エバンジェリストが訴求するのは製品や技術ではなく市場を開拓すること
長沢智治さんの記事がとても素晴らしいのでメモ。
以下は主張のないラフなメモ書き。
【参考】
オピニオン:長沢智治: エバンジェリストの頭の中 ― 世界観を訴求するわけ - Build Insider
(引用開始)
エバンジェリストは、マーケティング活動の一環のため、「市場を作り、成熟させる」ことが求められてしかるべきである。
(中略)
従ってエバンジェリストの活動とは、「自分が携わっている製品や技術の詳細を伝える」ことではなく、「世界観を伝える、つまり市場の変遷であったり、トレンドであったり、その中での製品や技術の立ち位置であったり、コンセプトであったりを伝える」ことが第一だと考える。「世界観」についてのコンセンサスを現場で持てたなら、きっとその現場は、自分たちに合った解を議論と体験の中から導き出せるはずだ。
(引用終了)
【1】僕は、RedmineやTestLink、iDempiere、vTigerCRMなどのオープンソースのツールが好きだ。
自分たちで使いこなすうちに、どんな場面で利用すると効果が出るのか、が分かってくる。
使いこなすうちに、自分たちの世界がグレードアップする感覚が好きだ。
そして、じきに新たな課題を感じ取る。
では、その課題とは何なのか?
それは単に、そのツールだけでは解決できない課題という意味だけではない。
そのツールを使いこなすことで、アウフヘーベンされ、本来の問題の本質が見えてくる、という意味の方が強い。
ツールで得られた現場の経験知をモデル化していくうちに、そのモデルがどんな問題にフォーカスしているのか、そのモデルが対象とする問題解決のスコープとその限界が見えてくるのだ。
【2】そんなことを考えながらツールを使っていくと、そのツールの熱烈なファンになる。
こんな機能が欲しい、もっと使いやすくしたい、他のツールに似た機能があるといいな、とか、色んな欲求が出てくる。
あるいは、このツールはこんなにすごいんだよ、と他の人に薦めたくなる。
エバンジェリストの役割は、そのツールを宣伝することだ。
エバンジェリストの影響力が大きいほど、ツールを使うユーザ数も増える。
しかし、その方向性が行き過ぎると、そのツールのライバル製品をけなしてしまう言動をしてしまう時がある。
熱烈なファンがそのツールしか眼中に無く、他のツールの良さまで見えなくなってしまう危険があるのだ。
パッケージ製品のベンダー、オープンソースのツールやパッケージ製品を販売するエバンジェリストは、そのような落とし穴に嵌る時があるのではないか。
僕自身、そんな時があったなと反省するときもあった。
【3】上記の長沢さんの記事では、エバンジェリストは、単にツールを宣伝する人ではなく、ツールが提供されるマーケットを開拓する役割を持つことを主張されている。
その意見は、思わず、そうだよ、と納得した。
ライバル製品との機能比較、製品の持つ新しい技術や仕様などの細部の話が全てではない。
むしろ、エバンジェリストが持つ世界観を世の中に提示すべき。
では、その世界観とは何なのか?
それは、市場の変遷や技術の変遷の中で、そのツールがもたらす新しい価値とは何なのか、を提示すること。
つまり、製品や技術のような枝葉末節の話ではなく、ツールがもたらす価値が現場のどんな問題を解決し、どんなステージを提供するのか、という価値観を提示することだ。
そんな世界観や価値観をエバンジェリストが世の中に提示することで、現場で従来は解決できなかった課題がクリアされる。
あるいは、ツールを導入する前はそもそも、そんな課題すら認識しておらず、問題意識も持っていなかった人もいるに違いない。
そんな人達に、ツールがもたらす価値やメリットを提示して、潜在的なニーズを掘り起こし、問題意識すら持っていなかった新たなユーザ層を獲得し、市場をどんどん広げていく役割がエバンジェリストに求められるわけだ。
市場を開拓し広げていくことで、ユーザから製品へのフィードバックも増えて、製品もどんどん改良されていく好循環も生まれる。
オープンソースの製品もパッケージ製品と同様に、利用ユーザが集まるコミュニティが活発に活動するほど、コミッタと利用ユーザの間で有意義な議論が行われ、製品のあるべき姿が見えてくる。
製品がどんな場面で有効に使えるのか、という利用シーンが明確になるだろう。
更には、製品がもたらす価値のスコープが見えてくることで、製品の新たな課題も見えてくるだろう。
その新たな課題は、製品がどんな方向に進化すべきか、というロードマップに大きく影響するだろう。
個人的な妄想としては、オープンソースの製品群を連携させた一連の「プロジェクト管理サーバー」のような概念を提示し、それがソフトウェア開発プロセスを進化させていることを明示したいなあ、と思っている。
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