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2020/11/16

情報はハイパーリンクでつながることで一つの知識体系になる~Scrapbox情報整理術の感想~Scrapboxはカード型のビジュアルWiki

Scrapbox情報整理術の本を読んで、こういうWikiの機能をRedmineにも取りれられられたらいいのにな、と思った。
ラフなメモ書き。

Scrapboxの使い方 - Scrapbox ヘルプ

「Scrapboxはカード型のビジュアルWiki」が言いたいメッセージ。
単なるWikiではなく、入力のしやすさ、使いやすさが埋め込まれている。

Scrapboxの特徴は2つある。
一つは、Tabキーを押しながら、箇条書きで書くのが基本なこと。

文章の基本はやっぱり、アウトラインプロセッサと同じ。
Wordのアウトライン機能のように、詳細なメッセージはツリー構造にする。

また、英語で習うパラグラフ・ライティングと同じ。
Topic sentence、Supporting sentence、Concluding sentenceで1個のメッセージをつくる。

パラグラフライティング 英語レポートの書き方・例文 トピックセンテンスとは? | 脱中級! 37歳からの英語学習

Scrapboxがいいのは、Web上のWikiなのでスマホやPCで気軽に書けるし、リファクタリングしやすいことだ。
思いついたことをどんどん書いておいて、後で読み直す時に書き直せばいい。

Wikiは「永遠の未完成」でいいのだ。

もう一つは、[]でページリンク、#でハッシュタグを付けながら、リンク先の未作成のページをどんどん作っていくこと。
たとえば、「[Redmineのチケット管理]」みたいにいったん書いて、後続の文章をどんどん書いていく。
すると、「[Redmineのチケット管理]」のリンクができるが、その先は未作成のWikiなので空っぽ。
後で気づいた時に、そこに、チケット管理の気づきを書き込めばいい。
つまり、リンクしながら文章をリファクタリングしている。

リンク先の空っぽのWikiは用語集みたいなもの。
そこに何かを埋めようと思って書き始めると、自分だけの用語集が出来上がる。

僕は、Scrapboxのリンク機能が上手いなと思った。
ページタイトルは自然にWiki新規ページになるが、タグにもなりうる。
つまり、「#Redmineのチケット管理」と同じなのだ。
思いつきを故意にリンクできるわけだ。

こういう用語集をたくさん作り出すことで、Scrapbox上のページは、ネットワーク構造でフラットな構造として構造化される。

元来、情報整理術は、梅棹 忠夫さんの知的生産の技術以来、日本人の文化人が連綿と引き継いできた。
平成に入る前までは、京大型カードみたいにアナログのカードに穴を開けて、図書館の本の目録を作ったり、研究者が自分のテーマをアナログのカード型データベースで集めて整理したりしていた。
彼らは、集めた情報を畳の上に広げたり、並べたり、ばらすことで、色んな発想を生み出していた。

では、情報整理術はどんな歴史で発展してきたのか?

Scrapbox情報整理術では、情報整理術にはバージョンが3つある。
Ver1.0は、情報はツリー構造で整理する。
情報の粒度で整理できるが、見通しは悪いし、色んな情報をひと目で見にくい。

Ver2.0は、時系列順に整理する。
重要な情報は、LIFO、スタックみたいな構造になっているものだ。
実際、頻繁に取り出される情報ほど上澄みにあり、使われない情報は深海に沈んでいく。
しかし、やはり情報から発想するのが難しい。

Ver3.0は、ハイパーリンクで情報を紐付けること。
これは、Webができたからこそ実現した仕組みだ。
GoogleはPagerankによって、ハイパーリンクの参照度合いで、情報の信用度をランキングすることまでやり遂げた。
ScrapboxやWikiは、情報のハイパーリンク化の産物だ。

では、ハイパーリンクの情報整理術はどんなメリットをもたらしたのか?

一つは、知識はネットワークであること。
情報がハイパーリンクでリンクされることで、一つの情報の連想先が明示される。
それらをたどっていくうちに、色んな情報を手に入れることができる。
つまり、情報はハイパーリンクでつながることで、一つの知識体系になる。

Scrapboxでは、ページリンクやハッシュタグでハイパーリンクが簡単に作れる点が一番のメリットだ。
Scrapboxはハイパーリンクをタグ書きする面倒さをなくしてくれる。

2つ目は、知識は再編され続けること。
Wikiページで書かれた内容は、いつでも編集できる。
間違っていれば直せばいいし、情報が古ければ更新すればいい。
あるいは、別の情報と関係することが分かれば、別のハイパーリンクを付ければいい。
つまり、ハイパーリンクでつながった知識は、常に更新され続ける。

知識はネットワーク構造だからこそ実現できる性質だ。
これは、知識は追加されず固定的な概念である、という一時代前の考え方に対する、一つのパラダイムシフト。

3つ目は、隠れた知識がある事。
哲学者のポランニーは「人は言葉にできるよりも多くの事を知ることができる」と言ったらしいが、まさに、Wikiページタイトルにある一つの言葉は、Wikiページの内容で説明されたたくさんの情報を表している。
同様に、哲学者ソシュールの「記号(言語、知識)とは概念(シニフィエ)と名前(シニフィアン)が表裏一体となって結びついたもの」と同じ意味合いだなと思う。

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Scrapbox情報整理術では、ここからさらに、野中郁次郎先生のSECIモデルに話を膨らませている。
知識という形式知と暗黙知はお互いに関連しあっていて、そこからさらに色んな情報を想起させてくれるわけだ。


知識は形式知で死ぬわけではない。
人間は一つの言葉の背後に数多くの暗黙知を持っていて、その時代背景やその一個人の価値観がさらに情報を膨らませていく。
昔使っていた言葉が、時代を経るごとにどんどん変わっていくのと同じ。

Redmineでも、こういう設計思想をWikiの機能に実現できないだろうか?
Wikiのリンクは、Wikiの新規ページタイトルになるのはよいが、どうように、ハッシュタグの機能も追加して欲しい。
そうすれば、自分たちで入力したナレッジのWikiは、自分たちだけの用語集として実現される。
それこそが本来のナレッジ資産であるはず。

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