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2015/12/26

サーバントリーダーシップになぜ違和感があったのか

図書館で借りた「グロービスMBAリーダーシップ」を読んで、サーバントリーダーシップになぜ違和感があったのか、その理由が何となく理解できた。
以下ラフなメモ書き。

知っておきたいIT経営用語 - サーバントリーダーシップ:ITpro

明日を変える働き方:「サーバント・リーダーシップ」という考え方 (1/2) - ITmedia エンタープライズ

リーダーシップ考(4)~サーバントリーダーシップ /戦略ノート25/プロジェクトマネジメントOS本舗

アジャイル開発への壁は価値観の壁: ソフトウェアさかば

サーバントは革命の言葉。ビジョンを示せ! - サーバントリーダシップ私論 - : ソフトウェアさかば

【1】サーバントリーダーシップでは、リーダーはサーバント(召使)であり、奉仕する→導くという順でリーダーシップを発揮すると言う。
でも、僕の中ではずっと違和感があった。

リーダーシップと言うと、どうしても命令型のリーダーをイメージしてしまう。
上司や社長のリーダーシップは、実際、今までの僕の貧弱な経験の中では、皆の気持ちを吸い取って導くというタイプはそんなにいなかったように感じた。
そして、僕自身もアジャイル開発や自己組織化という概念を実際のチームで実現しようとしたけれど、最後には指示を出して強制的に従わざるをえない場面も経験して、どうしても馴染めなかった。

たとえば、受託請負のソフトウェア開発案件では、結合テスト以降のプロジェクト後半では火が噴く状態になりやすく、どうしても残業したり、休日出勤したりして、進捗遅延をメンバー全員でリカバリーせざるを得ない時がある。
自分がプロジェクトリーダーならば、納期は必須だから、メンバー全員でカバーするしかない。
すると、綺麗事を言っても仕方ないし、強制的に働かざるをえない。

そんな時にサーバント・リーダーシップのような綺麗事を言っても、結果はついてくるのか?という疑問があった。
でも、かと言って、アジャイル開発を実現したいという気持ちがあって、自分の心の中でずっと葛藤があった。

【2】「グロービスMBAリーダーシップ」によれば、サーバント・リーダーシップが重視されるようになった時代背景があるようだ。
一部のリーダーが全てをコントロールできるわけではないから、必然的に「エンパワーメント」を加速する必要が出てきた。

巨大な官僚組織のままでは、変化の激しい時代ではすぐに変化に対応できない。
そこで、上司は部下に権限移譲し、部下に動機づけして、部下が自ら実行できるように支援するリーダーシップが必要になってきた、と。

この辺りは、アジャイル開発やScrumの概念を連想させる。

一方、2000年始めにエンロンなどの不正事件が起きた時、その不正事件にMBAホルダーを持つ経営者が数多く関わっていて、彼らの倫理観や教育方法に疑問が投げかけられた。
そうした時代背景から、リーダーの資質論やリーダーシップ開発などのようなあるべきリーダーシップを解明するだけでなく、倫理観に軸足を置いたリーダーシップ理論が注目され始めた、と。

【3】「グロービスMBAリーダーシップ」によれば、サーバント・リーダーシップの概念は、グリーンリーフによって提唱されたらしい。
彼は、1970年代のアメリカで、ニクソン事件のように、当時のリーダーに不信感や幻滅を抱く時代背景の中で、新たなリーダーシップ像の着想をヘルマン・ヘッセの短編小説「東方巡礼」から着想を得た。

小説では、巡礼団の客が快適に過ごせるように、細やかな心遣いで客に尽くす召使が登場するが、実はその召使こそが東方巡礼を導く結社のリーダーだった、という話。
そこから、彼は、権力や物欲への執着から動くのではなく、素晴らしい目標や社会を実現するために立ち上がるこうしたリーダーは、その高い倫理性や精神性によって人々から信頼を得るのだ、と考えた。

このサーバント・リーダーシップ理論は、1970年代に提唱されて一部では注目されていたが、2000年代初頭のエンロン事件を経て、新たに脚光を浴びた、という経緯があったらしい。

【4】理論の背後にあるそんな時代背景や経緯を聞くと、自分の理解は浅かったのかなと思う。

リーダーが自分で最後は決める、という立場かつ、成果を出す責任がある立場と、メンバーの率直かつ客観的な意見も尊重したい気持ちで対立があり、葛藤が起きた時、そのギャップはどう解決すべきなのか?

確かに、リーダーとメンバーは立場が違う。
リーダーがメンバーに権限委譲したとしても、最終責任はリーダーにあるし、最終決定はリーダーが行う責務がある。
一方、権限移譲したからと言って、メンバーにリーダーがおもねる必要はない。

上記の話を読んで理解したことは、メンバの信頼を集めてチームとして成果を出すには、リーダーの一方的な価値観をメンバーに押し付けるのではなく、社員・顧客・社会に奉仕するためにこのような行動が必要なのだ、という価値観を提示する必要がある、ということだ。
つまり、リーダーの主観的な価値観ではなく、メンバー全員が共感して信頼出来る価値観を提示することが求められている。

そういう理解に至ったが、内容はそりゃそうでしょ、という感じだろうが、リーダーの立ち位置を踏まえて、リーダー自身の価値観は結局どこにあるのか、をいつも突き詰めて考えて持っておき、どんな状況でもぶれないようにしておくのが必要なのだろう。

グロービスMBAリーダーシップ」を読んでみると、他にも、リーダーの特性論、非常時におけるリーダーシップ像、組織変革を行うリーダーシップ理論、パワー(権力)と影響力、など、組織力学に興味がある人なら一通りの内容が理解できて面白いだろうと思う。

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