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2019/11/21

「英語が楽天を変えた」本の感想

「英語が楽天を変えた」本の感想をメモ。
結論のないポエム。

【参考】
「大学入試の英語テストはTOEFLに変更せよ」 楽天・三木谷社長が提言する「英語革命」(BLOGOS編集部)

最近、大学入試でTOEFLのようなグローバルなテストに変革しようとして、結局挫折した記事があった。
その背景には、どうやら楽天社長の意見もあったらしい。
そこで、「英語が楽天を変えた」本を読んでみた。

楽天は「英語公用語化」でどう変わったのか | 英語学習 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

「英語が楽天を変えた」本で興味を惹く点はいくつかある。

【1】1つ目は、英語公用化に対する反応集団が3つあり、それぞれ異なる特徴を持っていたこと。

その集団は、「日本で働き日本語を母語とする社員(言語的疎外者)」「欧米で働き英語を母語とする社員(文化的疎外者)」「アジア、アフリカなどで働く英語・日本語以外を母語とする社員(二重疎外者)」の3つ。

言語的疎外者、文化的疎外者の特徴は分かりやすいが、二重疎外者という集団も存在し、二重疎外者は積極的に英語を通じた日本文化や組織文化を素直に取り入れた、という話が面白かった。
彼らは、日本人よりも英語を習得しやすく、それによって仕事の幅が広がり、昇格のチャンスも増えるインセンティブが働いたためだろう。

【2】2つ目は、英語公用化は欧米化ではなく、日本の企業文化で統一されたこと。

文化的疎外者にとって、英語化によって、自分たちの欧米文化が日本の組織に取り込まれると期待していたが、実際はそうではなかった。
言語的疎外者が英語をマスターすることで、自分たちの日本の組織文化を世界中の支社に発信できたり、その意図を浸透させる手段を持ったことで、文化的疎外者に組織文化を押し付けることができるようになった。
楽天といえども、日本企業であるからには欧米企業とは異なり、日本企業らしい手続きの多い組織文化は多少はあったし、その文化の背景にある共通目的を社員に反映させやすくなったわけだ。

文化的疎外者にとってはありがた迷惑だったのかもしれない。
以前は、自分たちの職場では日本とは異なる欧米文化だったのに、たとえ米国の職場であっても、日本本社に統制されるようになったわけだ。

一方、言語的疎外者は自信を持って自分たちの組織文化を主張できる手段を持つインセンティブが生まれたわけだ。

【3】3つ目は、英語公用化というケース事例を統計学と組織行動学の観点で緻密に分析された手法が興味深いこと。

組織行動学では、組織内の集団は、環境に応じてどのような態度や行動を取るのか、という問題を前提として研究されていると思う。
では、その問題をどのように把握して、分析する手段があるのか?
その手法はアンケート収集とその統計処理にあるようだ。

おそらくランダム比較テストになるように、組織内の集団をセグメント別に分けて、アンケートを収集し、そこから集団の特徴を表すような変数を洗い出し、そこから仮説を導き出す。
その仮説が正しいか、新たなアンケートを集団の別のセグメントへ適用し、その反応をさらに分析していく、みたいなイメージかな、と想像した。

昨今では、コンピューティングパワーのおかげで、ABテストによるランダム比較実験がやりやすいし、膨大なデータがあっても即座に統計処理できる。
つまり、組織行動学や行動経済学のように、組織や集団の行動変数を抽出して新たな知見を見出す学問は、統計処理やコンピューティングパワーとすごく相性が良いのだろう、と思う。
そして、こういう学問の研究で得られたノウハウは、従来の古い考えをひっくり返すような、地動説のような特徴があるのだろう、と思う。
そう思うと、すごくワクワクする。

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