7/30土の第65回 SEA関西プロセス分科会&RxTStudy #15 「チケット管理システムによるプロセス支援と今後の課題」で議論してみたいこと #redmine
7/30土に開催される第65回 SEA関西プロセス分科会&RxTStudy #15 「チケット管理システムによるプロセス支援と今後の課題」で議論してみたいことをメモ。
ラフなメモ書き。
(引用開始)
7/30に第65回 SEA関西プロセス分科会&第15回 RxTstudy 「チケット管理システムによるプロセス支援と今後の課題」を開催します。
今回の勉強会のメインセッションは、JAXA様の担当者の方にRedmine運用の事例報告を講演して頂きます。
JAXA Repository / AIREX: CODA: JSS2の運用・ユーザ支援を支えるチケット管理システム: Redmineの事例と利用のヒント
JAXA様のRedmine運用事例報告を読むと、発注業務以外にISO9001も見据えた運用フローの標準化、ならびに、大規模な組織や多様な業務に対応できるようにRedmineの機能を十分に評価検証したことがよく分かります。
JAXA様の事例講演を次回も聞くチャンスはそうありませんので、ご興味のある方は是非ご参加下さい。
(引用終了)
【1】最近、Redmineの運用をいろんな場所で展開している時に思う問題意識は、二つある。
一つは、大規模な組織形態や多様な業務に対して、一つのRedmineインスタンスでカバーするには、Redmineにはどんな機能が必要で、どんな運用ルールが必要なのか。
もう一つは、組織構造とRedmineの相互関係を整理したいこと。
つまり、複雑な組織構造がRedmineやその運用プロセスにどんな影響を与えてしまうのか、ならびに、Redmineの導入と運用によって従来の硬直した組織の雰囲気を打破できる可能性はあるのか、を事例とその背後にある経験則を編み出したいこと。
【2】第10回東京Redmine勉強会のディスカッションで偶然聞いたグループでは、「闇Redmine」という言葉が出ていた。
つまり、一つのRedmineインスタンスでは他種類の部署の運用、多様な業務に耐え切れないので、自分たちのチームだけにこっそりとRedmineインスタンスを作り、自分たちのチームのソフトウェア開発プロセスの管理に使っている。
第10回redmine.tokyoの感想~Redmineユーザはメトリクスがお好き #redmineT: プログラマの思索
ツール主導ではなく、自分たちのプロジェクトで成果を出すためにツールを使うのだから、このやり方はおかしくはない。
しかし、自分たちのチームで上手くいったRedmineを隣のチーム、自分の部署のすべてのチーム、他の部署へ展開していくと、Redmineはどんどん複雑化していく。
特に、ワークフローやカスタムフィールドは、野放しに複雑に設定してしまいがちだ。
また、自分たちのチームのプロセスが、保守案件や問合せ管理、事務処理ワークフロー、サーバー資産管理、購入機器の管理などの多様な業務をカバーできるとは限らない。
むしろ、一つのRedmineですべての業務をカバーする方が無理があるのかもしれない。
Redmineインスタンスはチームの組織文化や慣習を表す: プログラマの思索
【2-1】JAXA様のRedmine運用事例では、こういう運用の複雑さに対する解決策として、「ロールのOR設定ルール」「カスタムフィールドのAND設定ルール」を提唱されている。
このやり方は、ERPのパラメータ設定のノウハウに似ている気がする。
少ないパラメータ設定で、多様な業務、多様な要件に対応するために必要な運用ルールなのだ。
JAXAのRedmine運用事例の分析~「ロール設定のORルール」と「カスタムフィールド設定のANDルール」: プログラマの思索
【2-2】以前のRedmineでは、ロール単位のアクセス権限の機能が弱いと言われていたが、随分改善されてきた。
Ver3.3では、トラッカーごとにチケット編集・参照の権限を付与する機能が追加される。
Feature #285: Tracker role-based permissioning - Redmine
