組織論の背後には経済学の概念があるという仮説
組織論の背後には経済学の概念があるという仮説について、ラフなメモ書き。
自分が理解したことを適当に書いただけ。
間違っていたら後で直す。
【0】組織の構造や成長の方向性は、人々の恣意的な意思決定よりも、資源の制約や外聞環境の制約という要因の方が大きいのではないか。
市場経済を前提とする限り、企業は営利組織として売上と利益を確保できなければ、生存理由がない。
ミクロ経済学の根本思想は「市場経済の原理を徹底すれば、世の中の取引や資源は最適化される。無駄がない」という発想。
この発想を組織論に当てはめた場合、どれくらい、組織構造や組織の成長モデルを説明できるか?
【1】チャンドラーモデル、組織は戦略に従う
【経営力強化】組織は戦略に従うのか?|コラム|株式会社 ブレインパートナー
(引用開始)
チャンドラーは企業成長を4つの階層に分類した。
チャンドラーは4段階を経て多角化した製品―市場分野ごとに事業部を作り、事業部制組織が登場した。
これら4段階をチャンドラーモデルという。
1段階:垂直統合戦略を行い、経営資源を蓄積する段階である
急速に増加した需要を満たすために行う
2段階:経営資源を能率的かつ有効に活用するための組織を作る段階
各諸資源を「組織」として有効に活用する
3段階:多角化戦略を行う新たな成長段階
成熟による発展の限界から経営資源を有益に転用する
4段階:経営資源の運用の合理化とさらなる成長のために組織を革新していく段階
(引用終了)
普通の企業は事業部制モデル。
でも、事業部制組織の中身を見ると、機能別組織で、工程別・作業別に課が分かれている場合が多い。
たとえば、大企業になるほど、たくさんの機能別組織が作られていて、組織がサイロ化され、局所最適化されて、全体最適になっていない。
一方、ベンチャー企業や中小企業は、小さな有機的チームから始まる。
しかし、じきに経営資源を効率的に配分するために、管理的な組織構造が必要になってくる。
さらに発展すれば、事業が増えるので、多角化戦略を取り、事業別組織が形成される。
おそらく、チャンドラーモデルのような組織の成長モデルは、経営資源の制約と効率的な配分の考えで発生するのだろうと思う。
ミクロ経済学のパレート最適などが使えないか。
【2】資源依存モデル
資源依存型経営戦略理論 Resource Based Theory || INVENIO LEADERSHIP INSIGHT
組織に不足している資源を獲得するため組織間関係が形成される。
資源依存そのものから回避⇒「代替的取引関係の開発」「多角化」
資源依存関係を認めつつ他組織からの影響を小さくする⇒「交渉」「包摂」「結託」「所有」
たとえば、「他の組織と「結託」し対抗⇒業界標準やカルテル⇒独占経済⇒独占禁止法」につながる。
そもそも、独占禁止法という法律は、ミクロ経済学の市場独占・寡占の理論を理由として成り立っている。
【3】取引コストモデル、機会主義的行動
取引が市場で行われた時(外注)よりも組織で行われた時(内作)の方が取引コストが少ない場合に組織間関係が形成される。
大企業は、自社内の作業をビジネス化して、子会社としてたくさん作り、垂直的なビジネスモデルを形成しやすい。
連結決算を考えると、自社内で経営資源を広く持った方が売上高を大きく見せやすいはず。
一方、中小企業は経営資源が少ないので、全ての作業や工程を自社で持つのはコスト高なので、アウトソーシングする。
いわゆる内外作問題に通じる。
取引コストモデルでよく出るのは、ミクロ経済学の「コースの定理」。
コースの定理は「取引費用がないと仮定した時、権利の配分がどうあろうと、それはパレート最適な資源配分に影響しない」。
取引費用がゼロの場合には、所有権を法がどのように割り振ろうとも、私的交渉を通じて効率的な利用が達成される。
つまり、取引には取引費用なるコストが必要であり、そのために取引費用を節約する方向で組織が編成される。
すなわち、取引はできるだけ市場経済の環境で行えば、自然に最適化されるはずという理論。
しかし、実際は、公害のような外部不経済では通用しない。
機会主義的行動とは、一定の原理や原則よりも変化する状況に応じて行動すること。
取引コストに関する「情報の非対称性」が原因で、機会主義的行動を冗長する。
たとえば、20代のスキルのある会社員はお金などを動機として転職しやすいが、40代のスキルのない会社員は会社にとってコスト高なののに、会社にしがみつくしかない。
「情報の非対称性」はミクロ経済学の「レモン市場」などにある。
情報の非対称性として、逆選択、モラルハザードがある。
たとえば、プリンシパル・エージェンシー理論は「情報の格差や利害の不一致が存在するプリンシパル(依頼人)とエージェント(代理人)との関係」。
プリンシパル・エージェンシー理論は、株主と経営者の関係でよく使われる。
