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2023/06/10

「ゲームをテストする バグのないゲームを支える知識と手法」の感想

「ゲームをテストする バグのないゲームを支える知識と手法」を読んだ。
JSTQB FoundationLevelを取得した後に読んだので、ソフトウェアテストの基本を抑えていて、かつ、ゲーム業界特有の考え方や組織、技術に関する話があって面白かった。
ラフな感想をメモ書き。

【1】僕は業務系システム開発しか経験がないので、ゲーム業界のことは知らない。
「ゲームをテストする バグのないゲームを支える知識と手法」を読むと、ゲーム業界特有の特徴がいくつかあると感じた。

業務系システム開発では、機能の網羅性、性能要件やセキュリティ要件などを踏まえた品質担保を重視する。
決められた要件があって、その要件に基づいた機能の網羅性の品質を担保することをすごく重視する。
つまり、当たり前品質の確保にかなり重点を置くように思える。

一方、ゲーム業界の品質は単に機能が網羅されていることが重要視されているわけではない。
UIや面白さなどの魅力的品質がかなり重視される。
だからゲームでバッグのように、開発中のゲームをプレイしてバグを探すように、ユーザが楽しめるプレイを中心に見る。
そこには機能の担保ももちろんあるがUIや楽しさもかなり重視しているように思える。
この辺りは業務系システムがBtoBビジネスに対し、ゲームソフトがBtoCビジネスであることから生じている事情もあるだろう。

しかし、ゲームソフトのソフトウェアテスト専門会社が出現し、品質向上や品質の可視化を目的として目標とする品質を定め、専門的な技術を使ってその品質レベルに到達するために必要なテストを計画したり設計するようになってきたという。
つまり、ゲームソフトでも品質管理や品質保証という考え方がビジネスとして必要になってきたわけだ。

【2】「ゲームをテストする バグのないゲームを支える知識と手法」では、JSTQBのソフトウェアテスト体系に基づき、ソフトウェアテスト7原則、ソフトウェアテストの専門体制、テストの種類、テストの活動、ソフトウェアテストの技術が紹介されている。
ゲーム業界特有のゲームでバッグの話は面白い。
一方で、ゲーム業界に限らず、JSTQBのソフトウェアテスト体系に基づいて内容が紹介されているので、その知識があれば、より理解しやすくなるだろうと思う。

たとえば、テストの体制には、テストマネージャ、テストリーダー、テスト担当者ごとに役割がある。
テストの種類(テストレベル)には、機能テスト、非機能テスト、探索的テストなど各種テストがある。
テスト活動には、テスト計画→テスト分析→テスト設計→テスト実装、テスト管理などがある。
この辺りはJSTQBの話と全く同じ。
換言すれば、こういうソフトウェアテストの専門知識を持ってゲームソフトのテストを専門的に実施しているならば、かなり組織的にテストをやっているわけなので、品質管理や品質保証もかなりレベルが高いのではないかと思う。

JSTQBのテストプロセスの概念モデルを描いてみた: プログラマの思索

【3】ゲーム業界のテスターのキャリアマップは興味深かった。

管理系・技術系のキャリアに分かれている。
管理系キャリアは、テストマネージャやテストリーダー。
技術系のキャリアは、テスターから始まり、テスト設計者、自動化エンジニア、ゴッドハンドデバッガー。
この観点は一般的なプログラマやSEのキャリアに似ている。

【301】個人的に興味を引いたのは自動化エンジニア。
彼の役割はテスト自動化ツールを活用してプログラムを実装して自動テストを実現する。
Pythonの利用が多いらしい。
また、昨今はAIを活用したテスト自動化技術が注目されているらしい。
mablとかもそうなのかなと思う。

アジャイルチームのためのインテリジェントなテスト自動化ソリューション | mabl

テスト自動化が今後重要な役割を持つだろうと直感する。
ソフトウェアテストはどうしても手動テストや手動デバッグが多く、人海戦術になりがち。
そういう部分をプログラムそのもので自動化すれば品質が担保されるし、回帰テストによりデグレードも防げるメリットがあるのは誰もが理解する。
一方、テスト自動化は技術の難易度が高いし、やみくもにテスト自動化してもコスト削減効果がさほど得られない話もよく聞く。

テスト自動化の8原則という概念も初めて知った。
この辺りも色んなノウハウがあると思うので調べてみる。

テスト自動化研究会 - テスト自動化の8原則

テスト自動化の8原則について解説

【4】テストエンジニアの年収が記載されていたのも目を引いた。
一般アルバイトなら時給1072円、テストリーダーなら時給1172円。
年収は225万~400万円程度。
テストマネージャなら月給30万~50万レベルとのこと。
今はインフレなのでこれよりも高いだろうが、まだまだ低い気がした。
ソフトウェアテストの専門性が認知されれば、今後も上がっていくのだろうと思う。

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