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2022/03/06

ククログさんの「Redmineを使った技術サポートサービスの運用効率改善事例」がとても役立つ

RedmineJapanで講演されたククログさんの「Redmineを使った技術サポートサービスの運用効率改善事例」がとても役立つと思ったのでメモ。

【参考】
Redmineを使った技術サポートサービスの運用効率改善事例 #RedmineJapan - 2022-03-04 - ククログ

Redmineをサポートデスク管理に使う時に、いくつかの問題点を自社開発したプラグインで解決した事例。
とても参考になる。

【1】Redmineでヘルプデスクを扱うアイデアは、10年以上前から、@g_maedaさんが試されていたし、僕もそれに触発されて色々アイデアを考えていた。

Redmine 4.2で作るヘルプデスク向け問い合わせ受付・管理システム

Redmineを使ったヘルプデスクシステムでサポート業務を効率化

Redmineによるwebサポート窓口の実装と運用

Redmineによるメール対応管理の運用事例

メールからRedmineのチケットを自動登録する時の注意点: プログラマの思索

【告知】「Redmineの運用パターン集~私に聞くな、チケットシステムに聞け」を講演します: プログラマの思索

Redmineの最新機能でサポートデスク管理をより効率よく使う運用方法のアイデア: プログラマの思索

本来、顧客からの問い合わせ管理というヘルプデスクは、いわゆるSoEの観点では非常に重要な業務になっている。
顧客満足度を維持していくには、製品やサービスを売り切り型ビジネスではもはや意味がなく、購入後にいかに顧客の不満を吸い取って対応したり、事前に顧客の不満を解決するなど、事前事後の対策が必要だ。

その場合、顧客ごとに問い合わせ情報を管理して、過去の履歴を見れるようにして、オペレータが即座に対応できる体制を作りたい。
Redmineはチケット管理機能が強力なので、問い合わせメールをチケットに取り込むことさえできれば、メールの履歴はチケットのコメントに対応付けることで、一つのスレッドにまとめることができる。
チケットに情報が蓄積できれば、強力なチケット集計機能により、問い合わせ内容を分類したり、問い合わせ工数を集計して、顧客へ月次報告する元ネタに使うこともできる。
普通は実績ベースの作業工数を報告して、検収してもらって費用を回収する場合が多いはずだ。
だからこそ、顧客の問い合わせ管理をRedmineで集約して管理することは、ナレッジを蓄積したい目的だけでなく、月次検収をスムーズに行うために必要なツールになりうるはずだ。

【2】しかし、Redmineのデフォルトの機能では、問い合わせ管理のかゆい点に届かない場合も多い。

では、Redmineを使った技術サポートサービスの運用効率改善事例 #RedmineJapan - 2022-03-04 - ククログにどんな新しい観点、問題意識があったのだろうか?

【2-1】サポートデスクでは、顧客からの問い合わせメールに対し、やり取りしながら対応する必要がある。
Redmineのデフォルト機能でも、rakeコマンドでメールをチケット登録できるが、問い合わせメールをチケットに登録したとしても、メールタイトルの揺れ、チケットの更新ミス、メール内容の反映漏れなどが発生しがち。

そこで、ClearCode Inc. / Redmine plugin email importer ・ GitLabを使う。
問い合わせ専用メールアドレスを各顧客専用に発行しておき、宛先メールアドレスに対応する顧客用のプロジェクトにチケットを自動起票する運用が可能になるので、起票済みの問い合わせに関するメールのやり取りを既存のチケットへのノート注記として自動的に追記できる。

【2-2】顧客によっては「その顧客専用の問い合わせ用メールアドレス」が発行されていない場合や、別のアドレス宛に問い合わせメールを送信されていたりする時は、Thunderbirdからメールを元にRedmineのチケットを発行・更新できるようにする。
メールから手動でRedmineチケットと対応付けたい時に便利だと思う。

RedThunderMineBird Plus - Redmine連携+ :: Thunderbird向けアドオン

【2-3】問い合わせに対して過去の回答を参照する必要がある場面は多い。
その時に、Redmineの全文検索プラグインを使う。
これにより、Redmineのデフォルトの検索機能よりも遥かに強力に検索できるから、Redmineに蓄積されたDBが事実上ナレッジDBとして扱える。

Redmineで高速に全文検索する方法 - 2016-04-11 - ククログ

全文検索プラグインにより、チケットに添付されたPDFやWord文書なども検索対象にできるので、RedmineDBも添付ファイルも全て検索対象になる。
つまり、実際の運用ではデータの整合性に神経質になるよりも、どんどんチケットに書き込んだり、ファイルをチケットに添付すればいいと思う。

【2-4】サポートデスク管理では、顧客単位にRedmineプロジェクトを割り当てる運用が多いだろう。
顧客ごとにチケット管理したいし、顧客ごとにナレッジを蓄積したいから、プロジェクト単位で分割したくなる。
すると、プロジェクト概要に顧客の基本情報を書いておくと便利。
しかし、実際の運用では、チケットで問い合わせ対応している時に、概要タブをワンクリックの作業をやって顧客が使うシステム環境、利用者情報などの情報を見る操作が一手間かかる。

そこで、ClearCode Inc. / redmine-plugin-descriptions-sidebar ・ GitLabを使って、チケットの一覧や個別表示の画面のサイドバーに「概要」の内容を埋め込み表示させる。
これにより、「画面を切り替える」という一手間なしに顧客情報を即座に参照できる。
こういうちょっとした機能が作業の効率化を進ませてくれる。

【2-5】サポートデスクの管理では、毎月の作業報告を顧客に送って、検収してもらって月次費用をいただくという契約が多いだろう。
すると、顧客単位のRedmineプロジェクトに、問合せチケットは蓄積されているので、チケット一覧からそのまま出せば良い。
そこで、重要な情報は、問い合わせチケットごとに記録された問い合わせ情報と実績工数だ。

しかし、Redmineのデフォルトの工数出力CSVはあるが、そこからExcelマクロに取り込んで、顧客向けの毎月の実績報告を作るのは面倒だ。
そこで、ClearCode Inc. / redmine-plugin-work-report-exporter ・ GitLabを使って、作業実績のExcel報告をワンクリックで出力できるようにする。

【3】改めてククログさんの資料を読み直すと、Redmineの素の機能をあまりカスタマイズせず、ヘルプデスクの機能を強化している点が素晴らしいと思う。

本来、ヘルプデスク管理の機能をRedmineに追加していけば、最終的にはRedmineはCRMと同じになると思う。
特に、アウトバウンドメールやインバウンドメールのような機能がRedmineにも欲しくなる。

しかし、Redmineをカスタマイズしすぎると、Redmineのバージョンアップに追随できなくなるデメリットが出てくる。
だから、Redmineの素の機能をあまりカスタマイズせず、ヘルプデスク管理機能を強化できるように、Redmineバージョンアップに追随できるように機能強化を図るという綱渡りのような技術が要求される。
そういう観点から見ても面白いなと思った。

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