ビットコインと貨幣進化論
ビットコインの取引会社の破綻の新聞記事で、「貨幣進化論」という本の解説があったので、購入してみた。
すごく面白い。
以下、自分の憶測と感想をメモ。
【1】単なる紙切れに過ぎない紙幣になぜ価値があるのか?
ビットコインの話はないけれど、アダム・スミスの国富論から通貨の歴史を分かりやすく説明している。
経済学の今般問題とは「貨幣とは何か」。
単なる紙切れや金属にすぎない貨幣に、何故、それほどの価値があり、人は皆、貨幣に執着するのか?
貨幣が信ずるに足る価値があると思わせるために、どのような工夫や概念装置がいるのか?
【2】「貨幣進化論」の序章に「パンの木の島の物語」というSFチックな話がある。
ある孤島に、人が入植し、パンの木の実を食料として生活していた。
最初は自給自足生活だったが、じきに海辺に転がっている宝貝を貨幣として用いて、色んなモノを交換するようになった。
そして、その貨幣発行を独占し、貨幣の価値を保証する人が王家として出現した。
貨幣経済が発達して、貨幣となる宝貝が不足した時、王家は粘土で作られた宝貝を貨幣として流通させた。
この時、貨幣の貸し出しは色んな都合で、銀行が出現し、銀行がその役割を担った。
さらに、政府は住民の生活を安定させるための各種土木事業などを行うために、国債の発行を行い、財政活動を行い始めた。
しかし、黒船が孤島にやってきて、黒船の船員が持っている金貨を粘土で作られた宝貝の貨幣の代わりに使う、と王家も住民も決めた。
最後に、王家は、1年の猶予期間の中で、粘土で作られた宝貝の貨幣を金貨に置き換える作業をやり遂げた後、王は退位して、普通の住民になった、というお話。
【3】「貨幣進化論」は、イングランド銀行による金本位制のお話、アメリカによる固定相場制と変動相場制の話に続くが、序章の「パンの木の島の物語」で経済学上、重要な概念がいくつか出てくる。
僕はまだ完全理解していないが、あげておく。
【3-1】自然利子率 とは - コトバンク
自然利子率とは、現在のモノと将来のモノを交換する時に現れる利子率。
自然利子率は普通は認識されない。
今の日本はデフレと言われているが、その原因は、自然利子率がゼロないしマイナスだからと推測することもできる。
だから、今の政治家は、故意にインフレを起こして、自然利子率をプラスに持って行こうとしている。
それが本当に良いかどうかは分からない。
自然科学者として考えれば、本来の自然の姿(デフレになる状態)を故意に壊してインフレを起こす状態は、相当無理があるのではないか、と思ったりもする。
【3-2】シニョレッジとは|金融経済用語集
シニョレッジとは貨幣発行益。
普通は、政府のみがその利益を所有する。
悪い独裁者ならば、その利益を独占したいがために、紙幣をどんどん発行して、インフレを起こすだろう。
【4】国家という信用があるからこそ成り立つ通貨制度に対し、ネット上でピアツーピアのような仕組みで信用を保証するビットコイン。
ビットコインはある意味、金本位制に似ているのではないか。
皆が、ビットコインには国家が発行する紙幣と同じくらいの価値がある、と信じるから、通用する。
国家が発行する紙幣は、いつかはIT技術が前提で、Web上の民主主義の上で成り立つビットコインのような仮想通貨に変わるような気もする。
ビットコインの技術的な細かい話、経済学における位置づけは僕は分からないが、IT技術が人同士のコミュニケーションだけでなく、政治や経済の構造そのものに大きく関わり、政治的影響力を大きく発揮しつつある点が興味深い。
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