい。
その有力な証拠が事例的にも統計的にも提出できる点に、大きな意義がある!!!!!
(もちろん、ソフトウェアとビッグデータを使ったPDCAの改善サイクルが背景にある)
・生徒が数学の学習内容を完全に理解できていない自信のなさの原因は何か?
一つは、中心となる内容を「概念」としてしっかり理解できていないため、何を尋ねられているのか、問題を解くのにどんな概念を使えばよいか、確信が持てないから。
もう一つは、自分たちが理解でき当ていない自覚があり、プライドを傷つけられるから。
その問題に対し、数学の問題を出すごく簡単なソフトウェアを作った。
負の数の足し算引き算、簡単な指数の計算をランダムに出すだけの基本的なソフト。
このソフトに、各生徒が何問正解して何問間違えたか、どれくらいの時間を要したか、何時に問題を解いたのか、などを記録するようにした。
この学習記録を講師がフィードバックを受けることで、生徒が何を学習しているかだけでなく、どのように学んでいるか、も分かってきた。
論理ステップを追ってコツコツと解答したのか、それともパターン認識によって答えが閃いたのか。
間違ったのはケアレスミスか、それとも関連性を完全に把握できていないからなのか。
生徒が学習内容を真に理解した時、何が起きるのか。
それは事例を積み重ねて徐々に起きるのか、突然起きるのか。
色々な概念をミックスした問題ではなく、一つの概念だけに絞った問題をたくさん解くと何が起きるのか。
・生徒の数が増えても、ソフトウェアを使えば、簡単に学習記録やその次に進む学習内容へのアドバイスなどの情報を管理できる。
・「特定の内容を習得した」ことをどのように定義するのか?
カーンアカデミーでは、「ある科目の問題を10問連続して正解できれば、基本的な内容を理解できていると判断してよい」。
この定義は、カーンさんの直感的なやり方。
この定義に至った理由は、テストには生徒への期待という人間的な要素がある。
低いハードルは、子供は自分の能力を疑うし、そこそこでいいという後ろ向きな考えになる。
10問連続して解けるぐらいの基準は、メトリクスとしても簡単で、教師も生徒に期待しているというメッセージを送れる。
・ある州の夏期講習で、カーンアカデミーのプログラムを適用した時に、「1+1」から始めるクラスと5年生レベルから始めるクラスでA/Bテストを実施した。
結果は、「1+1」から始めるクラスの方が断然、成績が良かった。
5年生レベルから始めるクラスでは、壁にぶつかって進歩がみられない生徒もいた。
6年生、7年生レベルの学習内容が分からないのは、もっと前のレベルの内容でつまずいているからだという測定結果が得られた。
つまり、大部分の生徒は何らかの矯正を必要としており、そのギャップの発見と修復に時間をかければ、長い目で見ると時間とコストが節約され、学習も深まる。
・経験豊富な先生がカーンアカデミーのプログラムに改良点を指摘してくれた。
「今の機能は素晴らしい。でも本当に欲しいのは、生徒がいつ立ち往生しているかを教えてくれる簡便なシステムです」と。
・学習には必ず「分かった」と「分からない」の間にある「立ち往生」の状態がある。
カーンアカデミーのシステムでは、立ち往生を「50問解いて10問連続正解が一度もなければ立ち往生している」と定義した。
この大まかなメトリクスでも、先生には十分に役立った。
・さらに、生徒が立ち往生しているかどうかを先生に伝える仕組みとして、生徒と学習内容のクロス集計表を毎日作成するようにした。
これを見れば、誰がどの教科で立ち往生したか、一目瞭然。
・立ち往生のフィードバックによって、教室の在り方が根本的に変わった。
ソフトウェアというテクノロジーを活用したことで、1対1のやり取りが促進され、どの生徒に配慮が必要か、先生もすぐに分かる。
さらに、特定の学習内容をマスターした生徒と悪戦苦戦している生徒をペアにしたり、同じところでつまずいている生徒同士をペアにすることで、協力して障害を乗り越える経験が得られる。
このような人間的なやり取りは、学習時にとても必要。
・カーンアカデミーのフィードバックシステムが優れている点は、生徒の習熟度に応じた学習方法を個別に提供できること。
つまり、飲み込みが遅い生徒でも、マイペースで学習して基礎をしっかり固める機会さえあれば、上級と認められる生徒になりうる仕組みを提供したこと。
ソフトウェアで学習記録を解析することで、生徒の立ち往生をタイミングよくフィードバックし、生徒の学習を支援する。
・生徒の習熟度を個別に管理できる学習システムがあるならば、年齢別にクラス編成する必要はない。
むしろ、いろいろな年齢が混じっている環境の方が、年上の子も年下の子も得るものがある。
年上の子は年下の子供に責任を持ち、リーダーシップを発揮する経験ができる。
年下の子は年上をを尊敬し真似る。
年齢別クラス編成は、子供にチーム運営やリーダーシップを発揮する経験を奪っている。
