小説分析ツールyWriterの機能を元にストーリーの構造や考え方を解説するpart1
小説分析ツールyWriterの機能を元にストーリーの構造や考え方を解説してみる。
yWriterは米国製ツールなので、yWriterの機能はすべて英語。
それを変に日本語訳しているので分かりにくい。
「アウトラインから書く小説再入門」「ストラクチャーから書く小説再入門」を読んでみて、yWriterの機能はこれらの本のこの概念に相当するのだろう、という当たりが付いた。
いくつか理解できたことをラフに書く。
【参考】
なぜユーザーストーリーによる要件定義にピンとこなかったのか: プログラマの思索
小説分析ツールyWriterの機能を元にストーリーの構造や考え方を解説するpart2: プログラマの思索
アウトラインから書く小説再入門 ? なぜ、自由に書いたら行き詰まるのか? | 動く出版社 フィルムアート社
ストラクチャーから書く小説再入門 | 動く出版社 フィルムアート社
【要約・感想】アウトラインから書く小説再入門 - K.M.ワイランド、シカ・マッケンジー - スキモノガタリ
【要約・感想】ストラクチャーから書く小説再入門 - K.M.ワイランド、シカ・マッケンジー - スキモノガタリ
ブレンミコミコポ yWriter for Androidの使い方
【1】yWriterとは小説分析ツール
たぶん、同人誌を書きたい若手執筆者が、このツールを使って小説を書いたら、小説をプロットの集合体として上手く構造化できるのではないか。
既存の小説を構造分析する時には、非常に役立つ。
たとえば、青空文庫にあるグリム童話、走れメロス、シャーロック・ホームズの冒険などの小説を実際にyWriterに読み込んで、バラバラに分解して一覧化してみると、こういう仕掛けがあるのね、とか分かると思う。
一方、実際に使ってみると、ゼロから書き始めるのは正直しんどい。
エディタではないから。
また、日本人の解説ページは唯一つしかない。
yWriter自身も日本語化が不十分で英語メニューもチラホラ残る。
yWriterのUIは正直使いにくいと思う。
たとえば、D&Dで順序変更とかできない。
なお、yWriterを使いこなせたからと言って、良い小説が書けるわけでもない。
青空文庫のシンデレラを落として、yWriterに実際に落とし込んで分析してみた。
以下、yWriterのクラス図、システムユースケース図、画面キャプチャを貼っておく。
【2】yWriterの基本概念は、章・場面(Scene)・場所(location)・人物(Character)・アイテム(Item)の5つ
yWriterの基本概念で、最初は、場所(location)・人物(Character)・アイテム(Item)の3つだ。
ロールプレイングゲームを想像すればいい。
ヒーローまたはヒロインがいて、彼の象徴となる武器またはドレスがあり、ヒーローが戦う場所がある。
yWriterには、まず、人物・場所・アイテムを初期マスタとして登録する。
yWriterには、XMLで一括登録したほうが速い。
次に、場面(シーン)は、人物・場所・アイテムを組み合わせて、ヒーローが事件に巻き込まれて行動し戦う場面が生まれる。
この場面(シーン)が、「アウトラインから書く小説再入門」「ストラクチャーから書く小説再入門」で言われるプロットになる。
それぞれの場面は、英雄伝説の流れ、つまり、ストーリーの各要素になる。
具体的には、状況説明 → 事件や問題の発生 → 盛り上げ → 危機→クライマックス → 落とし込み (オチ) → エンディング の7つのぞれぞれが場面、あるいはもっと分解したサブプロットになる。
【3】yWriterで最重要な概念は、場面(Scene)だ。
だから、場面の画面には数多くの入力項目がある。
【3-1】yWriterの場面に、場面の種類「行動」「反応」がある。
「アウトラインから書く小説再入門」「ストラクチャーから書く小説再入門」では、行動とは、人物の葛藤、対立を見せる場面である。
ヒーローが悪役と戦って倒すような、ハラハラ・ドキドキする場面だ。
一方、反応とは、人物の心理描写を見せる場面であり、行動した結果をヒーローが振り返るときの心理描写になる。
反応の場面があるから、物語に深みが出てくる。
yWriterのビューには場面一覧があり、「行動」の場面はVP Scensにカウントされる。
一方、「反応」の場面はVP Scens(Unused)にカウントされる。人物がViewPointに設定されても、VPScensに含まれない。
つまり、「行動」の場面数と「反応」の場面数を見ることで、物語のバランスを調整することができる。
