経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している
最近、図書館から借りている「経済セミナー」という雑誌が非常に面白い。
経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している。
10月号では、「変貌する経済学:実証革命が導く未来」の特集号が非常に面白くてためになった。
気づきをラフにメモ。
実証革命?経済学が会計学に影響を与えるもの|上野 雄史|note
「予想よりも早かった」ノーベル経済学賞(會田 剛史) - アジア経済研究所
伊藤先生は、「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」の本でも知っていた。
伊藤先生いわく、日本の高校生が踏み絵を踏まされる「文理選択」は廃止すべきだ、と言う。
高校生の頃、数学が好きだったが、化学や生物は興味が持てず、むしろ社会科学に興味があった。
だから、文理のどちらに行くか悩んだ、という言葉は共感する。
僕も、数学は好きだったし、日本史や世界史や地理はとても好きだったが、物理や化学は正直好きになれなかった。
結局理系に進んだけれど、今でも、歴史の本は好きだからよく借りている。
数学と社会科学の興味の両方を活かせるのが経済学。
経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している。
特集記事で曰く。
現代の経済学は、ルーカス批判、信頼性革命、構造推定の3つによって、実証革命が起こり、経済学が公共政策やビジネスに非常に役立つようになった。
僕の理解では、ルーカス批判は、モデルは説明変数とその変数の変化率の2つで考えるべきだ、というもの。
「経済数学の直観的方法 マクロ経済学編 」にも書いてあった。
信頼性革命は、ランダム比較実験で意思決定の結果の良否を説明付けられる、ということかな。
構造推定は、モデルにおける2つの変数の因果関係を明確に説明付ける、ということかな。
相関関係と因果関係は全く違う。
相関関係は、2つの変数に何らかの関係がある事実しかない。
因果関係は、要因→結果という一方向のロジックまで特定する。
このレベルまで経済学が理論付けられるとしたら、すごいことだ。
伊藤先生は学生指導で、既存研究の仮定を疑って検証する発想を持て、とよく言うらしい。
そう、この発想は、自然科学でも文系の学問でも同じだな、と思う。
伊藤先生の博士論文では、消費者が実際に見ているのは限界価格なのか、平均価格なのかを電力市場のデータで検証したらしい。
これはまさに、電力会社のように固定費が高く寡占市場になりやすい市場において、社会厚生を最大にするには、平均費用価格なのか、限界費用価格なのか、という政策論争につながる。
伊藤先生の研究スタイルは、まずは社会にとって自分にとっても大きな問いを立てて、その問題が経済理論でどのように整理できて、どんなデータ分析手法で検証できるか、を考えていく。
この話を読んで、研究者として王道のスタイルだなあ、と思った。
偉大な学者は、とてもシンプルかつ根源的な問題を持っていて、その問題を解くために、色んな方向性から考えたり、レベルを落としたり、寄り道したりして、その過程で数多くの研究成果を残すが、常に根本的な問題を持ち続けている。
経済学の面白い点は、IT革命でコンピューティングパワーが強化されて、大量データの収集と膨大な計算が簡単になったことだろう。
つまり、経済現象を分析するツールが揃ってきた点が、最近面白い点になるのだろう。
そういう背景を踏まえて、信頼性革命や構造推定などの考え方が組み合わさって、経済現象を理論化できたり、政府の政策やビジネスの意思決定に役立てる応用もできているのだろう。
実際、補助金や公共投資はどんな政策であれば効果的なのか、とか、どのようなインセンティブを市場に与えると社会全体として経済効果が波及されるのか、など色んな事例に対して、経済学を適用することができる。
個人的には、経済学の発想をソフトウェア工学に適用したら、どんなことができるのだろうか、と妄想している。
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