・カーンアカデミーが理想とするのは、年齢の区別のない「一つの教室」。
年上の生徒やできる生徒が、理解が遅い生徒や年下の生徒に教えることで、自分の理解を深め、リーダーシップの経験を得る。
年下の生徒は、お兄さんやお姉さんから色々なお手本に接することで、能力を伸ばす。
・年齢混合クラスを推進するならば、先生と生徒の比率はそのままで、もっとクラスを合併して大きくすることもできる。
例えば、100人のクラスに4人の先生という配置も可能。
複数教師制度はメリットが多い。
教師が協力し合えるし、教師の得意分野を生かした配置も可能。
何よりも、教育では先生と生徒の相性という人間的な要素が大きいため、複数の先生がいれば、自分に合った相性の先生を見つけることもできる。
・教師もチームスポーツのコーチのように、教師は生徒の味方であるというメッセージを送るべき。
カーンさんは言う。
教室での授業は実社会での競争に対する準備に他ならない。
テストは、生徒にレッテルを貼って恥をかかせるのではなく、生徒の能力を計測するためにある。100点が取れなかったのは、頭が悪いのではなく、取り組むべき課題がまだあるからだ、と。
可能な限り、創造的な、自分の頭で考える人間になって欲しいからこそ、基礎概念から完全に習得してもらわないと意味がない、と。
2010年に小学校に入った全世界の子供たちの65%は、将来、今は存在しない仕事に就くだろうという予測がある。
例えば、コンピュータやインターネットが世の中にあふれて、産業構造も大きく変わった。
だからこそ、子供たちに何かを教えるのではなく、どのように独学の姿勢を身に着けるか、にある。
・現在の学校制度において、夏休みは全面的に見直すべきだ。
今の夏休みは、時間とお金の壮大な無駄だ。
世界中で、1か月間以上、校舎や体育館、教室という教育インフラが使われていない。
先生も事務員も仕事せず、生徒も学習しない。
生徒の継続的学習を阻害している。
農業が基本的な産業だったころの名残にすぎない。
未来の学校は、必要な時にいつでも休めるように、会社と似たような有給休暇の仕組みを作るべきだ。
・学校における生徒の成績表も根本的に変えるべきだ。
従来の古い教育スタイルを変えるには、カーンアカデミーのような学習フィードバックシステムと、二つの評価方法がある。
一つは、生徒がこれまで何を学んできたか、という学習記録。
もう一つは、生徒の創造的な業績のポートフォリオ。
・前者については、現代のソフトウェアによって、生徒の進捗状況や勉強方法、問題解決手法を学習記録から簡単に追跡できる。
フィードバックシステムは学校ごと、生徒ごとにカスタマイズできるし、生徒がどの程度進歩したか、一定期間の学習ペースなどを定量的に把握できる。
興味深いのは、定量データによるフィードバックだけでなく、定性データの方だ。
学習意欲、粘り強さ、復元力などの人格的要素を、学習記録から拾い出せる可能性がある。
例えば、ジョニーは立ち往生している。彼は、そこで逃げ出すのか、分かるまで勉強を頑張ろうとするのか。
例えば、モーは、勉強に不熱心で学習時間も少なかったが、突然、生物の勉強に励むようになったのは、なぜなのか?
生徒の成長ぶりや特定分野の潜在能力を物語る事実が含まれているのではないか。
・現在は生徒評価に全く考慮されない特性「他人を助けようとする能力」もフィードバックシステムで記録できると良い。
例えば、学習内容を他の生徒に説明するのがうまい生徒は、その内容を深く理解しているし、他人に対しても寛容だろう。
そのようなデータが記録し続けることができれば、生徒を多面的に評価することもできる。
これが後者の評価につながる。
・カーン氏は生徒の成績表の中心となる「クリエイティブ・ポートフォリオ」を提案する。
特定の科目ができるかどうかよりも、好奇心や創造性を発揮しているか、に目を向けて、その結果を記録し、評価し、フィードバックして改善していく。
・教育にはいくつかの根本問題がある。
一つは、最善の学習方法とは何か。 たとえば、完全習得学習スタイル。
二つ目は、社会化とは何か? たとえば、仲間同士の協力や年齢混合クラス。
三つ目は、資格認定制度はどうあるべきか?
・現代のテクノロジーを使った思考実験をする。
大学から、学生を教える役割と資格を認めるという役割を切り離したらどうなるか?
どこの大学を卒業したのか、ではなく、国際的に認知された厳格なアセスメントテストを受け入れたとしたら、何が起きるか?
現実では、フルタイムで働きながら短大で好成績を収めるような子供は、間違いなく有名大学卒業生よりも冷遇されている。
でも、アセスメントテストがあれば、貧富も関係なく、卒業した大学も関係なく、有名大学の卒業証明書と同程度の知識があることを証明できる。
エリート校も独自性を発揮しようと特化するだろう。
つまり、資格認定のコストが下がり、大学の権威が増すだろう。
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