Redmineコミュニティに関わる動きのメモ
本日、東京でRedmine生誕10周年記念パーティが開催されたらしい。
僕は参加できなかったが、謎のフランス人コミッタJPLのショートビデオメッセージもあったらしく、JPLはイケメン、という声も上がったらしい笑。
最近のRedmineコミュニティに関するリンクと考えていることをラフなメモ。
【参考】
「Redmine 10周年を祝う会」 松江・大阪・東京で企画 | Redmine.JP Blog
Redmine生誕10周年記念パーティ - redmine.tokyo
【1】Redmine作者JPLからのメッセージの本文を読むと、彼がRedmineに誇りを持っていること、Rubyを学習するためにRedmineを書き始めて10年経つが、今もWonderfulな経験をしているよ、とのこと。
また、特にRubyを生んだ日本と、日本のRedmineコミュニティからのフィードバック、前田剛さんとまるやまさんへの感謝が述べられていた。
次への課題は、まず、Rails5への対応。
そのために、2千もの更新すべきテストケースがあること。
また、RailsのTurbolinksやActionCableを当てはめることで、RedmineのUI/UXをもっと今風に改善したい、とのこと。
Ver3.2でレスポンシブデザインの機能改善が期待されなかったら、RedmineのUIはずっとそのままだっただろう、とのこと。
そこで、JPL自身もRedmineをより良くするための幾つかのアイデアを持っていて、コミュニティとシェアしていきたい、とのこと。
JPLのメッセージ、そして、RedmineがRubyやRailsのVerUPに追随しながら10年も開発が続けられてきたこと、さらに、自動テストやテストカバレッジの充実による安定した品質を考えると、本当に偉業だと思う。
【2】世界でも、最近の日本でも、Redmineを巡る状況が少しずつ変わってきているように思う。
興味を惹くのは、ベンダーの動きだ。
Redmineを作っている人々 (3.3.0編) - ファーエンドテクノロジー株式会社によれば、Ver3.3でリリースされた機能である「+ボタン」「セキュリティ通知」はドイツの会社の開発者が提供したパッチが元になっているらしい。
(引用開始)
存在感があるのがドイツのPlanioです。
Redmineをベースにしたサービスを提供している会社です。
以下の表の通り、6人が21件のパッチを書きました。
カスタマイズしたRedmineを自社サービスとして提供しながらその一部をオープンソースコミュニティにフィードバックするというすばらしい活動をされています。
3.3.0の新機能では +ボタン や セキュリティ通知 もPlanioによるものです。
(引用終了)
Planioというドイツの会社の開発者は、Redmineにレスポンシブデザインのパッチを送ったことでも知られている。
つまり、直近のRedmineのUIや機能改善に重要な貢献を果たしている。
Feature #19097: Responsive layout for mobile devices - Redmine
自社のサービスのRedmineで改造した機能をオープンソースに提供し、それによって、Redmineの全てのユーザに恩恵が受けられた。
自社のRedmineサービスで実績があるのだから、ある程度品質も枯れているだろうし、Redmine本家もパッチ取込にさほどリスクも少なかっただろうと推測する。
【2-1】また、日本でも先日、日本人コミッタをRedmineベンダーが支援するというニュースが流れていた。
Redmineの開発者はボランティアベースで実質3人でしか開発されていない状況を考えると、コミッタへの支援は重要な出来事だと思う。
ホロンテクノロジーとアジャイルウェアのプレスリリースに当社代表取締役 前田のコメント掲載 - ファーエンドテクノロジー株式会社
PRESS RELEASE - アジャイルウェア5期目、Toshi MARUYAMA氏をフェローに迎える
【3】上記の状況が意味していることは、Redmineのユーザ数が増えてきていて、Redmineというマーケットが成長しているという事実だろう。
下記の記事では、日本でMyRedmineを使っているユーザが一部のイノベータやアーリーアダプターのような先端物好きのユーザだけでなく、一般のユーザ層にも使われている事実が示されている。
My Redmine業種別導入実績を公開します - ファーエンドテクノロジー株式会社
最近思うのは、Redmineがソフトウェア開発のタスク管理、つまりチケット駆動開発としての使い方よりも、昔のNotesの代わりのようなBPRツールとして使われる事例が多いように感じることだ。
僕は元々、チケット駆動開発をRedmineで実現することによって、アジャイル開発やソフトウェア工学の可能性を見出し、色んな実験ができることに興味を持っていた。
実際、Redmineを使えば、プロセスのデータは簡単に収集できるので、プロジェクト管理やソフトウェア工学で見出された過去の経験則を検証し、その正しさや限界を調べることが容易にできる。
しかし、Redmineを一般ユーザが使う状況が増えることによって、汎用的な帳票ワークフローシステムとして使われるようになってきていると思う。
実際、見積書や稟議書のような事務処理、インシデント管理やサポートデスクなどでもRedmineが使える。
オープンソースでありながら、Redmineほど、ワークフローや権限制御を細かく設定できるツールは珍しいし、使いこなせれば、かなり強力だ。
すると、一昔前にNotesで、BPRと称して社内の業務を紙の帳票からクラサバに置き換えていった動きと、今のRedmineの普及が重なるように見える。
普通の若い人にとって、ブラウザ上でチケットをやり取りする操作はそんなに難しくないし、慣れれば、使いやすいと思う。
また、Redmineでなくても、チケット管理ツールは、JiraやTrello、PivotalTracker、Backlogなどたくさんあるし、一度チケット管理に慣れれば、どのツールでも同じように使える。
つまり、チケット管理ツールをBPRとして運用するやり方は、自然な流れではないかと思う。
そんな特徴も、Redmineが日本人好みのツールである理由の一つではないかと思う。
Redmineが日本人好みのツールであるという仮説: プログラマの思索
【4】個人的には、Redmineのコミッタとユーザコミュニティが、Redmineの機能や使い方について、色んな可能性や事例や要望を議論しながら、より良いものを作っていく基盤が出来ればと思う。
つまり、Redmineのエコシステムを他の成功したオープンソースと同じように実現したいのだ。
たとえば、LinuxやRubyは、当初は開発者のおもちゃに過ぎず、エンタープライズでは使えないと言われていたが、今は十分に普及し、どこでも使われている。
そして、一部の熱いユーザだけでなく、一般ユーザもユーザコミュニティを形成し、LinuxやRubyを支援するベンダーも多数参入し、コミッタも生活の糧の支援を得て、より良い方向へ進化する基盤が整っている。
Redmineもいつかはそんな形になればいいなと思っている。
それから、いつか、JPLを日本に呼びたい。
その意見は、2011年に東京Redmineコミュニティが立ち上がった時のキックオフミーティングでも机上に上がった。
日本のユーザコミュニティの熱い気持ちを彼に伝えてみたい。
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