「世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書」の概念図
「世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書」の本を読んだ。
自分の理解を深めるために概念図を書いたのでメモしておく。
ラフなメモ。
世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書 ~グローバルなチャレンジを成功させるOSの作り方:書籍案内|技術評論社
【1】「世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書」で気づきがあった点は、プロジェクトの立ち上げ・計画フェーズが最重要であることだと思う。
日本企業では誰が最終責任者なのか分からない場面が多々あるが、「世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書」のシナリオでは、プロジェクトマネージャすら不在の場面がある点も驚きだった。
【2】「世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書」の一節に、ソフトウェア企業のSEが、「SIerでは、プログラマ→SE→シニアSE→プロジェクトマネージャのようなキャリアが多いです」と話す部分がある。
僕の経験上、シニアSE→プロジェクトマネージャの断絶は大きいし、仕事内容も大きく変わる。
100人月以上の案件のプロジェクトマネージャの仕事では、もはやPJの細部の作業まで見ていない。
プログラミングや設計書の作成などの実務にタッチしないし、実作業の進捗管理すら、各サブチームのサブリーダーに任せている。
では、プロジェクトマネージャは何をやっているのか?
彼らの仕事の中身を見ると、ひたすらプロジェクトの計画書、見積書、報告書の作成とそれら書類を利害関係者に説明する会議に出ているだけだ。
顧客への説明はもちろん、インフラ基盤や開発、製品端末などを委託したベンダへの説明がほとんどだ。
その会議のための報告書を作成するために、社内の法務部、購買部、部門長、他部門の関係部署、場合によっては役員と交渉している。
第三者が見ると、プロジェクトマネージャは報告書作成マシーンに見える。
その作業だけで手一杯なのだ。
プログラミングや設計が楽しい人から見れば、そういう作業が楽しいのかなと思う時もある。
ひたすらドキュメントを作っているだけだからだ。
【3】一方で、プロジェクトマネージャのレベルになると会社の中では中間管理職に相当するので、それなりの役職を持ち権限と責任を持つ。
すると、会社内ではそれなりのパワーを発揮できる醍醐味もある。
案件に必要なリソースを自由に使えるからだ。
プロジェクトマネージャはコミュニケーションが重要、とよく言われるが、僕はその言葉はあまり本質的ではないと思う。
直接的に言えば、組織から与えられた権力を正当に行使できるし、むしろ、その権力を案件の達成のためにどんどん使って、部下はもちろん、社内の他の部署、社内の経営層、お客様まで巻き込むことだと思う。
だから、政治家みたいに、権力行使が好きな人の方が向いているという気はする。
しかし、たとえば、IT企業であれば、単に役職さえ与えられればプロジェクトマネージャとしてやれるわけではない。
技術力は当然必要だし、PMBOKに代表されるようなプロジェクト管理技法は一通り知っておく必要がある。
その他に、PJの原価や利益などに関する財務会計の知識、請負・準委任契約や知的財産などの法務の知識、部下をコントロールしたりやる気を起こさせるような人事手法やリーダーシップなども当然要求される。
単純に知識さえあればOKというわけではない。
「世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書」を読むと、改めて、IT業界以外のプロジェクトマネージャも別の観点で苦労しているんだな、とか、IT業界では当たり前でも他の業界では当たり前でないんだな、とか、気付きも多かった。
この辺りはまたまとめてみたい。
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