アクセス権限管理の強化は、Redmineがエンタープライズ分野で利用されるに従って、重要なテーマになるだろうと思う。
【2-4】個人的には、@akahane92さんの思いと同じく、Redmineの機能をベースに、多様な業務に適応するための「ITSガイドライン」のようなものが作れるといいなと思う。
つまり、Redmineというプロジェクト管理用ERPのパラメータ設定の汎用的なノウハウをまとめてみたい。
「ロール設定のORルール」と「フィールド設定のANDルール」はもちろんその中に入るし、他にもたくさんあるはずだ。
一つのRedmineインスタンスで、大規模組織でも多様な業務にも耐えれるような運用ルールを策定できれば、Redmineの利用範囲はもっと広がるだろうと思う。
【3】「組織構造とRedmineの相互関係」については、最近色々感じるものがある。
【3-1】従来から経験していることは、トラッカーやステータスは、そのチームの文化、その組織の文化が色濃く反映されることだ。
例えば、オフショア開発チームとRedmineでやり取りしていた時、「課題」トラッカーは使いにくく「QA」トラッカーの方が使いやすい、と言われた時があった。
ワークフローは同じなのに、トラッカー名が変わるだけで、メンバーのモチベーションもかなり上がった。
逆に、障害トラッカーで「リリース済」「対応済」ステータスを使っていたら、そのステータスにアサインされた担当者は何をすれば良いのか、直感的に分からないので、チケットが放置される場合もあった。
「~済」というステータスは、タスク完了なので、自分はやらなくていいんだよね、と思ってしまうらしい。
また、メーカーのように、営業部隊・設計部隊・製造部隊が組織として分かれていると、チケットが組織をまたぐ場合に別のステータスが必要になるという場合もあった。
チケットをやり取りするボールは誰が握っているのか、をステータスで明確にしたいのだ。
すると、メーカーのような機能別組織の場合、一つの製品、一つのソフトウェアを出荷するには複数の部門が関連するために、ステータスがかなり多くなってしまい、チケットが放置される危険が高くなりやすい。
一方、SIならば、普通は一つのチームが要件定義からリリースまで担当するので、一つのトラッカーに含まれるステータスの個数はそれほど多くはないし、多くする必要性もない。
チケット駆動で回したいならば、トラッカーに含まれるステータスの個数は少ない方が回しやすいからだ。
そんな経験を振り返ると、Redmineは機能が豊富な特徴、機能が柔軟である特徴があるがために、逆に、縦割り組織の文化をそのまま持ち込んで、複雑なパラメータ設定になりがちだ。
特に最近、ISO9001やITILの運用プロセスをRedmineに乗せて運用できないか、という質問を受ける時がある。
彼らとしては、Redmineの柔軟なワークフロー機能やREST APIによるチケット情報の取得の容易さ、Redmineの展開のしやすさを生かして、ISO9001のような硬いプロセスを実現したいみたいだ。
【3-2】一方、Redmineでチケット管理し始めると、チームの雰囲気や組織文化が少しずつ変わっていくという経験もある。
たとえば、Redmineには最初のバージョンの頃から、複数プロジェクト機能があった。
この機能を使うと、ソフトウェアプロダクトラインのような複数製品の並行開発、一つのパッケージ製品を顧客ごとにカスタマイズする派生開発に適用しやすいことは、従来から知られていた。
Redmineプロジェクトの構造とConwayの法則: プログラマの思索
Conwayの法則の拡張版~運用は組織に従う、ワークフローは組織に従う: プログラマの思索
Redmineのプロジェクト間チケットコピー機能で縦割り組織のサイロ化を打破する記事のリンク: プログラマの思索
この機能を使い始めると、メンバーは縦割り組織に属している感覚よりも、複数のプロジェクトで作業している感覚になる。
つまり、組織の建前としてはピラミッド型の組織構造かもしれないが、現場のメンバーにとっては、プロジェクト型組織に属しているような雰囲気になる。
すると、自分の役割や権限が広くなるので、能力のある若手はたくさんのシステムに触れる経験を得やすく、どんどん成長していく事例をよく見かける。
