AstahのRedmine連携プラグインが公開されました
AstahのRedmine連携プラグインが公開されました。
とても使いやすいので気に入っている。
ラフなメモ書き。
ChangeVision/astah-redmine-plugin: Associating Redmine tickets to a diagram
【1】astahを使いながら、モデリングという作業に、変更管理や構成管理の概念が反映されていない点にずっと違和感があった。
その問題意識は下記に書いた。
モデルの粒度とトレーサビリティ、変更管理の問題は、モデリングツールではなくUMLそのものに真因があるのではないか: プログラマの思索
モデル間のトレーサビリティと粒度、変更管理に関するastahのあるべき姿: プログラマの思索
描いたモデルは、一度書いたらそれで終わりということはない。
頻繁な仕様変更、洗練された設計思想へ反映などの作業で、モデルはどんどん変化する。
また、モデリング作業を行っていくと、数多くのモデル間の整合性を考慮していくうちに、モデルが変化する。
さらに、モデルの粒度を考えながら、モデルをリファクタリングすることもあるだろう。
つまり、モデル間の粒度やトレーサビリティを考慮すると、モデルの変更履歴をどこかで保持したくなる。
しかし、astahにせよ、EnterpriseArchitectやRationalRoseにせよ、モデルのファイルはバイナリのため、Gitで履歴管理してもあまり有り難みがない。
また、モデルの変更箇所をノートや吹き出しで追加していくうちに、モデルが醜くなってしまう。
【2】では、上記の問題点はどうやって解決できるか?
根本的な解決方法ではないが、モデルの変更履歴はRedmineチケットへ外出しすることで、モデルの変更管理や構成管理の問題点はある程度解決できるはず、と僕は考えている。
つまり、モデルの変更履歴のように、モデルのある時点のスナップショットとなる履歴情報は、Redmineチケットで管理すべき、と考える。
そうすれば、モデルは常に最新の仕様を反映した状態で保持すれば良い。
モデルが色んな事情で変更された経緯は、Redmineチケットの内容で確認すればいい。
たとえば、Excel設計書に必ず付属する変更履歴シート、昔のJavaのJavaDocにあった@historyのようなソース変更履歴コメントは、そもそもRedmineで一括管理すべき情報だから。
【3】上記のRedmine連携プラグインでは、下記の機能を持つ。
1)astahのモデル(実際はUMLダイアグラム等)の単位で、Redmineチケットを登録・参照できる
仕組みとしては、RedmineのREST APIを使う。
2)astahのモデルとRedmineプロジェクトは1対1に対応付けられ、Redmineチケット一覧が表示される。
astahで表示されたRedmineチケット一覧では、ステータスや優先度などのチケット項目でソートできる。
3)astahの全モデルのRedmineチケット一覧も表示できる。
4)但し、astahにはRedmineチケットの基本的情報を表示するだけであり、詳細な情報はRedmine上で編集する運用になる。
Redmine上で編集した情報をastahへ同期する場合、「Sync」ボタンを押せばよい。
【3-1】Redmine連携プラグインによって、astahモデルから、モデルの変更履歴の吹き出しの情報は全てRedmineチケットへ外出しされる。
Redmineに蓄積されたモデル変更のチケット情報は、Redmineの優れたチケット集計機能でいくらでも分析できる。
たとえば、モデルのレビュー記録チケットから、レビューの効果やモデルの品質を計測してもいい。
また、モデルのアーキテクチャや要望が未決定のため保留となっている箇所は、課題チケットに外出して、未解決リストとして扱ってもいい。
あるいは、Redmineチケットはタスクと見なせるから、将来のモデル修正のToDoリストとして使ってもいい。
すなわち、astahのモデルに付属するRedmineチケットのビューは、「モデルの変更履歴」だけでなく「モデル修正のToDoリスト」だったり、「モデルの未解決の課題リスト」として扱うこともできる。
【3-2】そういう複数の観点でRedmineチケットを管理できれば、astahのモデルの作業管理が大変やりやすくなるだろう、と思う。
