モデリング技術の習得とモデリングツールの習得は表裏一体
1ヶ月前に、関西IT勉強会で「ITアーキテクチュアのセオリー」出版記念講演に出て、データモデリングの話を聞いてきた。
その講演者から、赤俊哉さんをお手本にしている、という話があり、赤俊哉さんの書籍をいくつか読んでみて、感じたことをメモ。
【ITアーキテクチュアのセオリー】出版記念講演<第64回IT勉強宴会in新大阪> | IT勉強宴会blog
赤俊哉さんの本「SE職場の真実 どんづまりから見上げた空」という本を読んだ。
著者が派遣プログラマ、ユーザ企業の社内SE、そしてユーザ企業のCIOへ築き上げたキャリア遍歴の話がメインで、自分の経験を振り返りながら、そうだなあ、と頷いていた。
その本の中で興味を惹いたのは、業務システムのリプレースの時に、有償の設計モデリングツールXupperに出会い、データモデリングを興味を持ち、データモデリングの技術習得に努め、業務システムの設計情報をXupperのリポジトリに集約させた事で、プロジェクトが成功した、という話があった。
Xupperの製品は僕も詳しくは知らない。
しかし、SoRのようなレガシー業務システムの設計情報をDOAモデリングツールのリポジトリに集約することの意義について、色々考える所があった。
SoRのような業務システムでは、どうしても上流工程の設計技術が起点になると僕は思う。
すると、DFD・ER図・CRUD表というDOAの3種の神器のような設計資料がどうしても必要になってくる。
なぜなら、業務の流れをつかむためにDFDが必要だし、データの構造をつかむためにER図が必要だし、仕様変更の影響範囲の調査やテスト設計のためにCRUD表が必要になるからだ。
しかし、それら設計資料をExcelドキュメントで手作業で作り出すのは正直面倒だ。
そこで、例えばXupperのようなモデリングツールが威力を発揮する。
設計情報がモデリングのリポジトリに一元化されていれば、そのリポジトリから、DFD・ER図・CRUD表は最新状態で出力でき、その内容を元に設計作業を効率化できる。
特に、仕様変更の影響調査では、設計情報が三位一体となったモデリングツールがなければ、システム保守でどんどんコストが増加していき、業務システムが経営環境の変化についていけなくなってしまう。
そういう観点では、DOAをマスターする事とモデリングツールを使いこなす事は表裏一体ではないか、と思う。
つまり、データモデリングを理解して自由自在に使いこなすには、モデリングツールがあればその成長速度を速められるし、他方では、モデリングツールを使いこなしていくうちにデータモデリングの技術を習得し、その作法に慣れていく、という側面があるだろう、と思う。
そういう背景やニーズが20年以上前からあるからこそ、最近、超高速開発という分野も脚光を浴びるようになったのだろうと思う。
僕は、超高速開発とは、データモデリングツールとそこから自動生成されたソースとそのシステムをシームレスにつないだもの、と思っている。
その本質は、モデリングツールで業務システムの設計情報をリポジトリ化できたからこそ、設計資料の出力だけでなく、システムの自動生成という所まで行えるのだ、という点にあるのだろう、と思う。
そんな事を考えると、モデリング技術の習得とモデリングツールを使いこなすことは表裏一体ではないか、と改めて感じる。
僕がUMLモデリングツールastahが好きな理由の一つに、そういう考え方を持っている事がある。
丁度それは、プログラミングの習得には、そのプログラミング環境の構築と習得が含まれていることと同じような気がしている。
【追記】
9/8土にastah関西の勉強会をやります。
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