また、プロジェクト型組織になると、プロジェクト内でコミュニケーションが活発化する。
一つのプロジェクト内で、一つのチケットをやり取りして完了させるまでに、色んな部署の人達と連携しなくてはいけない。
だから、自分は○○組織の一員だから、という意識よりも、○○プロジェクトの一員という意識になり、縦割り組織の雰囲気をぶち壊し、風通しの良い組織文化を形成してくれる。
【3-2】また、チケットの構造がチーム内の組織形態を規定する事例も見かける。
若手のプロジェクトリーダーからよく聞く質問は、WBSやチケットは、機能単位で作った方がいいのか、作業ベースで作った方がいいのか、という内容だ。
設計・プログラミング・テストのような単位で作業をグループ化すべきなのか、それとも、画面単位や帳票単位で作業をグループ化すべきなのか、迷うらしい。
会社の研修で教わるやり方は、設計・開発・テストのような工程単位の作業管理だ。
このやり方は、元々、製造業で規模の経済を生かすための作業管理手法であるから、ソフトウェア開発に馴染まない、と僕は常々思っている。
メーカーの組織が営業・設計・製造・品質保証の部門に縦割りになっていて、機能別組織になっているのは、設備投資を有効活用し、製品を低コストで大量生産するために、規模の経済を生かすためにそのような組織構造になっているのだ。
しかし、ソフトウェア開発の場合、人月の経験則のように、作業メンバーを増やすほどプロジェクトはどんどん遅延していくことが既に知られている。
つまり、ソフトウェア開発は規模の経済が通用しない。
むしろ、機能単位に作業を分割した方が管理しやすい。
機能単位ならば、機能の粒度を小さくすることで、小さなチーム構成にすることが可能だからだ。
WBSの作り方はプロジェクト型組織の構造を決めるという考え方はRedmineチケット管理にも通じる: プログラマの思索にあるように、工程単位のWBSと機能単位のWBSでは、PERT図の構造が全く違うし、WBSを管理しやすくするための組織構造がWBSに規定されてしまうのだ。
すなわち、チケットの構造は、プロジェクト型組織の役割分担を規定する。
チケットを階層化するほど、WF型開発っぽくなるし、チケットをバージョン単位でグループ化して小規模リリースを優先するなら、アジャイル開発っぽくなる。
開発プロセスは、逆に、組織形態を規定しまうのだが、それに気づかない人も多い。
【3-3】「ソフトウェアアーキテクチャは組織構造の影響をもろに受けてしまう」という経験則は、Conwayの経験則として既に知られている。
この考え方は、組織構造がソフトウェアアーキテクチャ、開発プロセスを規定することから、アーキテクチャやプロセスの複雑さの遠因には、ソフトウェア組織にあるということだ。
Redmineプロジェクトの構造とConwayの法則: プログラマの思索
Conwayの法則の拡張版~運用は組織に従う、ワークフローは組織に従う: プログラマの思索
一方、平鍋さんの記事で「逆コンウェイ戦略」という概念を知って、気づいたことがある。
逆コンウェイ戦略のメモ~望ましいアーキテクチャを促進するためにチームと組織構造を進化させる: プログラマの思索
「逆コンウェイ戦略」の発想は、より良いアーキテクチャに合わせて、チーム構成を作るべきというもの。
その発想を受け継ぐならば、より良いプロセスに合わせて、組織構造やチーム構成を決めてもいいのではないか。
実際、Redmineの導入によって、チームの文化や組織の文化は変わる。
その変化は良い方向性の場合が多い。
だから、積極的に、Redmineというツールの背後に隠れたプロセスを使って、縦割り組織を打破することも可能ではないだろうか。
【4】第65回 SEA関西プロセス分科会&RxTStudy #15 「チケット管理システムによるプロセス支援と今後の課題」のパネルディスカッションでは、上記のような経験や事例を元に、組織とプロセスの関係と、相互に与える影響について、パネラーや参加者の知見をまとめてみたいと思っている。
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