すなわち、派手なアクションシーンと、回想やふりかえりなどの心理描写シーについて、配分や配置場所を考える為の分析に役立つ。
【3-2】yWriterの「場面の種類」を切り替えると、3種類のテキスト項目が入れ替わる。
「行動」に対応する項目は、目的・対立・結果。
「反応」に対応する項目は、反応内容・ジレンマ・選択。
場面で重要と思われる機能は、「場面の種類」ごとで決まる項目だと思う
「行動」に対応する項目で、目的・対立・結果の意味は下記と推測している。
「アウトラインから書く小説再入門」「ストラクチャーから書く小説再入門」では、目的は動機、欲望、ゴール。
つまり、その場面の存在意義、果たすべきゴールを設定する。
対立は葛藤。
「アウトラインから書く小説再入門」「ストラクチャーから書く小説再入門」では、では、「葛藤がなければ人物とプロットは存在しない」と言い切っている。
つまり、小説家は、脳みその中で、ヒーローにわざと苦難や葛藤を与えて、ヒーローが簡単に成長しないようにわざと苛め抜く。
ヒーローはクライマックスでその葛藤を乗り越える、という流れを作る。
結果は葛藤に対処した結末。
ヒーローが葛藤を乗り越えれば成功結果だが、もちろん悪い結果もありうる。
「アウトラインから書く小説再入門」「ストラクチャーから書く小説再入門」では、わざと「災難」とも呼ぶ。
なぜなら、ヒーローがいつも成功していては物語が単調で面白くない。
むしろ、ヒーローにとって悪い結果となる災難がたくさんある方が、読者もハラハラ・ドキドキしやすい。
「反応」に対応する項目で、反応内容・ジレンマ・選択も似たような意味だろう。
つまり、登場人物が行動した反応内容をふりかえり、そこで心理的ジレンマが生じて、その結果、登場人物は何からの選択・決断を行う。
すなわち、場面に目的・対立・結果、反応内容・ジレンマ・選択を一言添えることで、場面の概要を端的に表す。
【3-3】yWriterの場面に、状態という下記のような区分がある。
状態は、書きかけの場面の原稿の執筆状態を表す。
アウトライン
下書き
第1回推敲
第2回推敲
完了
最初は、ラフなスケッチであるアウトラインから始まり、下書きを作り、何度も推敲して最終的に完了ステータスになる。
この「状態」区分は、yWriterの執筆ビューの進捗管理で使われる仕組みになっている。
場面に書かれた原稿の単語数、文字数はカウントできるので、状態・文字数を元に、時系列で日々の進捗を把握できるわけだ。
【4】yWriterの肝はストーリーボードにあり
人物・場所・アイテムをマスタ登録し、場面に人物・場所・アイテムを組み合わせて1千語の文章を書き、章にまとめる操作を行ったら、ようやくストーリーボードが使えるようになる。
ストーリーボードとは、横軸に章や時系列、縦軸に人物をおいた表であり、表に場面をプロットしてくれる。
ストーリーボードを見れば、タイムライン(時系列)に従って、場面(シーン)が配置される。
つまり、物語の情報が可視化される。
ストーリーボードを使うために、人・場面・アイテムを事前入力して下準備していたわけだ。
yWriterの場面には、視点(View Point:VP)という項目があり、その場面は誰の視点なのか、を設定でき、視点になった人物ごとに、ストーリーボードのタイムラインに場面が配置される仕様になっている。
ストーリーボードの場面をクリックすると、場面ダイアログがポップアップされる。
場面の「絵」に挿絵やアクション画像を貼り付けておけば、画面下部にある前へ・次へのボタンで、スライドショーのようにストーリーを流すことができる。
yWriterの場面の挿絵を元に、紙芝居のように実現できるわけだ。
yWriterの場面には音声も登録する機能があるようなので、本来は、パワポの自動スライドショーのような機能であれば、ちょっとした動画みたいに機能改善できると思う。
【5】「アウトラインから書く小説再入門」「ストラクチャーから書く小説再入門」では、小説を1冊書き上げるのに、7万語が必要で、1シーン1000語とすれば、シーンは70個ぐらい書く計算、と言っていた。
つまり、場面を70個用意して、英雄伝説の構造に併せて、場面を時系列に並べれば、1冊の小説が出来上がるわけだ。
場面は高々70個ぐらいなら、そう大した量では無い気がするが、物語のテーマの整合性、ヒーローや悪役の言動の整合性などを考えると、組み合わせが増えるだけ難しくなる。
それら場面は章ごとにまとめられて、さらに、章をまとめたものが最終的な物語というプロジェクトになる。
残りは次回に続く。
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