増刷記念「ここはウォーターフォール市、アジャイル町」の裏話の感想~日本人はフレームワークが苦手でいつも振り回されている
増刷記念「ここはウォーターフォール市、アジャイル町」-執筆者と編集者と書籍の表側と裏話と- - DevLOVE | DoorkeeperをZoomで聞いていた。
沢渡さんの発言がすごく面白くて、色々連想させられた。
ラフなメモ書き。
【1】日本人はフレームワークがすごく苦手。
ISO9001から、CMMI、DX、SDGsに至るまで、こういうバズワードに振り回されている。
スクラムも良いアジャイル開発のフレームワークだが、日本人はアジャイル開発は理解できるのに、アジャイル開発のフレームワークを使いこなせているとは到底言えない。
その理由は、フレームワークは問題事象を抽象化した枠組みなので、抽象的思考のまま具体的に考えようとして、本来の目的を忘れてしまうのではないだろうか。
本来は、ISO認証が目的ではなく、品質改善が目的のはずなのに、本来の問題意識を忘れてしまい、いつの間にか手段が目的に変わってしまう。
こういうバズワードが会社の提案書に出てきたら、日本では要注意。
書いた本人も、その提案書を受け入れる経営者もたぶん、フレームワークを使いこなせないので、すぐに目的や問題意識を忘れて、道具を磨くことばかりに注力してしまう。
akipiiさんはTwitterを使っています 「#devlove 日本人はフレームワークに使われてしまうのは、手段が目的化する弱点があるせいだほう。ISO認証、CMMU、スクラム、そしてDX、SDGsまで、全て、日本人は振り回されてる。」 / Twitter
「手段を目的化するのは日本人の病」という記事もあったな。
手段を目的化するのは日本人の病: プログラマの思索
スクラムも開発プロセスのフレームワーク。
フレームワークだからこそ、全てのルールを受け入れることで、こんな問題にはこういうルールや道具が使えるのか、という新しい気づきを毎回得ている。それが面白いのだ、という講演者の言葉に惹かれた。
フレームワークは抽象化した枠組みなので、あらゆる具体的な事象から抽出した本質を確実に捉えている。
一つのアイデアや理論をいろんな観点で徹底的に分析し、そこから、これが本質なのだ、という一つのメッセージを取り出す。
欧米人の自然科学の本、社会科学の本、歴史学の本を読んでいると、こういう分析が上手いなあ、と思う時がある。
膨大な具体例を述べながら、一つのメッセージを一貫して補強するように論理的に組み立てて説明するのが上手い。
【2】アジャイル、という言葉は現場で使わないでいい。
問題解決にアジャイルの技法を駆使して使って解決して、最後に、今までやったのがアジャイルというものなんだよ、といえばいい。
この言葉にはしびれた。
ちょうど、好きな女の子に手取り足取り尽くして支援して、信頼関係を築いて、最後に振り向いてもらって、最後に好きだったんだよ、という感じ。
違うか。
【3】問題解決に名前をつけよう。
そうすれば、名前のついた問題に対して、周囲の人達と同じ景色を見ることができる。
その言葉に共感できれば、問題解決のファンを増やしていける。
問題解決ファンがどんどん増えれば、勇気づけられるし、問題解決できるリソースも選択肢も増えるメリットがある。
【4】執筆には、まず目次を書こう。
目次が書けるならば、その目次から、ストーリーが思い浮かぶはず。
こんな物語にしたいんだ、という思いが出てくる。
そして、決め台詞を入れたい。
この物語には、このフレーズを使いたい、このメッセージを伝えたい、みたいな。
このフレーズを使いたい、という時は、伝えたい内容にフォーカスしている。
このメッセージを伝えたい、と言う時は、そのメッセージに自分の気持が含まれている。
akipiiさんはTwitterを使っています 「執筆で大事なのは、目次を書く事。目次が書ければ、ストーリーに発展できる。自分の体験や知見をそこに埋め込める。 #devlove」 / Twitter
【5】チケット駆動のいい所は、一体感が出くること。
チケットをキャッチボールみたいにやり取りするうちに、相手はどんな反応をしてくるのか、待つようになってくる。
akipiiさんはTwitterを使っています 「#devlove チケットでやり取りすると一体感が出てくるよね、と。なるほど。」 / Twitter
一体感が出てくるとは、組織論の言葉では、バーナードの組織成立の3要件である「組織の共通目的」が誕生していることだ。
つまり、そこには、単なる人という物体の集まりではなく、心理的関係を持つ組織集団が暗黙的に生まれたわけだ。
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