第20回東京Redmine勉強会の感想 #redmineT
本日の第20回東京Redmine勉強会の感想をメモ。
Redmineを思いもつかない利用シーンで使われる事例ばかりで、久しぶりに刺激を受けた。
【オンライン開催】第20回redmine.tokyo勉強会 - connpass
2021/5/22 第20回勉強会 - redmine.tokyo #redmineT - Togetter
【1】@g_maedaさんの講演で、Redmineは細かな機能改善だけでなく、セキュリティ強化にも注力している印象を持った。
たとえば、2要素認証、通知メールのドメインの制限など。
OSSとはいえ、セキュリティホールがあると企業の基幹業務では使えないが、Redmineは世のトレンドの追随して、セキュリティのパッチもいち早く当てて対応しているのは信頼が持てる。
また、メール送受信のEndToEndでデータを暗号化通信するMIMEプラグインを使った事例もあった。
つまり、SMTPやPOP3という、今となっては相当古いプロトコルであっても、暗号化通信で機能強化することで、Redmineの通知メールを安全に取り扱うこともできる。
UIの使いやすさも重要だが、セキュリティ機能の強化でユーザが安全に使える安心感をもたらすことも重要だから。
【2】Backlog x Redmine対談では、プロジェクトマネージャに必要とされる能力や役割が、コロナ時代やリモートワークによって急激に変化した印象を持った。
【3】もう一つは、チケット管理に至った結果までの道のりが、各発表者ごとに全く違っていたことも興味深かった。
たとえば、Googleスプレッドシートの情報をRedmineに集約する。
たとえば、チャットや描画ツールでラフな議論をした内容をタスクや課題としてBacklogに落とし込む。
たとえば、工場の現場でExcelのタスク管理をExcelライクなUIにお化粧してRedmineに載せる。
たとえば、全社のワークフローシステムは既にあるが、一つの事業部内の事務処理フローはRedmineに一元化して、全ての申請承認フローを載せた。
たとえば、コロナ感染サイトをRedmineで作った。
たとえば、人や店の地理情報をGoogleMapのAPIを使ってチケット情報に載せた、とか。
たとえば、RPAを使って、テストケースをRedmineに書いて、テストを実行し、テスト結果をExcelに吐き出して、それをチケットに添付して、チケットを更新する一連の作業を自動化する、とか。
とにかくいろんな発想、モチベーションを元に、チケット管理ツールを使いこなそうとしている。
【4】だから、「なぜ、Redmineを使おうと思ったのか?」という理由を講演者に聞きたくなる。
昌。さんはTwitterを使っています 「#redmineT だからなぜこれをRedmineでやろうと思うのw」 / Twitter
akipiiさんはTwitterを使っています 「#redmineT Redmineは、改革者を、何にでも解決できそうなツールに惑わせるのです。理由はないのですw」 / Twitter
【5】Redmineがもたらす組織面の効果は、はっきりとあると思う。
たとえば、Redmine利用者がシステムの機能やUIに目が肥えてしまい、社内のシステム保守担当者に厳しく要求する場合も増えた、という話もあった。
たとえば、工場の現場ではベテランが経験を元にノウハウを伝承するが、若手はツールにすぐに慣れるので、逆に若手からベテランにRedmineの使い方を教え合う、という相互作用が生まれた、とか。
たとえば、Redmineの予実管理の機能を使って、見積もり能力を鍛えることができるよ、というメッセージ、とか。
【6】グループディスカッションで話をしながら、プロジェクトマネージャに必要な能力は何だろうか?と考えていた。
僕は、一つは見積もり能力、もう一つはリスク対応力、と考えている。
akipiiさんはTwitterを使っています 「見積もりスキルのギプスとしてのRedmine。マネージャの能力の大半は「見積もり」能力と思っている。 #redmineT」 / Twitter
僕の数少ない経験上、プロジェクトマネージャの仕事の大半は計画づくりだ。
実際、PMBOKでもプロジェクト計画フェーズだけで、PMBOK本の半分を占めている。
スクラムやアジャイル開発でも、緻密で精細な計画で確定した計画ではないが、チームの開発の羅針盤としての計画は必ず作る。
その計画づくりに必要な能力は、見積もり力とリスク対応力。
これくらいの作業工数がかかる、これくらいの開発規模になる、という予測がなければ計画は作れない。
もちろん、要件定義前の企画フェーズでは、見積もりの精度は低いが、見積もりに必要な要素を探し出そうとすることで、システムのあるべき姿を描いていく。
最初は見当外れに近い仮説かもしれないが、イテレーションを経るごとに、段々と骨格が定まっていき、あるべき姿は明確化されていくので、見積もり精度も後になるほど高くなる。
アジャイル開発では、検査と適応により、フィードバックを重視するので、ソフトウェア開発にも学習による経験曲線効果を活かすことがきると思う。
また、プロジェクトのリスクがどこにあるのか、をいち早く検知することも大事。
マネージャは船の船頭みたいなもので、プロジェクトは一度動き出すと統制を取るのは難しいが、何とか、前進方向を保とうとする。
岩場にぶつかったり、天候異変で思わぬ方向に行きそうになったり、予測しきれない場面もがあるが、そういう場面をあらかじめリスクとしてイメージできるようにしたい。
リスクを全て洗い出すことは難しいが、リスクを拾っていき、そのリスクを自身で保持するのか、別の人に転嫁するのか、リスクの事後対応策や予防策を準備するのか、をイメージしながら、進めていく。
とはいえ、実際は難しいとは思う。
特に、内製開発チームのように、全てのリソースがマネージャの手の内にあればコントロールしやすいが、ステークホルダーが多く、複数ベンダーに開発を委託している案件であれば、複雑なパズルを解くような感覚になる。
【7】Redmineの面白さは、Redmineというツールがたくさんの可能性を秘めているだけでなく、Redmineを使って問題解決する人たちがこういうコミュニティに集まって議論できること。
コロナ感染サイトのように、Redmineをこんな所に使う発想、なんて誰が予想できただろうか?
実際にサイト運営者の方にお話を聞いたら、すごい悲壮感を持っているわけでもなく、なにか作ってみたかった、という気持ちから実現された、とのこと。
仕事はソフトウェア開発に直接関係しないのです、と謙遜されていたが、PythonのPandasでデータをパースしたり、Python-Remdine APIでRedmineにデータを取り込んだり、5種類以上のプラグインを駆使してUIをカスタマイズしたり、本当にいろんな技術を試されているのは、すごい。
自分が持っているアイデアやモチベーションを元に、即座にアイデアを実現できるツールの一つとして、Redmineがある。
僕自身も改めて、モチベーションをもらった感じ。
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