バランススコアカードの例
バランススコアカード(BSC)について考えたことをメモ。
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【1】BSCが必要な背景と問題
超上流工程であるシステム提案では、ビジネスの企画のスキルが問われる。
ITシステムを入れると、業務にどんな利点があるのか、ITシステムを導入した後のビジネスモデルはどのようになるのか、を提示しなくてはいけない。
前者は、ITシステムがどんな問題に対して有効で、導入したらどんな効果が出てくるのか、を定量的に示せればベストだ。
後者は、ITシステムの初期構築費用と保守運用費(いわゆるランニングコスト)がどれだけ発生し、いつになったら損益分岐点に達するのか、を提示する必要がある。
すると、本来の業務のあるべき姿に対し、ITシステムを入れると、どんな問題が解決されて、どのように効果が波及するのか、といった全体像を示さなくてはいけない。
そんな時に、バランススコアカードを使うと、内容をうまく整理できる。
【2】BSCの特徴
【2-1】BSCで最も重要で、最も効果的な成果物は、戦略マップだ。
ゴールを定めた後、「財務の視点(過去)」「顧客の視点(外部)」「内部業務プロセスの視点(内部)」「イノベーションと学習の視点(将来)」の4つの視点から、戦略を抽出して、それらを因果関係で結ぶ。
イメージとしては、SysMLの要求図のDerivedReqの関係のように、A→Bは、「AはBの根拠」「Aの効果がB」になるように戦略をつなげる。
戦略マップの良い点は、「売上の増大」「利益の増大」「原価削減」といった財務の観点の戦略を、顧客・業務プロセス・学習と成長の観点の戦略でつなげることで、戦略のスコープと焦点を明確にしてくれることだ。
戦略マップのような観点のないRFPの提案書は、中身がスカスカで、だから一体何なのだ、とツッコミしたくなる。
もっと壮大でロジカルな話にしないと、取締役や常務のような経営者には響かない。
【2-2】また、BSCでは、戦略マップで洗いだした戦略が重要成功要因(CSF)となり、CSFを測定するメトリクスであるKPI(業績評価指標)と密接に絡んでいる点が良い。
BSCには、KPIというメトリクスを定期的に採取することで、BSCで描いた戦略マップの思惑通りに組織が動いているか、を評価する仕組みがある。
この仕組みによって、KPIのメトリクスを高めるための対策がアクションになり、PDCAというサイクルが回るような仕掛けが動くわけだ。
おそらく、普通の大企業ならば、BSCないしBSCに近い戦略マップとKPTというメトリクスは定義して、それを元に経営しているはずだ。
実際、陰では終身雇用制であっても、業績評価制度を標榜する会社では、各社員の業績を評価する基準として、会社の経営戦略とそれに基づくKPIをブレイクダウンしたものがあるはずだ。
つまり、成果を元に社員を評価する業績評価制度は、BSCの賜物と言ってもよい。
但し、BSCに基づく業績評価制度がいいとは限らない。
人間の集団はおかしなもので、個人ではその行動はおかしいと思うのに、組織の中では、KPIというメトリクスを高めるための行動に偏って、戦略なき局所最適化しやすいからだ。
【3】BSCをITシステムの要求定義に適用する
BSCの特徴であるKPIというメトリクスによる経営戦略の評価という仕組みは、ITシステムと相性が良いと思う。
KPIを採取する仕組みを業務システムの一機能にしてしまえばいいのだ。
小売業や製造業ならば、稼働率・生産性・原価・在庫量などのメトリクスをKPIに当てはめて、業務システムのサブシステムとして情報システムで実現すれば、いくらでもKPIを採取して、集計したりグラフ化したり、分析できる。
KPIを定期的にモニタリングすることで、ある閾値を超えたり下がったりすれば、警告を出すような機能も実装すれば、より気の利いたシステムになるだろう。
よくある実装方法は、警告を通知するメール送信機能などがあるだろう。
【4】BSCの難しさ
しかし、BSCはよく考えられたツールだと思うが、実際に作るのはかなり難しいと思う。
一つは、戦略マップやKPIを作成するのが難しいこと。
戦略マップは一度で完成するわけではなく、何度も書いては書き直し、自分の中でロジックを組み立ていく必要がある。
もう一つは、BSCが吹き込んだ戦略マップを各部署にブレイクダウンして、各人が戦略の意味を自分の業務の範囲内に落としこむようにしなくてはいけないこと。
KPIも、すぐにメトリクスが思いつくわけではなく、KPIが社員の行動を奮い起こすような仕組みにしたい。
人はすぐにKPIに適した局所最適化された行動を取り、KPIの意味を忘れるからだ。
しかし、戦略やKPIを各部署の業務レベルまでブレイクダウンするのには、それなりの労力が必要とされる。
1日くらいの思いつきでできるものではない。
また、一人で考えぬくよりも、複数人で議論しながら戦略をブレイクダウンする方が効果的だ。
なぜなら、ブレイクダウンした戦略を自分の言葉まで落とし込み、自分の部のメンバーに説明して理解してもらえるまで、咀嚼する必要があるからだ。
【5】とは言え、BSCには可能性が秘められていると思う。
今となっては、BSCの本は一時期よりも少なくなっているけれど、そのノウハウは十分に使えると思う。
BSCの本は「キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード」が原点として有名みたいだが、正直読みにくかった。
10冊ぐらいBSCの本を漁ってみた結果、「バランス・スコアカード経営 なるほどQ&A」が最も読みやすく、とても参考になった。
「バランス・スコアカード経営 なるほどQ&A」は既に絶版だけれど、BSCを書くコツ、BSCとABC(活動基準原価計算)、BSCを組織へ広める手法などがQ&A形式で説明されていて、分かりやすい。
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