本を書く時の心構え
結城さんが本を書く時の心構えを公開していたのでメモ。
【参考】
次に書く本を考えているときのこと(思い出の日記)|結城浩
(引用開始)
でも、次に書く本を考えているときは、モードがずいぶん違います。
自分の心をとにかく広く広く広げる。遠くの地平線のその向こうまで見るような気持ちで、自分の四方を見渡す。
自分の両手がまるで大きな大きなコンパスになったような心持ちで、ぐるーりと巨大な円を描く。
「よーし、ここまでは届くかなあ。いや、もっと行けないかな?」などと考えつつ。
自分が、現在の段階で、その領域の境界部分を詳しく知っているかどうかはあまり考えない。
でも、数ヶ月の後に、その境界付近にある「とっても面白いところ」に接近できるかの見込みは立てる。
……私が次に書く本を考えているときには、そんなことをイメージしているように思います。
書き始める時点では知らなくてもよいけれど、書き終えた時点ではかなり詳しくなっているはず……という微妙な案配を見極めるのは難しい。
つまり、「自分がすでに知っていて何も考えなくても書ける」という難しさの本だと、私は書いていてつまらなく感じる。
それよりも「調べつつ・考えつつ・謎解きしつつ書かなくちゃ」という難しさの本がよい。
(引用終了)
僕は、本を書くということは、「今ここにいる自分」の知識と経験をフル動員して書くものだと思っていた。
僕は、全ての書物は、私小説だと思っていたから。
なぜなら、何かを書いて本として公開する、という意味は、自分がどこまで理解して、今まで誰も知らなかったことを発見したから世の中に広く知らしめたい、と思っていたから。
たとえば、自分の理解度が浅かったり、経験が少なければ、書物の内容はとても浅薄なものになりがちだ。
よって、書き始める時点で、内容のほとんどは自分が抑えていて、コントロールできなければならない、と思っていた。
たとえば、戦前の日本の小説家が書いたスタイルである私小説は、小説家自身の生活をベースに書いていたから、彼らのインプットが非常に少ないので中身はとてもつまらないと思っていた。
一方、結城さんの意見では、「最終的に本を書き上がる時点の自分」の知識と経験を書けばいい、というスタンスだ。
つまり、書き始める時点では、中身はまだ曖昧模糊でもいい。
書き終えた時点で、骨格も中身もプロットも全て完成していればいい。
よって、書き始める時点では、調べて考えてストーリーが決まったな、という範囲を予測できればいいし、その予測した範囲が自分の手の内に収まる程度であるか見積もりすればいい。
つまり、調べながらあれこれ考えたり、空想したりする余裕がある。
謎解きする楽しさの余地を残している。
書き始めた時点のストーリーが、謎解きするうちに、書き終えた時点では全く違うストーリーで完成度が仕上がっている、みたいなイメージになるのだろう。
今度書く機会があれば、こういう発想を使ってみたい。
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