ソフトウェア工学の根本問題から最近のソフトウェア設計を考えてみる
ソフトウェア工学の根本問題は何なのだろうか?
僕は、ソフトウェアをいかに部品化して疎結合な構造とし、お互いの相互作用でいかに協調動作する仕組みを作るか、だと思う。
以下、直感的な思考を書き記しておく。
ソフトウェアの歴史をたどれば、構造化プログラミングからオブジェクト指向プログラミングへ発展した経緯を見ると、ソフトウェアの構造とソフトウェアを開発する仕組みをいかに透明化し、コントロールしやすくするか、に力点をおいているように思える。
@sakaba37さんから言われてはっと気づいたことは、ソフトウェアは密結合になりやすいこと。
トランザクションスクリプトのように、ちょっとしたロジックの処理を何も考えずに実装すると、密結合なプログラムになり、スパゲッティになりやすい。
そして、ソフトウェアを開発するプロセスも、ソフトウェアを開発する組織も、ソフトウェア構造を反映してしまうために、密結合なプロセス、密結合な組織になりやすい。
今、クラウドを基盤としたマイクロサービス設計が色々試されている。
マイクロサービス設計では、処理層とデータ層をまとめた一つのサービスを独立した単位とし、それらを協調動作する仕組みを作ろうとする。
しかし、今までのソフトウェアの歴史から類推すると、いかにソフトウェアを疎結合な構造にするか、いかにソフトウェアを管理するプロセスを透明化しコントロールしやすくするか、という根本問題から離れられていないように思える。
実際、マイクロサービスが独立した単位であっても、複数のサービスが協調動作させる仕組みをいかに安定して作るか、API設計や補償トランザクションなど、色々試行錯誤している。
「ソフトウェアアーキテクチャ・ハードパーツ ―分散アーキテクチャのためのトレードオフ分析」を読めば、マイクロサービスをいかに安定して設計するか、を試行錯誤していることが分かる。
また、全てのマイクロサービスを横断して管理する仕組みとしてサービスメッシュという概念が導入されているが、それもサービスの耐障害性や可用性を担保するための監視サービス群のようなものだ。
ちょうど、Ciscoのネットワーク機器からなるネットワーク構造をSDN化したときに、データ層とコントロール層に分けて、APIを使ってコントロールしようとする仕組みと同じように思える。
他方、ソフトウェア開発の組織も今はスクラムをベースとしたアイデアに基づき、少人数のスクラムチームで開発するのが、特にマイクロサービス開発では相性がいい。
マイクロサービスでは、データ層も処理層も持つので、開発チームが必要なソフトウェア部品を全てコントロールできるからだ。
また、マイクロサービス同士のやり取りは、スクラムチームが協調動作する仕組みに置き換えられる。
実際、スクラムチームでは、プロダクトバックログというインプットとインクリメントとして付加価値を順次リリースするアウトプットが契約になるが、その中のプロセスは部外者は口出しできない。
つまり、スクラムチームは、まるで1つのソフトウェア部品のように中身はブラックボックス化されており、インプットとアウトプットというインターフェイスが保証されている仕組みと思っていい。
すなわち、スクラムチームという開発組織も、疎結合なソフトウェア部品と同様にみなせる。
そんなことを考えると、僕はクラウドやマイクロサービス設計の経験がないけれど、今までのソフトウェア開発の歴史を踏まえた根本問題から、マイクロサービス設計やその開発プロセスでは、過去の根本問題をどのように解決しようとしているのか、という観点で考えていた。
そして、その考え方から類推されるボトルネックは、昔の技術から現代のアーキテクチャに変わったとしても、症状として現れる事象が変わっただけであって、その本質は変わっていないはずだと思っている。
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