なぜなら、モデルは一夜で完成するものではなく、数多くの顧客要望を五月雨式に反映したり、他要件を考慮しながら洗練させていく作業のために、たくさんのToDoや課題が発生するからだ。
それらのTODOや課題を漏れなく管理していくことは、とても重要だから。
【3-3】そこで、astahのモデルのRedmineチケット一覧画面で、各項目をソートできる機能が有効に役立つ。
たとえば、ステータスでソートして、未着手・作業中のチケットを一覧の上部に表示するようにすれば、TODOリストのように扱える。
あるいは、優先度でソートして、優先度の高いチケットを画面上部に表示すれば、直近で最優先のタスクを判別できるようになる。
さらに、トラッカーでソートして、障害や課題チケットのみに注目してもいい。
実際にRedmine連携プラグインを使っていくと分かるが、モデルの変更作業の情報をチケットに起票していくと、じきに10件、50件とチケットが増えていく。
そして、完了チケットと作業中チケットがたくさん混じってしまい、管理しにくくなる。
だから、変更履歴として見たい時は、ステータスの降順でソートする一方、TODOリストとして見たい時はステータスの昇順でソートするし、課題リストとして見たい時は、トラッカーでソートしたくなるだろう。
【3-4】さらに、Redmineチケットの情報をもっと詳しく書きたいなら、astahではなく、Redmineチケットに書き込めばよいだろう。
そうすれば、Redmineの優れたチケット集計機能や全文検索機能で、欲しい情報をいくらでも集計したり検索できるようになる。
また、Wikiとリンクさせて情報を集約させることもできるだろうし、モデルのTODOリストとなるチケットを元に、Redmine上で進捗管理してもいい。
すなわち、astahではモデルそのものの要件や仕様を描くことに注力し、課題やTODOはRedmineで管理するように、区別して管理すればいい。
つまり、モデルの作業そのものの進捗管理、課題管理はRedmineで代用できるし、その方がRedmineの優れた機能を利用できるメリットがある。
但し、モデルそのものの履歴管理、つまりモデルの構成管理はRedmine単体だけでは実現できない。
モデルがどのように変化したのか、実際に見たい、という要望は、上記のプラグインでも実現されないので注意。
【3-5】astahユーザがRedmineを使っているならば、Redmine連携プラグインはたぶん使いやすいと思う。
似たようなastahのプラグインとして、TODOプラグインなどがあったけれど、TODO一覧がastahモデル単位に表示されないので、TODOが溢れると探しにくくなる弱点があった。
また、TODOをソートできない弱点もあり、TODOが多くなるとイマイチな面があった。
でも、Redmine連携プラグインで、それらの弱点は全て解決される。
【4】僕は、astahのようなモデリングツールとRedmineやTestLinkなどの開発支援ツールと外部連携することは、とても発展の余地があると考えている。
なぜなら、astahのモデルと外部の開発支援ツールが連携することで、数多くの情報を相互に参照しやすくなり、色んな使い道が出てくるからだ。
実際、Redmine連携プラグインによって、astahのモデルの変更履歴がRedmineチケットに蓄積されるだけでなく、モデリング作業の進捗管理やモデルの課題管理を行えるようになる。
また、TestLinkとastahがもし連携できれば、テストケースと要求図を相互リンクできて、要件カバレッジを出力できたり、トレーサビリティマトリクスを出力する、という機能も実現できるかもしれない。
よって、モデリング作業を開発プロセスの一部に取り込んでしまい、昨今の優れたプロセス支援ツールの機能を流用して相乗効果を得る、ということもできるのではないか。
あるいは、astahで設計したモデルに関する情報を超高速開発ツールに取り込んで、即座に開発していく、というモデル駆動開発も実現できるかもしれない。
この辺りの構想も今後まとめる。
【追記】下記の要望があがっていた。
上記のRedmine連携プラグインは、astahモデルから、変更履歴や課題一覧、ToDoリストをRedmineへ外出ししているに過ぎない。
最終的には、モデル自身の構成管理、つまりモデルの変更履歴を保持する仕組みが必要になるだろう。
つまり、モデルのライフサイクルを管理する枠組みが必要になるのではないか。
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