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2024/04/14

物理学の基本思想とは何なのか

最近、物理学の書籍を図書館からかなりの数を借りて読んでみた。
物理初心者の感想をラフなメモ書き。

【参考】
物理学を攻略するためのマップ: プログラマの思索

経済数学の直観的方法の感想: プログラマの思索

数学や物理は背景にある思想を知らなければ理解できない: プログラマの思索

量子革命がコンピュータ革命を引き起こした: プログラマの思索

熱力学や電磁気学の設計思想: プログラマの思索

物理学の設計思想には、いくつかの基本的設計があると思う。

【1】1つ目は、物理学では、数式の意味を解釈することが大切であること。
その数式で、物理的現象や物理量を説明できるか?
ゼロから学ぶ相対性理論」に出てくる。

ローレンツ変換と読むがアインシュタイン方程式と呼ばないのはなぜか?
ローレンツもアインシュタインも同じ数式を導いているが、アインシュタインはエーテルなんて存在せず、速度が絶対速度ではなく2つの座標系の相対速度であることを見抜いた。
ローレンツもアインシュタインも同じ数式であるローレンツ変換を扱っているが、物理的解釈が徹底的に異なる。
そこにアインシュタインの独創性が現れている。

よくわかる電磁気学」の通り、マクスウェルの方程式でも、変位電流に気づいた経緯でも、数式の不整合だけでなく、物理的にも磁場が何らかの電流を放出しているはずだ、という考え方があった。
シュレディンガー方程式は電子が波の性質を持つという考え方があった。

いずれも単なる数式ではなく、数式が物理現象をどのように表現するのか、という観点が必要になってくる。

【2】2つ目は、細かく区切って考えるのが物理学の極意ということ。
よくわかる電磁気学」のあとがきに出てくる。
場の考え方、すなわち近接作用が物理学の基本思想だ。
つまり、近接作用を考えると、物理法則は微分形式で表現できる。
微分積分では、微小な線分、面積、体積をイメージすればいい。

微小なdr, dS, dvなどで物理現象を表現できれば、微分方程式が出てきて、微分方程式を解けば全体的な現象を表す関数や運動方程式が出てくる。
一方、「高校数学でわかるマクスウェル方程式」の通り、マクスウェル方程式は積分形式で表現した方が理解しやすい。
なぜならば、高校数学で出てくるアンペールの法則、電磁誘導の法則などは、マクスウェル方程式の積分形式と対応付けて説明しやすいから。
マクスウェル方程式の微分形式は、「高校数学でわかる相対性理論」の通り、非常に小さな空間で積分形式のマクスウェル方程式を適用すれば出てくる。

近接作用の考え方が場の量子論につながることが「よくわかる電磁気学」でも触れられている。

【3】3つ目は、解析力学を制覇すれば、物理学の諸分野を理解しやすくなるメリットがあること。

たとえば、量子力学、統計力学では解析力学の手法に慣れておくと理解しやすくなる。
よくわかる解析力学」では、最後のあとがきで、相対性理論、量子力学、統計力学に解析力学を適用したときの考え方が説明されている。
一般に、原子や分子レベルでは、古典力学では計算が煩雑になったり、より深く考えにくい。
そこで、解析力学のアプローチを使って、何らかの物理量を最小化したり不変にする前提から運動方程式や保存量を導く。

そこで、相対性理論、量子力学、統計力学に出てくる解析力学のツールが違うならば、それぞれの分野ごとに必要な解析力学のツールを説明した本があれば、解析力学に深入りせずに、本来やりたい分野の勉強に注力できるだろう。
たとえば、量子力学に必要な解析力学のツールだけ理解したいなら、「量子力学を学ぶための解析力学入門 増補第2版」が良いらしい。
ただし、実際に読んでみたら完全に専門書なので、ある程度解析力学の知識がある前提で読み進む必要があると感じた。

ここで、物理学では不変量が大切になる。
不変量は何らかの意味ある物理量を表す。
エネルギー保存則、運動量保存則もそうだ。
だから、物理学ではラグランジアンよりもハミルトニアンが重視されるのではないかと思う。

経済数学の直観的方法 マクロ経済学編」では、経済学の目的は「リソースを最適化する(経済政策や戦略により全体費用を最小化する)」ことにあるのでラグランジアンを多用する。
一方、物理学の目的は「物理量を一定に保つ運動や保存則を見つける」ことなのでハミルトニアンを多用する、と説明があったが、まさにその通りと思う。

解析力学では、物理量を最小にするのがラグランジアン、物理量を不変にするのがハミルトニアンと考える。
しかし、解析力学は難しいと感じる。
解析力学が難しい理由は2つあると思う。
1つは、ラグランジアンやハミルトニアンが導出する方程式や数式の物理的意味を理解しづらいこと。
L=T-U、H=T+Uにはこういう物理的意味があるとどの本でも詳しく説明してくれるが、どうしても天下り的な説明になりがちで、初心者は納得しづらい。

最小作用の原理はどこからくるか? - 物理Tipsにも書いているように、「最小になるようなもんを探したらこれになる」と結局理解するしかないと思う。

もう1つは、たとえば、説明をオイラー・ラグランジュ方程式のように、座標をq、1次微分をqドットのように表現しているので、数式そのものが扱いづらいこと。
オイラー・ラグランジュ方程式は3次元座標x,y,zの微分方程式だから、本来は3つの方程式を書き出さないといけない。
しかし、似たような形の微分方程式を3回書き下すのは面倒だから、頭の偉い人が、x,y,zはq1,q2,q3で書いてしまって、まとめてqにしてしまいましょう、と考えた、とみなせばいい。
そんな説明が「ゼロから学ぶ解析力学」に書かれていて納得した。

個人的には、「ゼロから学ぶ解析力学」が解析力学の取っ掛かりの理解に役立った。
理由は、解析力学のラグランジアンやハミルトニアンがきれいに書かれた公式になる以前に、泥臭い数式や計算を見せて説明してくれているから。

たとえば、「ゼロから学ぶ解析力学」では、最後のあとがきに、ゼロから学ぶという条件のもとにレギュレーション(執筆ルール)を筆者に課した。
一般座標q_iを書かずに普通の座標x,y,zで書ける所まで微分方程式や計算をすべて書いたり、「∂L/∂θドット」とは書かずに「∂L/∂v_θ」と書くなどしている。

実際、オイラー・ラグランジュ方程式も、一般座標qや∂L/∂qドットではなく、3次元座標x,y,zと∂L/∂v_x,∂L/∂v_y,∂L/∂v_zで3つの方程式をすべて書き出してくれている。
それら3つの方程式は略記号により、1つの方程式で最終的にはきれいに書かれるわけなので、こういう泥臭い理解が最初は必要なのだろうと思う。

【4】物理学で理解した内容はまとめておこうと思う。

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