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2018/04/06

「小水力発電が地域を救う」の感想

佐藤知一さんのBlogで「小水力発電が地域を救う」が紹介されていたので読んでみた。
読みやすかったので簡単なメモ。

【参考】
書評:「小水力発電が地域を救う」中島大・著 : タイム・コンサルタントの日誌から

Life is beautiful: 私が事故後、脱原発派に転向した一番の理由

【1】本を読んでみて、小水力発電の技術だけでなく、小水力発電を中核とした地域経済のエコシステム、そして、超低金利が普通となった現代において資本主義の終焉が間近に語られるようになった今、今後の文明の行き先みたいなことまで妄想してしまった。

【2】P.17-18
世界的に、経済のグローバル化と、それに抵抗する動きの対立が目立つようになりました。
(中略)
私自身の意見は、世界はモザイクのように個性的な市場がたくさん存在するのが自然だということになります。

P.18
東京の生活はお金さえあればとても便利ですが、いざ物資が入らなくなったら何もできません。
分業が進むと効率が上がりますが、効率性は脆弱性と裏表の関係にあります。

震災や福島原発の事故があった時の東京、関西を思い出せば、都市の生活は非常に脆いと身を持って感じた。

【3】P.176
町育ちの人たちばかりになると、社会が脆くなります。

P.177
私は、都市は人を育てない、と考えています。
都市は競争社会です。腕に覚えのある人が集まるウィンブルドンのようなものです。

一方、人を育てるというのは、とても冗長な営みです。
多様な才能を丁寧に育てないと優秀な人材は育ちませんし、育った優秀な人材がその時代の社会に適合するとは限りません。

これも同感。
だから、グローバル化に反対する人が欧米でも日本でも多くなったような気もする。
冨山和彦さんが提唱する「グローバル経済圏、ローカル経済圏」の話(「なぜローカル経済から日本は甦るのか」)もこれに通じる。

【4】P.22
小水力発電の可能性のある場所を開発すれば、山間地は電力の面で自立できるわけで、地域にとっては十分に大きな電力だと言えるのです。

p.47
農産加工品などの市場開拓は簡単ではありません。ところが、小水力発電の電気は、FITのおかげで必ず売れるという利点があります。

P.38
小学校の存続は、地域が存続するかどうかの先行指標と言っても過言ではありません。
子育て環境の悪化で若い夫婦がいなくなるだけでなく、子どもたちの帰属意識が薄れ、高校・大学を卒業した後戻ってくる動機が弱くなるからです。

子育てが重要な理由は、子供たちが大人になって、また地元の経済を活性化させる、というエコシステムの一部であるからだろう。
だから、今の日本では少子高齢化の危機意識が高まっているわけだ。

P.66
山村の土建会社は小水力発電で生き残れ

P.67
建設業者は水力発電と相性がいい。

P.138
(村長が発言)
道路をつくる予算を使って、代わりに水力発電所をつくれば、毎年、お金が入ってくる。
そのお金はムラのために使うことのできる自由なお金だ。

本来、日本は山が多い国なので、小水力発電に向く場所は多い。
小水力発電による発電量は少ないかもしれないが、村の住民の電気を賄うことは可能だし、今は売電することで安定的に利益も得られるメリットがある。

一方、村の土建業者にとって、小水力発電の建設、修繕、復旧などの作業は自分達のノウハウをそのまま流用できるので、技術的にも相性が良い。
しかも、公共工事の変動に左右されずに、売電収入が安定的に得られるメリットもある。
そして、土建会社の経営者は、経営面でもコスト感覚の優れた人達が多いので、小水力発電のようなビジネスを上手く回すのに向いている。
また、村の土建会社の経営者は、その地域の有力者の一人の場合が多いので、地域社会の取りまとめ役にも最適だ、と言う。

この辺りの内容は、書評:「小水力発電が地域を救う」中島大・著 : タイム・コンサルタントの日誌からの記事で詳しく解説されているので分かりやすい。

【5】P.145
自分達が主体になれば、地域が長く生き残れる

しかし、過疎地域で小水力発電を実現するには、地域の人達自身がリーダーシップを発揮して、彼ら自身で運営する仕組みが必要だ。
つまり、小水力発電という中核システムを基盤として、地域経済の持続的発展を目指すように、地域内の利害関係者が団結する必要がある。

「補償金は人を幸せにしない」「オープンにすることで地域利益を確保する」などのノウハウも書かれていて面白い。

【6】P.129
水力は高いは本当か?
水力発電は太陽光や風力に比べて初期投資の金額が大きくなるからです。

P.130
そのかわり、水力発電には、太陽光や風力よりも設備の耐用年数が長いことと、年間発電量が多いことの二つの利点があります。
100年間の総費用を100年間の総発電量で割って平均コストを算出すれば、おそらく太陽光や風力と同じか、むしろ安くなるはずだと考えています。
ただし、この計算では金利を一切考慮していません。

P.130
ソフト・エネルギー・パス」で「長期割引率はゼロもしくは若干マイナスと」すべき、と書いて以来、エネルギーシステムの持続可能性の議論において、割引率をプラスで考えるか、ゼロ以下にすべきか、経済派と環境派の対立点の一つになってきました。

P.131
割引率をゼロとする立場に立てば、金利を考えない100年間の平均コスト比較に合理性があるはずです。
また、現実の話、今の超低金利は一時的な現象ではなく、これからの標準的な状況だと考えています。

P.131
そもそも、高度経済成長期のような、リスクを取らずに金利が得られるという経済状況がむしろ珍しく、イスラム金融ルールのように、リスクを取らなければ金利を取るべきではないという経済状況の方が歴史的にはむしろ普通だったのではないでしょうか。

水力発電は他の再生利用エネルギーよりもコストが高いか否か、という問題点は重要だ。
筆者の意見では、長期的な割引率をゼロ以下とみなせば、むしろ安くなるはず、という。
理由は、現在の超低金利は一過性の事象ではなく、今後の標準的な事象とみなせるから、と。

この点に関しては、僕も同感。
既に、日本だけでなく欧米でも経済成長率がかなり落ち込んでいるのは誰が見ても明らか。
そして、日本や欧米の超低金利は一過性の事象ではなく、今後も続くだろう、とたぶん誰もが心の中で感じているのではないか。

ティール組織」でも、P.491にて「経済成長率がゼロの社会では、利子を産まないかマイナス利子を生む新しいタイプの通貨に投資しなければならなくなると考えている」という一節がある。
将来の経済について深く考えている人たちは、金利がマイナスになる経済、つまり資本主義の終焉について既に色々考えているのだろう、と思う。

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