デジタル庁が解くべき課題とITエンジニアの役割の勉強会の感想~CTOの役割とは何ですか?
GaaS Study #1 ー平井大臣に聞く、デジタル庁が解くべき課題とITエンジニアの役割 - connpassにオンラインで聞いていた。
平井大臣のインタビューは、初めてまともに聞いたけど、Moving Agile, Scaling Fastという言葉がまさか政治家から聞けるとは思ってなかった。
デジタル庁への意気込みはかなり本気だ、と理解した。
ラフなメモ。
【1】デジタル庁のトップである大臣にはキレがあって、デジタル庁に来て欲しいエンジニアは、100年に1度の変革の時に運命を感じた人です、という言葉には驚いた。
平井大臣いわく。
デジタル庁がなぜ必要なのか。
今の行き詰まった日本に危機感を持っている。
日本の課題は、生産性を上げる、成長力を再生する、社会課題を解決すること。
これら課題を解決するために、デジタル庁が必要と考えた。
霞が関で一番の問題は、縦割り行政。
仕事のやり方として、コミュニケーションが悪い。
省庁のシステムもバラバラで、つながっていない。
フラットなコミュニケーションもできていない。
ベースレジストリーとして国民にサービスする時に、IDは必須。
システムはサプライサイドの観点で作られていた。
eTax、マイナポータルみたいに、どれも使いづらい。
思考停止するのではなく、利用者観点で、UI/UX重視でアーキテクチャを見直したい。
あらゆるシステムを作り直していく。
デジタル庁が国や自治体のシステムに物申し、最終的には、システムを作るな、という勧告権も発揮することもある。
データを繋がる状態にして、データ連携するデザインを設計していく。
国は年間8千億円もIT予算があるのに、ほとんどが維持費用ばかり。
日本の民間もDXにもできていないが、日本は政府が主導して、DXを推進していく。
インタビューの回答は本当によく考えられている
システム開発を中止する勧告権は、スクラムの言うSprint Cancelみたいなように感じたから、よく考えられている。
日本の社会問題の解決手段にITを用いる、という発言からその強い意志は感じた。
たぶん、僕は、世の中のテレビとかSNSに汚染されて、政府のデジタル化に悲観的になっていたのかもしれない。
デジタル庁の人員はわずか500名。
そのうち、他省庁の役人400人で、民間から100人だけ。
でも、これから変えていく、と。
デジタル庁ができることによって、霞が関そのものも、変革が必要だ、と感じているのだろう。
【2】後半の経産省若手と民間CTOのディスカッションもとても興味深かった。
その中で、最も耳に残った言葉は、経産省の女性が発言した「CTOの役割って何でしょうか?」という言葉だった。
端的に言えば、霞が関におけるデジタル化の問題点は、全てこの言葉に集約されている、と思う。
経産省の女性が発言した背景はたくさんある。
霞が関でも、今までのやり方では駄目だ、と理解している人も多い。
霞が関の役人はITの専門家ではないから、アプリ1つも作れないし、システムの要件定義もできないから、システムの発注はベンダーに丸投げせざるを得ない。
そこに問題があるのは分かっている。
だから、デジタル庁を準備している我々役人も、ITスタートアップ企業のエンジニアと触れることで、世の中の流れであるアジャイル開発、SaaSのような開発スタイルに変えていかないといけない、と分かってきている。
ITの専門家でないから、民間のエンジニアに色々教わりながら、また政府の中身も説明しながら、地道に進めている。
しかし、デジタル庁が今後何を目指すのか、というBig Pictureは、我々役人もわからない。
どのようにBig Pictureを描いていくのか、誰がそういうBig Pictureを描いていくのか、分からない、と。
エンジニアの人も言っていたが、それがまさにCTOの役割。
広木さんは、CTOとは、技術と経営の橋渡しをする人と言ってたし、CTOとは、システムのアーキテクチャに合わせてソフトウェア開発の組織をデザインする人、とも言っていた。
キーワードは、いくつかある。
一つは、コンウェイの法則。
アーキテクチャは組織に従う。
たぶん、政府の組織ががんじがらめで硬い構造なので、アーキテクチャは縦割り組織で分断されてしまい、システムも柔軟性がなく、タコツボみたいになっているわけだ。
よって、政府主導のソフトウェア開発へ変えていくには、アーキテクチャを定めて、そのアーキテクチャに合うような組織体制を作っていくべきだろう。
議論の中では、大手ベンダーだけでなく、ITスタートアップ、オープンソースコミュニティとも連携したい、という発言があったが、その辺りも上手くリソースを利用すべきなのだろう。
組織文化を変えていきたい、と経産省の若手の人は言っていた。
その人は、とてもよく考えられている、と思う。
しかし、僕は、「文化は組織構造に従う」とも思っている。
「大規模スクラム Large-Scale Scrum(LeSS)」には、「文化は組織構造に従う」というメッセージが語られている。
良い組織構造に人がいれば、自然に良い組織文化を生み出す。
つまり、組織における人の立ち振舞や言動は、その組織の構造というシステムが生み出したのであって、個人に原因があるわけではない。
たぶん、縦割り組織が、組織の中の人たちの行動を硬直化させるような組織文化を生み出している。
だから、組織文化を変えていくには、少しずつであっても、組織構造を変えていくしか無いだろう。
他のキーワードは、スクラムだろう。
政府の関係者はITの専門家ではない。
結局、システムの発注を政府がコントロールするには、政府側にプロジェクトマネージャのような役割がいる。
そして、プロダクトオーナーのような役割や内製開発のチームが最終的に必要になる。
政府のシステムはリリースしたらおしまいではなく、日本人の1.2億人がお客様であり利用者なのだから、リリースした後にフィードバックをもらいながら、少しずつでも改善していく、という開発スタイルに変えていくべき。
そんな事を思うと、デジタル庁にはCTOの役割の人がたぶん今は欠落しているのかもしれない。
だから、CTOを担うべき人を民間のエンジニアから募集しているわけだ。
実際、デジタル庁のジョブディスクリプションを見ると、職種が非常によく考えられていると感じた。
デジタル庁で応募中のアイデンティティアーキテクトは昔のDAと同じ役割か?: プログラマの思索
経産省の女性からも、エンジニアが働きやすい職場環境はどんなものなのか、教えて欲しい、という発言もあった。
エンジニアから聞いたら、高性能なPCは分かったが、まさか、座り心地の良い椅子が必要、とは思っても見なかった、と。
だから、他にもそういう話があるなら、知らせて欲しい、と。
デジタル庁がやるべき仕事はあまりにもたくさんありすぎて、たくさんの課題も山積している。
しかし、エンジニア観点で見れば、今の日本の諸問題の解決には、ITエンジニアの活躍が鍵を握っていると感じた。
実際、台湾では超優秀なIT大臣が就任以来、社会の雰囲気を一変させた。
同様なことは日本でも可能なはず。
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ITエンジニアが、社会変革の鍵を持っているわけだ。
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