UMTPモデリングフォーラムのパネル討論の感想
先週11/24に行われたUMTPモデリングフォーラムのパネル討論だけを聞いた。
ラフな感想をメモ。
【参考】
MF2022プログラム - UMTP 特定非営利活動法人UMLモデリング推進協議会
30、50、100人の壁の正体|山本 正喜 / Chatwork CEO|note
データモデリングの立場の中山さん、渡辺さんに対し、ドメイン駆動設計の増田さん、スクラムの原田さんという割りと立場や意見も異なる人達の討論だった。
話は色々あったが、その中で気になった点は2つある。
1つは、少人数のベンチャー企業から大人数の大企業へ進化する時にどんな壁があるのか?
スパン・オブ・コントロールの原則通り、1人の社長が統率できる人数はせいぜい5~7人まで。
そこから20名、50名、100名、300名と増えるごとに、ピラミッドのような階層構造を持つ組織になっていく。
すると、必ずその会社特有の業務システムが必要になってくる。
興味深かったのは、30名未満の少人数ベンチャー企業が、従業員数よりも多い個数のSaaSを運用している会社があるよ、という話。
おそらく、10名未満の少人数ベンチャー企業であれば、自社だけに作り込んだ業務システムは不要であり、SaaSを導入するだけで十分やっていけるだろう。
しかし、事業や業務がどんどん拡大していき、従業員も増えるが、それ以上に業務が複雑化して、その業務を支えるSaaSを次々に導入して運用してしまった。
しかし、SaaSにインポートするデータは、各事務員がExcelで作りこんで準備して取り込んで修正する作業を行っている、と。
これは、いわゆる「人間バッチ」と同じですね、と。
「人間バッチ」と揶揄する理由は、本来は事業や業務を回すための業務システムを独自に作って自動化する必要があるのに、それをさぼって、事務員が労力をかけて業務データをExcelで作り込んでSaaSに流し込むという手作業をこなっているからだろう。
結局、今はどんな企業であれ、税務会計だけでなく、事業や業務を回すためのシステムも必要になっているわけだ。
そんな状況ではデータモデリングがとても威力を発揮すると思う。
なぜならば、業務を回すための仕組みを分析するには、業務フローだけでなく、事務員が作り込んでいるExcelデータを抽象化したデータモデルが必要になってくるからだ。
そのデータモデルさえきちんと分析できれば、業務フローも画面もバッチも帳票もほぼ決まってしまう。
業務分析とデータモデリングは表裏一体と思う。
もう一つは、データモデリングが業務分析、ビジネスモデルの分析でとても有用なのに、なぜその技術が普及せず、軽んじられているのか?
パネラーの方も色々話されていたが、僕は本当の原因が他にあるような気がした。
単にIT技術者や事務員にデータモデリングの知識が足りないから、だけではないだろう。
データモデリングを習得するモチベーションがそもそもないことに真因があるだろう。
特に昨今のアジャイル開発に興味を持つ人であれば、古臭いデータモデリングよりもドメイン駆動設計の方に惹かれるだろう。
実際、増田さんが主催されるドメイン駆動設計の勉強会にはたくさんの開発者が集まるのに、データモデリングの勉強会はあまり開催されていないし、開催されたとしても正直あまり人は集まらない。
それはなぜなのか?
その理由は僕もわからない。
このテーマは今後も考えてみたい。
【追記】
@sakabaさんからこんなコメントを頂いた。
ベンチャー企業では売上重視のビジネスモデルなのでSoEのようなWebサービスのシステム開発が中心になる。
一方、大企業になって安定してくると、社内の業務を安定して回す基幹系システム(SoR)が重要な役割を占めてくる。
つまり、ベンチャー企業では、社内の業務システムが必要になる状況になるまでは、基幹系システムは作らないし、作る必要がないと認識しているのだと理解した。
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