【4】組織エコロジー理論(個体群生態学モデル)
個体群生態学モデル - 企業経営理論の問題 | パワーアシストロボット、医療機器のLAP 平野 淳 のブログ - 楽天ブログ
移動障壁と戦略グループとは?|E.M.ポーターの競争戦略論 | FOOLINE
ダーウィンの自然淘汰説のアナロジーの組織論。
前提として、「組織慣性がある」「環境による影響が大きい」という仮定がある。
結論は、「新」形態の組織が環境選択で残る。
例えば、ある成功した企業の組織形態を、他の多くの企業が正当性を獲得するために模倣することを通じて、組織個体群に含まれる企業の組織形態は類似する傾向がある。
つまり、ポーターの「戦略グループ」につながる。
戦略グループの形成の流れは、「成功 ⇒ 模倣 ⇒ 業界内の組織形態が類似する ⇒ 戦略グループの形成」みたいな感じ。
たとえば、清涼飲料水、ビール、お菓子、携帯電話、スマホなどの業界。
すると、ある製品分野の生産のために垂直統合を強めると、企業の生産体制や製品ラインは似通ってくる為、戦略グループが生まれやすくなる。
戦略グループに分化された業界では、参入障壁、撤退障壁よりも、移動障壁が高くなりがち。
この考えは、ミクロ経済学の「完全市場の長期均衡」で説明できるはず。
【5】ガルブレイスの情報処理モデル(情報プロセシング・モデル)
組織は、不確実性(Uncertainty)を情報処理して減らす活動を行う機構であり、必要な情報の創造及び獲得活動である。
不確実性とは、ある問題を解決するために必要な情報量と組織が保有している情報量の差である。
組織の情報処理能力は、組織および経営の中核的能力である。
結果として、組織設計の戦略は情報処理能力の強化を目的にしなければならない。
つまり、組織とは、情報処理機構ないし情報処理モデルとみなせる。
たとえば、不安定な環境下では不確実性が高いために、「専門職的な有機的管理システム」により情報処理する能力を増幅することが有効である。
一方、安定した環境下では「官僚制的な機械的管理システム」が有効である。
情報処理モデルでは、「情報処理量の削減 ⇒ スラック資源の捻出、自己充足タスクの形成」「情報処理能力の拡大 ⇒ 垂直的情報システムの強化、水平的関係の形成」の二つの対策の傾向がよく見られる。
つまり、不確実性に対処できた組織のみが、利益を取れる。
また、情報の不確実性は時間とともに解決する場合が多いので、情報処理のスピードも重要。
【6】野中の自己組織化モデル
「組織は、多様性を削減して均衡を達成するというよりも、むしろ主体的に多様性を増幅させ、既存の思考・行動様式を破壊し、新たな思考・行動様式を創造することによって進化する」。
SECIモデルとか。
【7】組織ライフサイクルモデル
チームビルディングに組織のライフサイクル理論を使う|プロジェクトマネジメント実践
(引用開始)
組織の成長には、以下の4つの段階があるという理論です。
①起業家段階
②共同体段階
③公式化段階
④精巧化段階
有期的とは言え、プロジェクトチームも組織のひとつですから、この4つの段階に準じて成長します。
(引用終了)
組織ライフサイクルモデルは、チームのライフサイクルモデルにも似ている。
他に、グレイナーの企業成長モデルもある。
グレイナーの企業成長モデルは、ベンチャー企業の成長の過程にそっくりそのまま使えると思う。
組織成長モデル「グライナー・モデル」のメモ: プログラマの思索
組織の成長過程は、組織内の資源の制約、外部環境からの制約によって、方向性が限定される。
その背後には、ミクロ経済学の諸理論で説明できるはずと思う。
【9】上記の経営理論と経済学の理論と比較検討してみると、巷で言われている経営戦略論とか、組織論の話の正当性は経済学の理論を使って説明しているのではないか、と想像する。
そうでなければ、経営戦略や組織論という理論の再現性がないから。
実際、ポーターの競争戦略や戦略グループ、コトラーの競争地位戦略のような経営戦略論は、ミクロ経済学の理論で説明できるはずと思う。
また、取引コストモデルは、情報の非対称性やコースの定理などの経済学の理論を背景として持っている。
たぶん、マーケティング理論も同様のはず。
ポーターの競争戦略理論<経営と情報(経営情報システム)<Web教材<木暮仁
競争地位戦略 - マーケティングWiki ~マーケティング用語集~
したがって、経済学の理論を背景に持つ経営戦略論や組織論は、反論に強く、理論的に頑健なのだろうと推測する。
つまり、学者の思いつきのような、一過性の説明ではなく、たくさんの具体例や堅固な理論を元に作られた経営戦略論なわけだ。
一方、経済学の理論を一通り知っておけば、ネット上に流れる経営戦略論や組織論がエセ的な話なのか、正当性のある話なのか、という見極めができるはずだ。
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