TRIZ(発明的問題解決理論)のリンク
マーケティング企画業の古典的本「アイデアの作り方」、メーカー技術者が創造的発明する時に使う手法「TRIZ(発明的問題解決理論)」に関する情報のリンク。
結論もなく、自分のアイデアのためのラフなメモ書き。
【参考1】
アイデアのつくり方(ジェームズ・ウェブ・ヤング) - Wikipedia
「アイデアの作り方」 ジェームス・W・ヤング 感想 - 人といる時にスマホを触るな
わずか100ページの薄い本。
率直な感想は、「アイデアとは、古いアイデアを新しい机においたものと同じ」みたいに連想した。
【参考2】
TRIZ(アルトシューラ) - Wikipedia
アルトシュラー『発明的創造の心理学について』(邦訳) | 産業能率大学 総合研究所
TRIZが普及していないわけ(歴史的背景) ? アイデアを出すためのコトバとイメージの使い方
【1】研修で、プロジェクトマネジメント技法の一つとしてTRIZが挙げられていた。
こんな説明だった。
「(TRIZ)とは、直訳すると発明的問題解決理論。ロシアの特許審議官が膨大な特許情報を分析して「相反する問題を同時に解決すれば発明になる」「現実の問題を一般的な問題に抽象化すれば解決策がいくらでも出る」といった発明の法則をまとめた問題解決の方法論。」
つまり、品質とコストの両立という、互いの解決策が矛盾するような課題であっても、TRIZを使えば、いくらでもアイデアが出てくるよ、という売り文句だった。
それが本当かどうかはよく知らない。
【2】でも、産業能率大学 総合研究所にあるアルトシュラーの原論文「アルトシュラー『発明的創造の心理学について』(邦訳)」を読むと、深い思索があることが何となく感じた。
【2-1】原論文PDFにある自転車の事例が面白い。
最初に発明された自転車には「伝動装置がなく、走行する時は両足で地面を蹴らなければならなかった」。
そして「前輪の軸にペダルを取り付けるという技術進化」が起きた。
次に、「ペダルによって走行速度の増加」による事故障害の課題に対し、ブレーキが発明された。
「その結果、駆動輪の直径を大きくし、これによりペダル 1 回転による自転車の進行距離を増大させるという形で、作業装置をさらに発達」したが、「駆動輪の直径をそれ以上増加させると、自転車走行の危険性が急激に高まる」課題が出てきた。
そこで、「伝動装置の変更(チェーン伝動の採用)」が発明されて、「チェーン伝動により、車輪の直径の大きさではなくて、足踏み回転数を増加させる方法で高速を得ることができるようになった」。
そして「空気入りタイヤが導入」されて、「伝動装置の新たな変更(フリーホイール機構の採用)」が行われ、現在の自転車が完成した。
【2-2】つまり、ある機能の改良は、各要素のバランスを崩すまで劇的に改良できるが、その矛盾が噴出すると、システムの全体的発展のブレーキになり、成長速度が止まる。
なぜなら、ある機能に関する課題があるが、その課題を解決すると、他の技術的課題が現れ、その矛盾は現状のやり方では解決できなくなる段階に到達するから。
しかし、その矛盾の除去が本来の意味での「発見」であり、その発見は、システムの機能の一部を根本的に変更することにつながり、その影響範囲が広いほど、他の部分にも抜本的な変更を施すことになる。
そういうストーリーであると理解した。
【2-3】TRIZの原論文を読んで、「ローバー、火星を駆ける―僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢」の一節を思い出した。
「ローバー、火星を駆ける―僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢」の感想: プログラマの思索
科学者とエンジニアの間には、宿命的な対立関係がある。
科学者の立場は、真実の探求、自然界の仕組みの探求、制約なしの研究の結果を重視する。
科学者は理想主義者。
一方、エンジニアの立場は、技術的課題の単なる解決ではなく、最も優れた方法で問題解決する。
限られた予算、開発スケジュール、納期の制約の下、「まずまずのところ」で折り合って解決する。
エンジニアはがんこな現実主義者。
つまり、エンジニアは、品質・コスト・納期のバランスという制約条件の中で、「ほどほどの品質」「ほどほどのコスト」「ほどほどの開発期間」で、最大の良い製品を生み出す。
その宿命的対立を乗り越えたら、すごく良い製品が生まれる、という話。
TRIZにも似たような雰囲気を感じる。
【2-4】但し、TRIZはソ連における膨大な特許から、そのアイデア発想方法を理論として生み出した背景があるので、そういう膨大な知識データベースがないと、本来のメリットを活かせない気もした。
課題を解決したい時、その課題に関連する技術情報が即座に収集できなければ、無い知恵をいくら絞っても、解決策は出てこないのでは、と思った。
つまり、「アイデアの作り方」と同じく、既存のアイデアを組み合わせるやり方に近い気もした。
TRIZ――10分以内に「それ、どうやって実現するか」を思いつく方法 (3/3) - ITmedia エンタープライズ
(引用開始)
筆者はTRIZの専門家から詳しいことを教えてもらう機会が幾度かあった。
TRIZを作った人々が分析した特許は非常に膨大であったが、その99%が40のパターンで表現できたと言われている。
逆に考えると「世の中にはパターンでは表現できないものが1%存在する」とも言え、人の知性のロマンチックな可能性をTRIZ創設者らが示唆しているように思えてならない。
真偽は定かではないが、筆者は少なくともこう考えている。目の前の100の課題に対して、この40個のパターンを使えばほとんど(99%)、何かしらの解決コンセプトが発案できる。
解ける問題は効率的にどんどん発案し、人間の知恵を絞るしかないこと(1%)にぜいたくに時間を使いたいものだ。
(引用終了)
【2-5】解決策をそういう組合せの問題に持ち込めるならば、その分野はソフトウェアが強い。
そういうアルゴリズムをプログラムで実装して、ひたすら組合せの結果を評価すればいい。
それは、機械学習、人工知能にも似たような匂いを感じる。
しかし、AIが全ての問題を解決できるわけではない。
たとえば、AIでも人間と同じく、過学習という罠にはまれば、そこから脱出できなくなる。
でも、量子コンピュータなら、トンネル効果を使えば、過学習から脱出できるかもしれない。
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