組織を芯からアジャイルにする対談の感想~今のアジャイルは先カンブリア時代なので何でもいい、アジャイル警察はいらない
組織を芯からアジャイルにする対談で、平鍋さんが話されていた。
感想をラフなメモ。
【参考】
平鍋健児 ? 市谷聡啓 ?組織を芯からアジャイルにする対談? - シン・アジャイル | Doorkeeper
本日のグラレコいただきました! pic.twitter.com/C2nh8MDDaY
— Kenji Hiranabe (@hiranabe) August 4, 2022
認定スクラムプロダクトオーナー研修の感想: プログラマの思索
平鍋さんの穏やかな口調のお話を聞いていると、そうだよねとうなずくし、勇気づけられた点もあった。
1990年代、2000年代は、プロセスの時代。
仕様に対して、いかに仕様どおりに正しく作るか、品質を担保するか、が問題だった。
そのために、ソフトウェア工場、オブジェクト指向設計、要求工学、ソフトウェア工学などがたくさん出てきた。
そして、アジャイルが出てきて、今までのアプローチは違うのでは、と。
開発者の中でこねくり回すのではなく、顧客と対話したり、市場と対話してシステムを作り上げる。
2010年頃から、リーンスタートアップが出てきたのもその流れではないか、と。
今となっては、アジャイルも日本では普通に認識されるようになってきた。
今の日本では、アジャイルは先カンブリア時代みたいに、たくさんの人達がこれがアジャイルだ、とたくさん実践して公開してきている。
そんな中で、これが本当のアジャイルだ、と言う必要はないと思う。
アジャイル警察はいらない。
もちろん、自分のポジションや意見として、アジャイルはこうだというものはあるけれど、それで対立を煽るような議論はしない。
最近は議論をやめてます、と。
平鍋さんの話を聞いて、何となく救われたような気もした。
僕だけが感じているだけに過ぎないかもしれないが、最近のアジャイルの風潮として、自分はアジャイルをやってますと名乗るには、アジャイル開発の経験だけでなく、スクラムの認定資格を取っているか、認定スクラム資格を持つアジャイルコーチの指導があるのが条件なような気がしていたから。
カジュアルに、アジャイルをやってます、みたいなことが言えない気がしていたから。
顧客とオンサイトで超高速開発ツールを使ってすぐにデモして見せてアジャイルにやってます、みたいな場面があったりして、それは違うのでは、という違和感を感じていたから。
一方、スクラムの研修を受けると、内容は確かによく考えられているし、参考になる概念もすごく多い。
このフレームワークでプロセスの諸問題が解決されるのでは、と思えたりする。
1990年代から2000年代にかけて、たくさんのアジャイルの流派が生まれてきたけれど、2020年代の現在では、それらアジャイルの考え方、プロセスはスクラムへ収斂されていく過程ではないかと思ったりもした。
しかし、平鍋さんの話を聞けば、今のアジャイルは先カンブリア時代なので何でもいい、アジャイル警察はいらない。
そう思えば、そこまで神経質にならなくてもいいし、自分で経験して理解できたことがあれば、それを普通に表現して、自分なりに解釈してもいい。
他にも気になる話があった。
平鍋さんいわく、市谷さんの書籍は、熱い気持ちや勢いで書いている所があっていいね、と。
自分が思いついたアイデアには旬があり、今ここで書かなければいつ書くのか、みたいなタイミングがある。
特にIT業界の本はそういう傾向がある。
こういうことに気づいて考えたから、今書きたい、という熱いモチベーションがあるうちに一気に書くべき。
平鍋さんが共著で書いた本「アジャイル開発とスクラム~顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント」も、今書かなくてどうするんだ、という熱い気持ちで書いた、と。
自分も、年末には書きたい本の目次は壁に貼っておいて、そこから書きはじめる時がある、と。
平鍋さんいわく、市谷さんが提唱した言葉「越境」「向き直り」もいいね、と。
市谷さんはネーミングが上手い。
気づいたアイデアに名前付けしてネーミングすることは重要だ。
平鍋さんがプロジェクトファシリテーションでレトロスペクティブを「ふりかえり」という言葉で概念化したが、過去を振り返るだけでなく未来にも目を向けていることを強調できなかった。
だから天野さんと議論した後で、小野小町の見返り美人もそうでしょ、後ろに顔は向いているけれど、足の方向は前向きだから、とフォローしたんだよ、と。
確かに、何かすごいことを思いついた時、そのアイデアを別の言葉でネーミングすることにより、新しい価値や意味をもたらすことができる。
そういう体験を僕も感じた。
その体験はやると病みつきになる感じ。
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